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『狼と香辛料14』 [☆☆]

・辛い別れは可能な限り短いほうがいい。突き刺さった矢であっても、引き抜く時は一瞬であって欲しいと願うのだから。

・誰かの力になることは厭わないし、むしろそれを喜ぶところはあっても、頼られなければ決して口に出さない控え目な性格だ。

・ひょうきんさの裏になにを隠し持っているかわからないところがある。自分に隠しきれないほどの腹黒さがあることを自覚しているからこそ、わざとらしい振る舞いで糊塗する者が多いからだ。

・走り出した荷馬車に乗り遅れた客のような顔をした。それでも、そこで途方に暮れるか、徒歩でもいいから歩き出そうとするかで人の価値というものは分かれてくる。

・一人がいいと思えるのは、本当に一人ではない時だけのこと。

・何ものにも屈しない屈強な男でも、孤独にだけは勝てない、などという話は枚挙に暇がない。孤高の地位を手に入れたのは、皆それに打ち勝てた者だけだ。

・関心が自分からそれたのならばひとまずそれを素直に受け入れて、全体を見回し合理的に動いたに違いない。それで手を尽くしても振り向かなければ、そんなこともあるかとあっさり諦めただろう。

・わざと誰も読めないような文字で書かれたゆえに生き延びた、災いを呼ぶ技術の書。

・それがそうだとわからなければ、教皇を虚仮にした絵画だって枢機卿の家に飾られることになる。

・誰も求めないものは、道端に落ちている金だって気がつかれない。ところが、誰かが求めるものは、この世に存在しなくたって見つかるものなのだ。

・知ってしまえば手を出したくなる。知ったところでどうしようもないのなら、知らないほうが心穏やかにすごすことができる。

・わかりきったことの確認のようだが、わかりきったことと思っていることこそ、確認しないとあとで痛い目を見ることがある。

・圧倒的な力を持つ相手との交渉は、可能な限り単刀直入にするのが定石といえる。力の差が歴然としているなら、会話をすればするほど自分に不利に働くからだ。賢者が黙して語らないのは、口を開いてもなお賢者でいることがとても難しいからに他ならない。

・我々のような人間が生き延びるには、少ない原則を守りさえすればいいのです。その原則とは、縁のあった人物のことは徹底的に調べ上げる。そして、商いを広げる時は、必ずその縁をたどって行うこと。

・言葉でならばなんとでも言うことができる。けれども、信用しなければ始まらない。

・大事な相手に手紙を書きなれている人間で、幸せな奴はそうそういないからな。そうじゃないか?

・誰かを心底好きになるというのは、頭の回転を速めるが、その方向感覚は駄目にしてしまうものらしい。

・しゃにむに全てをなげうてるのは、そこで物語が終わると確信できる時だけだ。そして、実際にはそれ以降も人生が続く。全てなげうったあと、なにもかもなくして生きるには、人生というのはあまりにも長いのだ。

・たくさんの書物の中で、妥協した結果そこそこ幸せになった物語は多々あっても、妥協して満足した例はほとんどないと。それと、失敗しても、満足している例はたくさんあると。



狼と香辛料〈14〉 (電撃文庫)

狼と香辛料〈14〉 (電撃文庫)

  • 作者: 支倉 凍砂
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: 文庫



タグ:支倉凍砂
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