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『桜庭一樹 ~物語る少女と野獣~』 [☆☆]

・ある婦人が夫を亡くした葬儀で、参列した夫の同僚にひと目惚れしてしまった。その直後、婦人は前の夫との間にできた子供を殺害。逮捕された婦人は、殺した理由を何と答えたか? という、殺人犯の心の内面を見極めるために開発されたという心理テスト。普通の人は「子供が邪魔になった」と答えるが、日本の犯罪史に残る連続幼女殺人犯と少年Aが、このテストを受けて、「○○○○○……」とまったく同じ答えを言った(答えは『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』か『俺、大谷伸彦』に)。

・芸って、素晴らしい言葉ですよね。そこには送り手と受け手の間に、「嘘の共有」がある。例えばエアギター。客は「本物のギターが見えるようだ!」とボケてくれるわけですよ。それは何て優しい「嘘の共有」なんだと。

・おおきな話題になり、多くの人に読まれ、でも時を経たいまでは完全に忘れさられた、亡霊のような本たち。

・作家なんて、みんなさ、成り上がりののら犬なんだもん。

・あぁっ、と気づいたとき「わからないもののうつくしさ」に心打たれます。

・近くにあるものから影響を受けると劣化コピーになってしまう。

・母の期待に応えんと、妖艶な演技をする娘を見て、あぁ、これも「血の人形」だ……と思いました。

・期待する旧世代とその期待に応えられない新世代。

・ジュブナイルやおとぎ話のいいところは、毒だと思います。「赤ずきんちゃん」なんて、エロスとバイオレンスとB級魂炸裂の寓話だし……。

・ピティフル・チルドレン(かわいそうな子供たち)と呼ばれる。

・テレビが普及し、都市と農村で同じ文化を享受できるようになった。

・自由だけれど、何者にもなれない息苦しさを感じる日々。

・条件を楔のように打ち込んでいかないと、その空間自体がまともにが認識できないんです。

・外国語のような表音文字だと難しいかもしれないけれど、表意文字の日本語だと、名前がその人を体現する。

・「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいて」という起源に、「丹波の国のどこそこに」と条件を打ち込んでいくことで『今昔物語』になっていく。『古今著聞集』では、そこに時代も明記される。確定情報は多くなるんですが、リアリティを獲得しながらも、「昔々あるところに」の普遍性は保ちつづける。

・小説というものは本来、道徳の教科書でも、声に出して読みたいものでも、子供に読ませたいものでもなくて、タバコ好きの人にとってのニコチン、刺激物フェチにとってのカフェインのように、常習性があって体に悪いもので、でもだからこそ人を絶望から救うことができるんじゃないの、ということなんです。

・名前を与えるということは、そのものに意味を与えるということ。

・成長過程でスッと大人の男性や女性になれる人と、ガンッと障害物にぶつかる人がいる。

・心が疲れるならその努力はまちがってる!

・乙女じゃありません! それは変態な人が変態だということを隠したい気持ちなんです。

・性別も年齢も国境も超えたところにある、弱者のとほうもない怖さ。

・家族構成も経済状況も似ている人々だから、ほんの少しの欠落が、すごく目立つ。だから、欠落を抱えてはいけないし、かといって過剰でもいけない。でも誰にでも、欠落も過剰もあるのだ。ほんとうは……。

・毎日、毎日、静かに、絶望するのに忙しかった。

・みんなばかに見えた。自分だけ特別な人間だと思いこんでいて、でもそれを証明する手段はなに一つなかった。



桜庭一樹  ~物語る少女と野獣~

桜庭一樹 ~物語る少女と野獣~

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/08/01
  • メディア: 単行本



タグ:桜庭一樹
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