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『大震災の後で人生について語るということ』 [☆☆]

・現在では、地震に周期性があるように見えたとしてもそれはたんなる偶然で、過去の記録から地震を予知することはできないと考えられています。

・「資本主義」とは、複利とレバレッジによってバランスシートを拡張していく運動のことなのです。

・マイホームでは、あなたという家主があなたという賃借人から月額20万円の家賃を受け取っている、ということになります。この「見えない家賃」が帰属家賃で、海外赴任などでマイホームを賃貸に出すと(すなわち賃借人があなたから他人に代わると)、このキャッシュフローが「見える家賃」へと現実化するのです。

・「賃貸より持ち家が得」とされているのは持ち家のほうがリスクが高いからです。市場が効率的であれば、リスクが高ければ高いほど、そこから得るリターン(報酬)の平均は大きくなります。

・個人がマイホームを購入すべき理由として、「年をとれば家が借りられなくなる」といわれますが、高齢化社会では高齢者に入居してもらわなければ空室を埋めることができませんから、これも過去の話になってしまいました。

・洋の東西を問わず、マイホームへの執着は人類社会に普遍的に観察されます。これは持ち家が経済的に得だからではなく、それが人間の本性(ヒューマンユニヴァーサルズ)に基づいているからです。その本性とは、「縄張り」です。

・日本でもアメリカのように住宅ローンをノンリコースにすれば、自己破産の悲劇をかなり防ぐことができます。ノンリコースでは、物件の価格下落リスクは金融機関が負うことになり、ローンの借り手は返済ができなくなれば、物件を金融機関に明け渡して債務と相殺します。

・日本でもノンリコースローンは提供されています。それが普及しないのは、不動産の下落リスクを金融機関が負う分だけ貸付金利が上がってしまうからです。

・若いときは金融資本(貯金)はほとんどありませんから、個人のポートフォリオのほぼすべてが人的資本によって占められています。

・ポートフォリオに占める人的資本と金融資本の構成は、年齢に応じて自然に変化していきます。人生設計とはすなわち、この人生のポートフォリオを適切に管理することなのです。

・日本の労働市場はさまざまな働き方が並列しているのではなく、大手企業のサラリーマンを頂点とするヒエラルキー(階層構造)になっていて、中小企業の社員はサラリーマンのなり損ないにすぎません。

・資産運用理論からいえば、「毎月分配」というのは複利を単利に変えているわけですから、お金を増やすエンジンをわざわざ外しているという意味でまったく意味のない商品です。

・日本人はみな、昔からムラ社会的な伽藍空間を憎んでいました。だからこそ近代になって都市生活が可能になると、さっさと故郷を捨てて都会で一人暮しをはじめたのです。しかし皮肉なことに、こんどはそこで会社という伽藍に閉じ込められてしまいました。

・クリエイティブクラスに、グローバル化は多大な恩恵をもたらします。(英語を母語とする)彼らの仕事に国家や民族は関係なく、ひとたび成功すれば世界市場を相手に莫大な利益を手にすることができるからです。

・日本の会社は軍隊と同じピラミッド型の組織なので、社員の解雇ができないのなら、無限に組織を拡張するか子会社を増やしていかなくてはなりません。これはネズミ講と同じで、いずれ必ず破綻します。

・日本の会社はスペシャリストの養成を嫌って、ひととおりのことがそれなりにできる「ゼネラリスト」を好んできました。だから日本の会社には、自分の専門がわからないサラリーマンが溢れています。

・日本でもっとも裕福な(金回りのいい)ひとたちが成功した自営業者や起業家であることも事実です。大企業のサラリーマン社長は郊外に一戸建ての家を建てるのがやっとですが、中小企業のオーナー社長ならベンツやクルーザー、プライベートジェットも夢ではありません。

・もしもあなたが悲観論者なら(人類はすでに地球の資源を使い果たしてしまっており、環境問題を考えればこれ以上の発展はない)、将来のためになにをすべきかを悩んでも仕方ありません。未来がどんどん暗くなる一方なら、いかなる投資も無駄で、いまをせいいっぱい楽しむのがもっとも合理的な生き方になるからです。

・アメリカの標準的なファイナンス理論では外国株をポートフォリオの半分程度にすることが推奨されていますが、これはアメリカ市場の時価総額が世界市場の半分を占めているからです。日本市場の割合は現在では10パーセント程度しかありませんから、この理論にのっとれば、日本の投資家は株式ポートフォリオの九割を外国株で保有しなければなりません。



大震災の後で人生について語るということ

大震災の後で人生について語るということ

  • 作者: 橘 玲
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/07/30
  • メディア: 単行本



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