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『僕は君たちに武器を配りたい』 [☆☆]

・福沢諭吉が『学問のすすめ』という書物によって伝えたかった真意は、「人間は平等である」ということではない。彼は、「学問をすることで人間には差がつく」と宣言したのだ。

・『学問のすすめ』以来、「良い大学に入り、良い会社に入れば、人生は安泰」という学問信仰が、長年日本社会を広く覆ってきた。

・江戸時代まで存在した身分制度が明治維新でなくなった後、現在まで人々に「格差」をつけてきたのは学歴だった。いわば身分制度の代わりを学歴が果たしてきたといえる。

・社会が不安定化したときには、必ずこうした人々の不安を分かりやすく解消する方法が受け入れられやすくなる。何が正しいか分からないからこそ「これさえあれば」が受けるのである。

・日本人はいつまだ経っても英語がうまくならない。結局、英語学習でボトルネックとなっているのは、文法や基本単語をしっかり押さえたあとの、ヒアリングとスピーキングの学習量が圧倒的に少ないということだ。

・パソコンのオンラインゲームに多くの人がハマるのは、その世界では「努力」の有効性がまだ存続しているからではないだろうか。「努力をして経験値を積み、お金を貯めて武器をそろえれば、立身出世ができる」というのがオンラインゲームの世界観である。

・計画経済においては、農産物の生産から、食糧の配給、物資の輸送、そのすべてが官僚のコントロール下にある。官僚は自分が予想できなかったことは、「世の中のほうがおかしい」と考える。

・第二次世界大戦後の世界の歴史の中で、国家による数十万~数千万人規模の国民の大量虐殺が起こった国は、そのほとんどが計画経済国家なのである。

・かつて日本が強かったのは「擦り合わせ製造業」という分野だ。単純に部品を組み合わせて製品を作るのは「組み合わせ産業」と呼ばれ、「擦り合わせ」とは区別される。

・「擦り合わせ製造業」では、モジュール(規格化された汎用部品)を組み合わせて製品を作り上げるのではなく、それぞれの部品やユニットを、最終的にもっとも性能や機能を発揮できるようにカスタマイズして設計し、組み立てる。

・かつて日産は「100分の1の技術から1000分の1の技術へ」というキャッチフレーズで、自分たちの技術の高さを宣伝した。しかし、これは日産の経営戦略の致命的な誤りだったといえるだろう。なぜならば、1000分の1の違いを感じ取れるユーザーは、存在しないからだ。「分からない差異は、差異ではない」のである。

・この国で生きていく我々は、座して「国がどうにかしてくれるだろう」と状況が変化することを待っていてはいけない。それは、かつてのソ連の市民と同じ、他人まかせで貧しくなる道だ。

・昔は、大学の持っている知識が、企業が必要としているレベルより高いところにあった。しかし現在では、産業を牽引する最先端の知識は、企業の側に蓄積されているのである。

・企業が大学に求めるのは、現時点では何に役立つのかも分からない、スーパーハイエンドな知識だけであって、中途半端な研究は必要としていないのだ。

・「ブームになってから投資すると、死ぬ」というのが投資の鉄則だ。

・誰も投資など考えられない、焼け野原のようになっているときに投資して、誰よりも早く実った果実を回収し、「まだまだ儲かる」と普通の人が思い始めるタイミングでさっと身を引く。これが、成功する投資家に共通する思考法だ。

・多くの場合、大量のコマーシャルを放映している会社というのは、「新規顧客を獲得するのは大変だが、一度カモ(お客)を捕まえればとても高い利益を生むビジネス」を行っている。

・小さなゲームソフト会社が大手のIT企業などから「ソーシャルゲームの開発をしないか。大ヒットすれば大儲けできるよ」と持ちかけられるのは、たとえるならば街を歩いていて「君、才能ありそうだからタレントにならないか。スターになったら大金持ちだ」と声をかけられるのと、ほとんど変わらないのである。

・グリーやDeNAにとっていちばん怖いのは、自分たちが作った土俵をひっくり返すようなサービスを新たなベンチャー企業が作ってしまうこと。ソーシャルゲーム開発の下請け仕事をさせることは、才能ある若者を「飼い殺し」の状態にすることで自らの保身を図ることにもなるのだ。

・古い会社は、現在そこで働いている社員だけでなく、退社した社員の福利厚生が現役社員の重しとなっているケースもよく見られる。

・インターネット普及以前は、海外と日本の「情報格差」がメディアの収益を生み出していたわけだが、いまや世界中の国にいる日本人ブロガーやツイッターを通じて直接現地の情報を得ることが誰にでもできる。

・記者クラブに張りついていた記者も、実はただの情報のトレーダーにすぎなかったわけである。

・情報に付加価値をつけるメディアないしジャーナリストは生き残るだろう。しかし、分析も事前調査もなく「今のお気持ち」を尋ねるだけの記者のニーズは大幅に減るだろう。

・信者レベルのファンを作るのが、現代のビジネスでは非常に重要になっているのである。しかしこの「信者ビジネス」にも問題点がある。それはこのビジネスを続ければ続けるほど、信者のレベルが低下していくことが避けられない、ということだ。新製品を無理して出し続けるうちに、ますます「教祖に依存して、自分の頭では物事を考えない人」を狙わざるを得なくなってくるのである。

・何となく「インターネットはすごいらしい」というぐらいの知識しか持っておらず、主な情報収集源はテレビ番組で新聞などは読まない、いわゆるマーケティング的にいえば「遅れた層」をターゲットに、サービスではなく彼の会社自体を売ることにしたのである。プロ野球球団や大手テレビ局の買収に名乗りを挙げたり、国会議員に立候補するなど、常に刺激的な話題を振りまき続けた。その結果、熱狂的なライブドア信者の数は、全国に広がっていったのだ。そして、そういう情報リテラシーの低い人々=情報弱者に、ライブドアの株を売ったのである。

