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『人はなぜ危険に近づくのか』 [☆☆]

・若者は無謀で、高齢者はリスク認知能力が衰え、その結果、両者ともにリスクを過小視してしまうのである。

・今はやりたくないという行動拒否の気持ちと、明日になればなんとかなるというはかない期待のうえに、先のばしは成り立っている。

・報酬の場合には、今すぐ小さな報酬をもらうよりも、じっと待って大きな報酬をもらう方がよい。反対に、支払うべきものは、将来にツケを残さずに今すぐ払ってしまった方がよい。両方に共通しているのは、忍耐にしても努力にしても、今すべきことを今するということである。

・今なら汗を流す程度ですむものでも、遅れれば血を流さなければならない。そこでも手を打たなかったら、血を流せばすむものが命を失う羽目になる。

・被験者は、賞金がもらえる場合には、確率のはっきり定まったゲームを好み、罰金を受ける場合には、曖昧なゲームの方を好むのである。つまり、利益を失うときは曖昧なものを避け、逆に自分にとって不利益な場合は、曖昧な方を取る。ここで言えることは、曖昧さが伴う場合には、確率は常に低く評価される傾向があるということなのだ。

・大災害のときには、大勢の災害見物客が出るのである。交通事故が起こった場合に、見物渋滞が生じるのと同じ理由である。

・親や教師は、世の中の恐ろしいものをなるべく見せないように、子供たちの目から遠ざけてきた。だから、子供たちは本当に恐ろしい思いをしたことがない。

・夜遅く、女性が一人で歩いていたり、一人でジョギングしたりしている。本当は誰も守ってはくれないのだが、誰かがいつでも守ってくれているという幻想をわれわれの社会は作り出している。この幻想は、子供たちから自衛能力を奪っている。そして、大人たちをひ弱にしている。

・大事故などの場合には、適切に行動して逃げられるのは全体の10%から15%ぐらいで、多くの人が凍りついてしまうと言われている。

・突然の事故のときに、われわれが心配しておかなければいけないのは、過剰な行動をしてパニックになることではない。むしろ何もしないで動けないまま、避難するタイミングを失ってしまうことだ。

・私たちは、凍りつく危険があるのだ。このことを知っておくことが、第一に重要である。次に、ここでは何が起こりそうか、そしてそれが起こったときには何をしたらいいかということを、あらかじめ頭の中にシナリオとして作っておくことである。

・大災害や大事故が起きたときのシナリオを常に頭の片隅に置いておくことが、凍りつき症候群による被害を小さくする秘訣なのである。その瞬間に、頭の中のシナリオの断片でも再生されれば、ショック症状から我に返るまでの時間が短縮されるのである。

・男は女より短命である。古今を問わず、豊かな国でも貧しい国でも、また平和なときでも戦争のときでも、世界中どこの国でも、共通に男は女を残して死んでいく。

・2004年の日本人の受刑者は6万人を超えているが、その95%近くが男である。女は5%程度に過ぎない。少年院の収容者も90%が男である。

・見境もなく殺人を犯す凶暴な人間の95%近くを、男が占めている。

・リーダーシップには、二つの機能がある。ひとつは課題達成で、これは父親的機能。何か課題や方針を作ってそれを達成していく機能である。もうひとつは心理的、情緒的なつながりを維持していく母親的機能。関係をうまく調整し、心のわだかまりを解消して協力関係ややる気を維持していく機能である。

・男が社会的な理由で早死にしないためには、やたらと片意地を張って生きないことである。

・多くの場合「実を捨てて名を取る」のが男であれば、「名を捨てて実を取る」のが女である。

・本人自身がリーダーシップをとることができて、同時にまた、リーダーに従うことができる柔軟なパーソナリティ、そういう人格が要求されるのである。

・男が女より早死にする理由として、男は社会的ネットワークを作るのがへたで、周りから孤立しやすい点も挙げられる。

・男は、軍隊や会社など指揮系統がはっきりしているところではチームの一員としてうまく機能するけれども、自発的集団のように指示を出す監督がいなくて個人が自由に動ける状況では、チームワークをうまくとれない。

・女はすでに持っているものを失うまいとして、エネルギーを集中する。年齢とともに失われつつある若さや美貌にこだわるのは女である。

・女には保存欲求がより強くはたらき、この慣れ親しんだ現状を変えたくないし、現状を変えないことで多少の不利益があっても別にかまわないと思っているのである。変化に対する抵抗が大きいのが女の特徴である。

・最近、熟年離婚が増えている。しかも、女の方から離婚を言い出すケースが増えている。保存欲求が強い女が離婚を決定するまでにはよほどのことがあったと考えるべきである。それに気づかない男は鈍感すぎる。

・マキシマイザーとは、どこかに絶対的な正解があって必ずたどり着ける、途中で満足して努力を放棄しては将来に後悔を残すと信じ込み、常に正解を探す人である。

・サティスファイサーとは、世の中には絶対的な正解というものはなく、限りなく妥当な解に近づくことができるだけだという現実主義者である。このタイプの人は、適当な選択の幅で自分に合ったものを選んでいく。

・正解が出なければ満足しない。自分が満足しないから納得できない。そうなると、実にこまかなことが気になってしかたがない。

・マキシマイザーの心理状態は、受験勉強の得意な子供に似ている。試験問題には常に正解がある、努力すれば必ず正解にたどり着けると思っている。

・人間は、自分が選択したものと実際の現物がうまく釣り合わない場合は、その不快感を減らすために、自分の見方を変えることで折り合いをつけようとする。

・マキシマイザーは、子育てでも、結婚相手でも、買い物でも、最初の選択で失敗や欠点が見えてきたときには、自分が行った決定に満足せず、正解を求めてさまよう。したがって、求めていたものとは絶対に違うと思っては子育てを放棄し、離婚し、買ったものを取り替えたりして、限りなくどこかにある正解を求めて夢を追うようになってしまう。

・われわれが何かを選択するということは、選ばれなかった他のすべてを失うということである。失うことが過大に評価されるかぎり、選択に後悔はつきものである。

・不運な出来事が続いた場合でも「この程度ですんでよかった」と前向きに考えて、その考えを習慣として蓄積していくと、自分の生活に満足できるようになる。



人はなぜ危険に近づくのか (講談社+α新書)

人はなぜ危険に近づくのか (講談社+α新書)

  • 作者: 広瀬 弘忠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/10/21
  • メディア: 新書



タグ:広瀬弘忠
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