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『ロングトレイルという冒険』 [☆☆]

・出かけるときは箸を持参し、可能な限り割り箸は使わない。いや、あれは廃材や間伐材を利用しているのだからとも言われるが、心、姿勢の問題だ。

・日本人のあいだではハイキングには軽い登山、トレッキングには長い徒歩の旅というイメージがある。

・アメリカではどれほど長く辛い徒歩旅行であってもハイキングという言葉が使われ、トレッキングという言葉はほとんど使われていない。そのどちらにも共通している点は、山頂に登らなくともよく、つまりは目的を持って自然を楽しみ歩く行為を意味するということだ。

・調査のために、そこがより原始的だという理由で、同じ人間に対して、客観的に平然と質問をする自分を見つめるもうひとりの自分がいて、いつもそいつが、「おまえはそこで何をやっているんだ」、「そんなことを聞いて失礼だとは思わないのか。相手を侮辱していると思わないのか」と囁いていた。

・自然歩きを小説にたとえるならば、デイハイクはショートショート。一泊二日の旅は短編小説。ロングトレイルは長編小説といったところだ。

・森は常に変移し成長していく。変移する過程の森を途中相という。落葉広葉樹の途中相林が雑木林で、多くの場合、遷移の極みがブナの純林となる。

・日本には、ウェルダネス・パーミットの発想はない。だから、どの山も明らかにオーバーユースとなり、自然が破壊されていく。

・新緑の季節になるといつも、緑のバリエーションの多彩さに感嘆する。『日本の傳統色』によると、緑みを帯びた色は64色あるのだという。それぞれの色に名がつけられていることを思えば、日本の文化がどれだけ繊細なものか、あらためて恐れ入る。

・アウトドアは、もともと都会人が都会での生活に疲れ、癒し先を自然に求めることから生まれてきた「遊び」である。

・アメリカでは、アウトドアという言葉は、クワイエット・スポーツに限られて使われている。すなわち、自然にできるだけインパクトを与えない方法で遊ぶ「自然遊び」という考え方だ。したがって、各種モータースポーツやオートキャンピングなども、アウトドアの範疇からは除外される。

・気をつけなければいけないことは、彼らと歩くことの快適さにはまり、常に彼らに頼り続けることにより、学び、自らを鍛え磨くことをしないまま山にはまることだ。何年経とうが、どれだけ山に登ろうが、その人はいつまでたってもひとりでは行動することのできない、いわば、自己管理、自己責任能力のない素人さんということだ。

・地図とコンパスは、自然の中で遊ぶ者にとって使いこなすべき最低限の道具だと思ってほしい。



ロングトレイルという冒険 -「歩く旅」こそぼくの人生 (生きる技術!叢書)

ロングトレイルという冒険 -「歩く旅」こそぼくの人生 (生きる技術!叢書)

  • 作者: 加藤 則芳
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2011/07/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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