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『お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記』 [☆☆]

・19世紀、英語圏の作家にとって匂いとは下品な、そして不得意なものだった。またイギリス人は、香水や葡萄酒などの鼻の芸術分野は不潔な隣人たるフランス人に長らく任せてきた。

・わけもなく好きだった作品をこんなふうに解体されると、間近で魔法を見たようだ。

・文化はいつもこういう場所で生まれる。小さくて複雑な場所で。それを忘れたらいけない。

・来年は、太宰治の生誕百年なんですよ。しかし同時に松本清張と大岡昇平の生誕百年でもある。この三人は実は同い年だったのだ! びっくりだ!

・逃避ね。……だがどこまでも逃避し続ければ、それが君の生きた証明になるんじゃないのか。

・自分が得意な技も不得意な技もありません。ひとつひとつを完成させてきたので、これという技がない。

・きわめて職人的な芸術家が登場し、その芸を見る見る高めていって、世間にもてはやされるが、やがて芸があまりに高度になっていって、自壊するしかないところまで追いつめられていく。

・人が、自分個人のためにがんばれる力には限りがある。でも、崩壊する家族、つまり「世界の滅亡」を背負う若者は、無限の力を出して戦うだろう。

・ただエゴイズムのために人はあんなに高く飛べない。あんなに早くは走れない。いつだって、私たちは、誰かのために。

・銅板に松脂や蜜蝋を混ぜたものを塗って、上から引っかいて絵にするのだけれど、配分によって表面を硬くすると、上にものを落としても傷つかないぐらいになる。それを針で削って絵を描くのが一般的な方法。

・いつもいい人が主人公ですが、実は悪い人になった方が生きやすい世の中かもしれないのに「良心」というカルマを抱えてしまった人間の葛藤ですね。

・本の上に乗ってみて感じたのは「ブルース」であった。天井が2、3センチ上にある。圧迫されている感じがある。これがアンドレの感じていた憂鬱なのか。

・トイレもバスルームも小さ過ぎる。全ては彼が「規格外」であることによるものだ。そのためにブルースに襲われ、アルコールを飲んだのである。

・「喜怒哀楽」というものがあって。「喜、楽」というものが笑いやとすれば、「怒、哀」そういうものを書かないと笑いっていうものは立体化してこない。

・落語というものは人間の業を嘲笑うもんです。決して楽しいもんじゃない。

・被害者の虚脱感と加害者の罪責感の二重苦に苛まれるドイツでは、滅びの美学などを成立させる余地がなかった。

・人間にたとえると、第一次世界大戦と二次大戦との間の時代は、最初の挫折をしてちょっとシニカルになった18、9歳の青年期。二次大戦後は、明るい未来への展望を失った30代。21世紀は老人。私たちは若いが、しかし世界は晩年を迎えている。

・よいときはイギリス人として扱われ、悪いときはアイルランド人として裁かれた。

・日本でも、死んでから文豪っぽく歴史を整えられるけど、生きてるときは「国民のおもちゃ」だった人もいる。

・事件は会議室じゃなくて現場で起きてるし、本も業界ではなくて、本屋で買われて、誰かの部屋で読まれている。

・アイスワイン。18世紀、うっかり凍らせた葡萄でワインを造ってみたら甘くて美味しかった。という誕生秘話が。

・茶の間の正義は、眉ツバものの、うさん臭い正義である。そこからは何ものも生まれない。

・作家には、ツブシのきかない人間が多い。つまり、小説を書く以外には、能がないのが。

・ずっと変わらず同じ距離感で繋がってられる人たちのことを、あっこの人は友達なんだなぁと思う。

・一輪でも雄花が咲くと、雌花たちの処女性が失われ(花粉で受粉しちゃう)ビールの香も味も光沢も悪くなるので、ビール会社が買い取ってくれない。だから簪みたいな処女花ばかりのホップ畑には、野生のホップは近づけられない。

・二丁目のど真ん中で転んで通りがかりのゲイの青年に「大ぃ~丈ぅ~夫ぅ~?」と聞かれた日(聞きながらも、立ちどまるでなく、手を差しのべるわけもなく、ただ聞いただけなのヨ~という冷たさがなんだか心地よかった)。

・すっ転んだ道化を見て笑うのは「私は転んだりしないもんね~」という、優越の笑い。

・「女性の同性愛的なものって、男性嫌悪とかコンプレックスの方向から語られることが多いけど、ほんとはそうじゃなくて……「女のマザコン」という面がないかなぁ」とずっと考えてた。

・私たちはもう女の子なんてフワフワしたかわいい生き物じゃなくて、だから、労わられて重い荷物を肩代わりされるより、がんばってるところを見てもらって「がんばったね」と褒められたいのだ。

・いっちばんヤなのが「事実は小説より奇なり」だ。もちろん現実はものすごいものだけれど、だからこそ、フィクションというものは、それを力ずくで無理やり超えねばならんのだ。

・いまもって、名作、奇作をすべて制覇する気配はぜんぜんない。いったいやつらは世界にどれだけ散らばってるんだろ……。

・ノスタルジアという言葉は「ギリシャ語でいうノストス(家)とアルゴス(苦悶)を結合させた造語である。

・それにしてもゆっくりすぎる気がする。そう、コックリさんのお告げよりゆっくりなのだ……。

・早く書くとエンタメで、ゆっくり書くと純文なのかな、と単純すぎる区分が思い浮かんだ。

・人が生きるスピードと丁寧さは、それぞれ違う。だから、誰にも誰かを「自分用にチューニング」する権利はないのだろうな、と思う。子供のころ、うまく言語化できなかったけど、親とか学校の先生とかに、いつも、わかってほしいと願っていた。

・「エッ、マジでぇ~?」と、ついうっかり「子供の返事」をしてしまった。

・春先の耳鼻科は、花粉症の患者であふれかえり、まるで花の香りの野戦病院のようだ。

・医とは、サイエンスに支えられたアートである。

・いつまでも一匹娘でいてください。

・疲れているときや考えすぎたとき、寝返りを打たずに寝ると三半規管の中の小さな石が一方向に偏っちゃって、目まいがするんです。頭を5回振ると、石が元の場所にもどって、治ります。

・怪奇的なミステリが好きで、それはなんでかというと、怖いことが起こった後、名探偵が出てきて、論理的に解決してくれることで、怖さを克服できるからだ。なんだか読む前よりも、自分という卑小な人間が、ちょこっとだけだけど、強くなれた気がするのだ。一方、ホラーには答えがなくて、そこにはただきらめく恐怖だけがある。

・恋愛がミステリなら、結婚はホラーにたとえらえるかもしれない。不可解な事象はあるけど、明確な答えはほとんど存在しない。なにもかもをすっきり理屈で通そう、理解(支配)しようと思ったら、わけがわからなくなって、ぐるぐる目眩がしてしまう。

・死に場所を探して恋愛したり仕事をしたりしてるだけのような、できる女性特有の、謎めいた、厭世観。

・「中学や高校では難しくないですか」と言われるんだけど、そう言う人は絶対に、子供の頃の自分の頭の良さを忘れてる。

・狭い街なので、みんなが知り合いだというのがすごくつらかった。「誰がどこそこで何買ってた」とか、親同士がぜんぶ知ってる。田舎はmixiなんですよ。



お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)

お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/12/26
  • メディア: 単行本



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