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『文章は写経のように書くのがいい』 [☆☆]

・相手に伝えたいものを得るには、自分で体験するか、人に聞くか、本で読むか、この3つしかありません。

・人間の悩みには「人間関係」「お金(豊かさ全般)」「夢(目標)」「健康」の四つのカテゴリーしかないのだという。

・「書くことがない」と言っている人は、本当に書くべき内容がないのではなくて、ネタの宝である自分の脳の中から、最初のワンテーマを引っ張り出してくるよい「釣り針」が与えられていないだけなのだ。

・そうやって三つか四つのフレーズを書いていくと、多くの人は「もうダメだ!」となるだろう。何が「ダメ」なのかというと、それ以上、自由連想を続けるのがダメ、ということだ。次の単語やフレーズに移るよりも、そこに書いたフレーズについてもっと長く書きたい、という衝動に必ずかられるはずなのだ。

・自分から100項目にもわたって何か話をするのは容易ではないが、誰かの質問に答える、というスタイルだと意外にあれこれ答えが出てくる。

・一時期は多くの人たちがこの「100の質問」とその回答を、プロフィールがわりに自分用のウェブサイトで公開していた。

・この人が、ずっと穏やかな精神状態で療養生活を送り続けていられたのは、毎日、一定の時間、一定のリズムで平凡な句をつむぎだしていたからではなかったか。

・「平凡で一定のペースの記述が持つ効果」がともすればカウンセリングや薬以上の大きさであることに、大きな驚きを感じたものだ。

・研修医の発表や論文指導をする先輩の医者も、「とにかく大切なのは、これがノイエス(ドイツ語で「新しいもの」という意味)だと聞く人にわからせることだ」とよく言っていた。

・「原稿用紙1枚を写すのに必要な時間」をまず計ったら、それを1.5倍したのが自分の文章執筆速度だと考えることにしよう。

・引きこもり時代には、その能力はいったいどこに隠れていたのだろう。潜在的なその能力は、実は隠れていたのではなく、自分で隠していたのである。「隠す」とはいっても、もちろん意識的にそうしたわけではない。「自分なんかダメだ」という自己否定の感情や劣等感、「自分に何かができるワケはない」という思い込みが、知らないあいだに自分の能力を押さえ込んでしまっていたのだ。

・まったくの作り事を書くよりは、うろ覚えでもよいから自分が体験したり見聞きしたりした例を書くほうがよい。

・具体例を書いたら、次はそれに対する自分の感想、批判を加える。つまり、エピソードに自分なりのツッコミを入れるのだ。

・一般的な「4行日記」のパターンを紹介しよう。
1行目:事実(その日あったことをそのまま書く。著者の解釈が入ってはならない)
2行目:気づき(その事実について気づいたこと、反省。あくまで事実から得られたものであるべき)
3行目:教訓(次の行動への目標。抽象化されている必要がある)
4行目:宣言(目標を達成した後の自分のイメージ。能動体で書くことが必要)

・顕在的自己愛を持つ人のほとんどは俳優になりたいと、潜在的自己愛の人の大半は作家になりたいという願望を持つ。

・フィクションでもノンフィクションでも、目をそらしたくなるようなことでも見なければいけないこともある。でも見たくないものを見せられる不愉快さというものも存在すると思う。存在するのは分かっているが、こちらから積極的に見ようとしていないときに白日の下にぽんとさらしてほしくない。

・本当に問題になるのは、「書かないほうがいいことや、書くことで自分のマイナスになったり読者を不愉快にさせたりすることをどう書くか」ということなのだ。

・おそらく彼の場合、「これは書いてはいけないだろう、いや、作品のためにはどうしても書かなければ……」とラインを見きわめるための闘いもなく、「おっ、これは面白そうだ」と思うネタをそのまま文字にし、それに「小説」というラベルを貼っただけで世に送り出そうとしたのだろう。そして、それは暴露話としてはそれなりに興味深くても、結局、読者の心を強く揺り動かすことはできなかった。

・「興が乗ったから何時間でも書き続ける」というやり方はあまりおすすめできない。自分のために書く場合は、とくにゴールをきちんと決めておくべきだ。

・文章を書くことが書き手にもたらすいちばんの効果は、そのあいだは日常とは違う時間や意識の流れを体験できることだと私は考えている。どんなに書きなれた文章の達人でも、書いているときには目の前の文章以外のことを考えられないだろう。

・書くことの意味って、少なくとも書き手にとっては、中身よりも最後まで書き終えることにあるのだな、と思う。



文章は写経のように書くのがいい

文章は写経のように書くのがいい

  • 作者: 香山 リカ
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2009/03/02
  • メディア: 単行本



タグ:香山リカ
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