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『特別授業3.11 君たちはどう生きるか』 [☆☆]

・私にとって本は、窓やドアのような、向こうに開くもの、向こうからの風や空気を呼び込んでくれるもの、あるいは向こうへ出ていけることを示してくれるものでした。

・詩は言葉を研ぎ澄まして研ぎ澄ました最先端にあるもの。だからこそ、人の胸に斬り込んでくる。詩は、とても先の鋭い犬歯みたいなものだと私は思っています。

・語彙力や構成力、文章力を身につけ、自分のことを自分で表現することに到達するのが国語だと考えています。

・本当の国語の力がないと、やはり周りに流されてしまう。流されて、受けの良い、当たり前のことを書く。

・現実ではない何かを想像して文章を書くことは、未来、先のことを考えていけることにつながる。

・自分が経験したことがないことというのは、本当に対応するのが難しい。ただ、体験しなかったならしなかったなりにできることをやればいいと思うのです。それが想像力だと思います。

・不運と不幸は違う。不幸はたいてい本人にも責任がある。どこかで間違った選択をしたからみじめなことになったのだ。あるいは、考え方を変えただけで不幸から抜け出せる場合もある。しかし、不運に本人の責任はない。ただ向こうから勝手にやってきて君の人生を引っかき回す。

・ヨーロッパで日本より大きいのはスウェーデンとフランスとスペインしかない。なにかと中国やロシア、アメリカなどの異常な大国とばかり自分たちを比較するからいけないのだ。変なコンプレックスは持たない方がいいよ。

・この世界には安定したもの、永続するものはない。すべてはうつろう。「世の中は三日見ぬ間の桜かな」という大島蓼太の俳句は日本人の心情にぴったり来る。

・天災と人災はどこが違うか? 話が通じる相手か否かというところだ。津波を説得して来ないようにしてもらうことはできない。しかし原発を作って運転してきた人たちに「もうそういう危ないものは作らないでいただきたい」と言うことはできる。

・自然の基本的な性格は人間に対して無関心ということだ。自然は世界史の環境であり条件であるが、しかし主役でも脇役でもなく舞台にすぎない。

・互いの命の世話を、病院や学校、保育園、介護施設、警察署・消防署などにそっくり任せて生活しています。これは福祉の充実、あるいは「安心・安全」と世間では言われますが、裏を返していえば、各人が自活能力を一つ一つ失ってゆく過程でもある。わたしたちは社会のこのサービスが事故や故障で止まったり、劣化したり、停滞したとき、それに文句(クレーム)をつけることしかできなくなっています。

・人間の弱さは、それを知っている人たちよりは、それを知らない人たちにおいて、ずっとよく現われている。

・日本列島は世界の陸地面積の400分の1しかないのに、世界中で発生する地震の何と10パーセントが日本で発生しています。

・日本列島に住む全員が、2030年代に必ず起きる「西日本大震災」や火山噴火に向けて準備を始める必要がある。

・テレビや新聞で取り上げられる派手で目先の変わった情報だけが、事実ではありません。

・避難命令の命令権者は、地方自治体の首長。首相ではありません。なぜなら、災害のときには通信も混乱しているかもしれないので、住民を守る直接の責任は、現場の地方自治体の首長にあるからです。

・適切に行動する。もっと大事なもののために、ちょっと大事なものを犠牲にすることをためらわない。これが緊急時の、政府の役割です。住民は、そして国民は、このことを理解し、政府に協力しなければなりません。

・大人の中にはよくこういう人がいます。「日本の政府はなっていない。政治家はリーダーシップを発揮していない。政府のやり方は無駄が多い。だから税金を高くするのは反対だ。増税する前に、無駄を省くなど、やることがいくらもあるだろう」。こう言って自分は何もしない、そんな大人です。

・日本の平成24年度予算案は約90兆円。そのうち、税金で集める予定になっているのはおよそ42兆円だけ。つまり、日本国民は、政府に90兆円の仕事をしてくださいと言いながら、自分たちは42兆円しか払わないのです。90兆円の仕事をしてもらいたいなら90兆円の税金を払う。あるいは、42兆円しか払いたくないのであれば、政府には42兆円の仕事だけしてくださいと頼む。どちらかだと思います。このことを理解していない大人が多過ぎます。

・絶対音感があると音楽が言葉のように聞こえてしまうので、BGMが流れている場所では本をなかなか読み進めることができず、同じページを何度も行ったり来たりすることもあります。

・絶対音感を持つ音楽家の脳の左半球の大脳皮質聴覚野が、右半球の同じ場所に比べて平均40パーセントも大きかったというのです。言語が脳の左右を比べると、左半球に優位な人が多いことは古くから知られていましたので、絶対音感を持つ音楽家というのはもしかすると、「左半球で音楽を聴く人」なのかもしれない。

・超音波検査などで胎児の先天性の病気が見つかって人口中絶したとみられる事例は、過去20年間で7倍あまりに増えたこともわかりました。授かりものであったはずの赤ちゃんが、今では、選ぶものになってしまったのです。

・宗教は信じるものだけど、科学は理解するものだ。

・原発事故のあと、科学が信じられない、という声があちこちで聞かれました。私は、みんな科学を信じていたのかと驚きました。そして、星新一の言葉を思い出しました。そう。科学は信じる、信じないという対象ではなく、理解するものなのです。

・同じ戦争体験でも、アメリカ軍の兵士の方が、イギリス軍の兵士よりもPTSDになりやすい、という研究もある。辛い経験をどんなふうに受けとめ、表現するかということは、医学よりも文化の問題なのかもしれない。

・放射能の被ばくによる明らかな健康上の被害は、いまのところ認められていないらしい。そのかわり、避難することで生活が変わったことや、かたよった報道とかの社会的な影響などが、いちばんの健康被害になっているんだとか。

・被災地の人たちは、毎日、支援物資で配られるおにぎりを食べていて、何日も与えられるばかりの暮らしが続いていました。避難所では「待ってるだけ」の生活が続き、「作る」ということがない。

・誰かに何かを施すのは、気持ちの良いことかもしれません。でも、要注意です。相手に手助けの必要がなくなったとき、自分がさびしく感じるとしたら、自分にある弱さを埋めているだけのことかもしれないからです。



特別授業3.11 君たちはどう生きるか (14歳の世渡り術)

特別授業3.11 君たちはどう生きるか (14歳の世渡り術)

  • 作者: あさの あつこ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/03/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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