・一般の個人投資家向けに売られている金融商品は、「プロが買わないような商品だからこそ、一般個人に売られている」ということである。

・個人を相手に金融商品を売る会社にとって、いちばんありがたい顧客となるのは、「自分の頭で物事を考えない」人々だ。そしていつの時代もそうした人々はたくさんいる。

・日本航空が、2005年の就職人気企業ランキングの1位だったことを考えると、「もうそろそろ潰れそうな会社の指標」として学生の就職人気企業ランキングを見てみるのもおもしろいかもしれない。

・伯楽は、嫌いな相手に「名馬」の見分け方を教え、好きな相手には「駄馬」を見分ける方法を教えていたのである。どうして「駄馬の見分け方」を贔屓の客に教えたのか。それは、世の中には、名馬よりも駄馬のほうがずっと数が多いからだ。

・小人は、表面上それを受け入れるそぶりをしつつも、旧来のやり方や面子にとらわれて、古いやり方や一度口にした自説にこだわってしまう。

・リーダーは多くの人から支持される人物だと思いがちだが、それも大きな間違いだ。実際には人間を「敵と味方」に二分して、敵である相手を徹底的に叩き潰すといったタイプが多い。

・貧困からの脱却サポートの画期的な試みだと高い評価を受けたグラミン銀行でさえも、年利25%から30%という、サラ金も裸足で逃げ出す高利率。

・9回までのゲームで、すべてのアウトカウント数27個のうち、その選手がいくつに関わったかを見ていくのである。この方式では、積極性が高い選手ほど、RF(アウト寄与率)が高まる。選手にとっても難しい球を捕りにいって、アウトの数を増やしたほうが、評価が高まるのである。

・日本では結婚して子供ができたあたりから、ローンを組んで家を買うのが当たり前のような風潮があるが、それは銀行や不動産会社などから「そう思い込まされている」だけの話だ。

・銀行と不動産会社が作った35年ローンという仕組みは、「リスクを正確に計算できない人々」を狙った商品であると覚えておいたほうがいい。

・「自分でリスクが見えて管理できる状態」とは、何らかの仮説に基づいて投資を行った後で、その仮説が間違っていると気づいたら、いつでも手仕舞いできる準備をしておく、ということである。

・会社に入ると新入社員は先輩から「日経ぐらいは読んでおかないと恥ずかしい」などと説教をされることがあるようだが、私から言わせれば、日経の記事をそのまま信じるほうがよっぽど恥ずかしい。

・世の中の人々が、話題となっている会社や商品、サービス、世の中のトレンドについてどう思っているのか。社会経済全般の動向を知るために日経を読むことは不可欠なことだ。だがそこでほかの人々と同じように考えてはいけない。

・新聞などで何かしらの情報を見たときに、「この会社はこれから伸びそうだな」と感じたら、自分と同じことを考える人間が世の中に数万人から数十万人はいると思ったほうがいい。その時点で、すでにあなたの考えは「コモディティ」になっているのである。

・基本的に新聞には、誰かが「アナウンスしてほしい情報」だけが載っている。新聞やテレビで公開された情報は、誰か声の大きな人間が、世間を自ら望む方向に誘導するために流している情報だと考えるべきなのだ。

・市場全体で見ると、機関投資家(ファンド)の儲けている金額と、個人投資家が負けている金額が釣り合っており、個人投資家が損したお金でファンドや投資信託などが儲けている構図が実はある。

・トレンドは一度起こったら元には戻らず、そこで起こった変化が常態となる。その反対にサイクルとは時とともに変化が循環し、再び以前と同じような状態に落ちついていく。

・感度を磨くために私がオススメする方法は、2年前の日経新聞や日経ビジネス、週刊ダイヤモンドなどの経済誌・経済情報誌をしばらく読んでみることだ。

・もっとも大切なのは、人々と違う「インプット」を得ることだ。人間の行動(アウトプット)は、インプットの結果である。だから行動を変えようと思うならば、インプットを変えなければならない。

・新聞に載っている情報を信じて投資したら損をするというのも、みなと同じインプットをもとに行動するからだ。

・売りになるスキルや知識のない人が英語を勉強してもそれほどの価値は産まないが、技術者や起業家のような「売る物」がある人は、英語ができないと非常に損をするのである。

・インターネットで世界がリアルタイムでつながった現在、マーケットの大きさを決めるのは国境ではなく「言語」だ。日本語だけでビジネスした場合、1億3000万人の市場しかないが、英語を話す人々の市場はその何十倍にもなる。

・世界の英語話者の比率を考えれば、ネイティブよりノンネイティブのほうが圧倒的に多いからだ。きれいな英語を話せることより、さまざまな国のひどい訛りが混ざった英語を聞き取れることのほうが、グローバルビジネスにおいてはずっと役立つのである。

・「英語・IT・会計知識」の勉強というのは、あくまで「人に使われるための知識」であり、きつい言葉でいえば、「奴隷の学問」なのである。

・その時点で、これから日本を襲う変化の波の本質を見抜いていた人々は、現在のデフレ不況をものともせずに儲けており、その変化に気づかなかった人々が「こんな日本に誰がしたのだ」と憤っているように私には思える。



僕は君たちに武器を配りたい

僕は君たちに武器を配りたい

  • 作者: 瀧本 哲史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/09/22
  • メディア: 単行本



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