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『武道のリアル』 [☆☆]

・日本の銃剣道は上半身しか攻めない。腰から下を攻めてもポイントを取らない。実際には他のどんな国の銃剣術も下半身を狙う。それは下半身が一番防御しにくいからです。

・ヨーロッパやアメリカの軍隊だったら将校はみんな拳銃を持っています。それは反抗する兵士を制圧するため、もしくは自決用か重症兵を安楽死させるための道具だった。

・弟子と先生では身体の形が違うし、重心の位置も違いますよね。ということはつまり、同じ型を残していくとこれは間違ったまま伝わるんですよ。要するに伝えるべきものは型ではなく、感覚なんです。同じ型をやっても弟子と先生というのは違って当たり前。

・剣道をやっている人はもう剣道のことしか考えていないじゃないですか。じゃあプロレスラーと剣道が戦ったらどう戦うか、という発想はまったくないですよね。ただ空手家は常に考えていたんですよ。「相撲取りと戦ったらどうだろう」とか、「剣術と戦ったらどうなんだろう」とか、「槍と戦ったらどうなんだろう」と考えていたんです。

・海軍も、艦船、つまり機械を操作するということがイコール海軍ですから、身体という以前にまず機械といかに馴染むかという世界。

・もともと武道というのは勝つ必要がなかったんですよ。戦では集団でがーっとやって生き残ればそっちの軍団が勝つわけですから、相手にとどめを刺す必要もなかったし、殺さなくてもよかったんです。でも、スポーツというのは勝たなきゃダメなんですよ。その違いが歴然としてある。

・型っていうのはカタチからカタチまで移行するときが大切なんです。そのときに身体の感覚っていうのが生まれるんですよ、実は。カタチを作るときじゃないんですよ、身体の感覚って。動いているときなんです。

・格闘技というのは、やっぱりこれは基本的な生物の問題で、デカくて重いほうが強いんだと思うんですよ。それをなんとかするために、一所懸命に技術を考えだしたんですよね。要するにズルいことを考えないと武術って生まれないわけなんですよ。

・スポーツっていうのは勝たなきゃいけないんですよ。勝てナンボの世界。だけど武術っていうのはサバイバル術なんで、死ななきゃいいんですよ。負けなきゃいいというか、極端な話、負けても死ななきゃいいんです。その発想がぜんぜん違う。

・歳をとってもできるっていうのは、やっぱり武術とか武道のほうですよね。自分の身を守るため、負けないため、死なないためにどういう技術が必要かというのを突き詰めていくというのは、一生できるんですよ。一方、試合に勝つための練習っていうのはどうしたってピークがある。ピークを過ぎれば衰えていくんです。

・たとえば日常的に僕たちが飯を食うときに使っている筋肉っていうのは疲れないですよね、飯を食う作業をするのであれば。それと同じくらいに武道的な動きを日常化していくということなんですよね。そこまで行くといわゆる技が身についたというか、達人の域に達したということだと思うんです。そしてそれまでに至らない人は疲れるんですよ。

・一緒にいないとどこが変わったかもわからない。なぜ変わるかがわからない。

・落語で有名な話があるんですけど「あの人だけは変わらないね」っていう人は進歩してる人なんです。本当に変わらない人っていうのは「ダメになったね」って言われる人なんです。

・最後まで生き残るのはセンス、イメージする力。要するに身体性なんですよね、実は。

・ひとりだから自由なんじゃなくて、どこかに帰る場所があるあるから自由なんだという気がするんです。

・ライバルであるとか恋愛であるとかいう関係は、価値観の相克に見えて実はぜんぜん違うんですね。どこかしら価値観を共有しているからこそ争うのであって。

・変な人がいる余地を残せるかどうかっていうのはけっこう大きいと思うんですよ。変な人を淘汰しちゃうというのが、一般の学校というか学生スポーツをベースにしてプロがあるという構造の、一番悪い部分ですよね。

・作り込んだことで生まれる臨場感というのがあるんです。人間っていうのは見てないようで、ちゃんと意識してないだけで、実は見てるんです。

・「勝ち負けにこだわらない」という言い方はこだわっているから生まれるんであって。本当にこだわっていなかったら、そんなことを言うこともないわけです。

・シュートを決める時に誰も「入れろ」と叫ばないんです。「打て」と言うんですよね。「今打て!」って言う。でも打つことが大事なんじゃない。入れることが大事だと。

・やっぱり教えるものがない人が人の上に立っちゃいけないと思うんですよ。それは何もできない弟子たちを育てていることになっていくんで。



武道のリアル

武道のリアル

  • 作者: 押井 守
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2011/02/26
  • メディア: 単行本



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