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『PRIDE 池袋ウエストゲートパーク10』 [☆☆]

・現代日本人は短い便りを歴史上もっとも膨大に送りつけあってる、暇で孤独恐怖症の人間なのだ。誰かとつながっていなければ、不安でしかたなくなる生きもの。それは大人も子供も関係ないんだ。もっともその大切なメールの九割は、まるで意味のない空メールと変わらないんだけどな。

・別にガソリンと電気を節約するくらいはかまわないが、生きることまで無駄をはぶいてエコにしなくてもいいんじゃないだろうか。

・恋や結婚などせずに全額を自分ひとりの生き残りのためにつかったほうが、より生存に有利なのはよくわかる。だが独身男性の誰もがただしい選択を続けた先には、経済学でおなじみの合成の誤謬が待っている。ひとりひとりはよく生き延びても、次世代が育たなければ社会は一世代で死に絶えるのだ。

・どこかの海外ブランドのエコバッグ。元は数千円だが、ネットで人気が沸騰して値段が十倍に跳ねあがった帆布のバッグだ。なあ、エコなんて怪しげだろ。

・大人はたとえ希望的観測とわかっていても、なにかいわなければいけないときがあるよな。

・おれは単純なので、ムダな可能性は考えないのだ。オッカムの剃刀だ。余計な心配や意味のない可能性に心を悩ますことがなくなれば、生きることはずいぶん楽になる。

・身体のすべてのパーツの働きには理由と目的がある。そいつを学んでおくと、壊すときにも、動かすときにもいいんだ。

・警察のイメージは実際に自分がトラブルに巻きこまれたとき、対応にでてくる相手で百八十度変わるのだ。

・現代はアマチュアが果てしなくプロ化する時代だ。メジャーにならなくても、自分の好きなことをして生きる。その方法はすくなくとも、十年まえより多彩になったのは間違いない。

・心のなかのどろどろした影の力は、男の場合瞬間的な暴力であらわれ、女の場合継続的ないじわるという形で投射される。

・文章はこの世界をきちんと見る目があれば、誰にでも書ける。特別な才能が必要だなんて、怠け者のいいわけだ。

・人間というのは、いつでも自分より弱いやつからなにか奪って生きているものだな。

・人は誰でも自分が一番大切なものを、人も大切だと思いこむ。

・法科大学院で大量に増えたせいか、弁護士の質はがた落ちなんだな。そういえばこのごろ依頼人の金を着服したり、サラ金への過払い金の取り立てでうまい汁を吸う弁護士が多くなっていた。

・そいつらが自暴自棄になるのも無理はなかった。おれのように最初からコースをはずれていれば問題はないが、順調に生きてきたやつは一度の脱線で世界が終わると思ってしまう。



PRIDE(プライド)―池袋ウエストゲートパーク<10>

PRIDE(プライド)―池袋ウエストゲートパーク<10>

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/12/09
  • メディア: 単行本



タグ:石田衣良
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