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『数学は言葉』 [☆☆]

・数学語は人工言語ですから、「ふつうに使っているうちになんとなくマスターする」ということはありえません。

・高校から大学までの間に飛び越えるべき深い溝があるとしたら、それはまちがいなく、数学語の溝であり、論理の谷なのです。それは、「説明しなくてもわかりあえる」池の中から、「説明しなければわからない」大海へと、みなさんがこぎ出す瞬間なのかもしれませんね。

・思考もただ重ねただけでは高みに到達することはできないのです。

・複雑なことを考えるには、最初から複雑で多様なことを考えてみてもだめなのです。複雑なことを考えるには、ごく単純なことをごく当たり前な方法でひとつずつ積み重ねる以外に方法がないのです。

・どんなに異なる文化背景の下でも、人間には共有できる最低限の概念がある。それは論理だ。宗教や風習、信念や常識は文化によってさまざまだが、論理だけは共有できる。

・感想をいくら並べても数学にも科学にもならないので注意しましょう。

・実物の円を見れば、小さい子供でも、それが円であることを理解します。けれども、「円とは何か」と尋ねられたら、説明に窮してしまう。それは、無限に存在する具体例を、たった一文で正確に説明しなければならないからです。それは、人間にとって、非日常的な行為です。だから脳がフル回転してくたびれるのでしょうね。なにしろ、古代ギリシャ以前の数千年の間、人類は「定義する」という高度な技に到達できなかったくらいです。

・私たちの必要に基づいて、私たちの真の感覚にマッチするように物事をクリアに説明しようとしたとき、自然言語は圧倒的に貧弱だと言わざるをえないのです。

・記述しなければならないありふれた現実の複雑さと、自然な文章での表現できる範囲、そのギャップがどうしようもない形で出現するのが高校の数学教科書というわけです。

・小学校の教科書では、「見てわかる」ような例しか登場しません。ですから、私たちは「見ることさえできれば、判断できる」と考えがちです。しかし、実は「見てわかること」などごくごく限られているのです。

・すべての人が厳密な意味での三段論法を使いこなせるか、というと、そうではありません。逆に、三段論法に似た見かけをしているものに人間はすぐにだまされる傾向があるのです。詐欺の多くが「偽三段論法」を使っているのは、そうした人間の心理をうまくついているといえるでしょう。



数学は言葉―math stories

数学は言葉―math stories

  • 作者: 新井 紀子
  • 出版社/メーカー: 東京図書
  • 発売日: 2009/09/07
  • メディア: 単行本



タグ:新井紀子
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