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『残酷号事件』 [☆☆]

・虚しいな君は。君がいなくなっても、世界はちっとも困らない。どうでもいい存在だからだ。

・天才の自分のわからないことはない、というような自尊心は欠片もないようだ。

・すでに状況は動いてしまいました。それに対応することこそ先決で、責任の追及は詮無きことでありましょう。

・隙がなく、常に主導権を握りたがっている抜け目ない連中の欠点は、皆が自分たちと同じように思っているはずだ、とすぐに信じたがるところにある。

・正しいという確信がなければ、人を殺せない。

・それは自分とはほとんど関係のないところで、傲慢な強欲者たちの適当な計算と都合のいい思い込みで決定されたことに従って、善悪の区別なく「じゃあ死んでくれ」と一方的に押しつけられる理不尽にして、その場にいる者は誰ひとり責任など取らないという不条理──戦争という悪夢だった。

・これは卑怯なのではない。勝ち易きに勝つ、という戦略戦術の基本原則に忠実なだけなのだ。

・おまえの気持ちはわかる──嫌というほどその感情を知っている。だが──それでもやめとけ。そいつはおまえの気持ちじゃない。おまえの前に死んでいった奴の怨念が乗り移っているだけだ。おまえがそこでやめないと、連中は死んでも怒り続けなきゃならん。誰かがどこかでやめてやらなきゃならないんだよ──わかるか?

・枯れ草の山にぽつん、と小さな火種を落としたときのようなものだった。無害でただ積み上がっていただけのものが、たちまち後先なく炎上する。

・絶対的な感覚に対して唯一対抗する手段は「慣れること」しかない。

・なんで面倒くさいのかっていうと、たぶんもう、やるべきことが全部前もって見えちゃってるから、なんでしょうね。

・相手は国だ。武力のないものがいくら、何を言っても聞く耳なんか持たねーよ。

・難民たちには、故郷に対する想いがあるだろう。だが人は、そういう想いからしばしば過ちを犯してしまうのではないか。

・あるところで無駄に力をふるうことは、別のところでしっぺ返しを受けることになる。

・正義のにおいがするが、それはもしかして──(さらなる邪悪が、その陰に潜んでいるからじゃないのかしら……?)

・死者に敬意は払うが、それに引きずられたりはしない。敵討ちも相手に舐められているということに対する示威行為でしかない。

・おまえは何も欲しくないんじゃないんだよ。欲しいものがでかすぎて、他のもんが何も目に入らないだけなんだ。

・耳触りが良くて透き通ったような声、その意志がシンプルに響いてくる声、大勢を相手にしていても、その一人一人に語りかけてくるようなあの声は、そう──独裁者の声だ。

・何よりもおぞましいことは、その独裁者が命じなくとも、その環境になれてしまった一般の者たちもまた、人体実験になんの罪の意識もなく、率先して色々と研究に励んでいたという事実だった。

・なによりも人の顔つきを決めるのは、その人間がどんな風に他人に見られたいかという意志ですから。

・人間にとって重要なことは、どこから来たかということではなく、何ができるかということじゃないのか?

・正義の味方ぶった結果が、さらなる被害を招く原因になるのだから、皮肉なものだ。

・悪い奴がいて、そいつを倒せばすべてが解決すると信じて戦った者たちは、次の時代では争いを起こした悪い奴になる。

・僕らはきっと、同じことを目指している。ならばお互いのやっていることは、すべてがそれぞれのためだとも言えるでしょう。貸し借りはありません。全部を共有しているんですから。

・人間はどうせ聖人になんかなれない。心の中に悪いものが必ず存在する。だからどんなに良いことをしても結局は偽善者にしかならない。

・独裁者は過去に何人もいるが、彼ら、彼女らに共通していることはすべて、始めたときには周囲のみんなが独裁者を正義だと認めたということである。

・正義の味方は、なぜかみんな仮面をつけている。素顔のままで正義を行おうというものはほとんどいない。まるで彼らは後ろめたい想いを抱えて恥じているかのように皆、顔を隠す。もしかして彼らは「正義」そのものに対して恥ずかしい思いを持っているのかも。



残酷号事件 the cruel tale of ZANKOKU-GO (講談社ノベルス)

残酷号事件 the cruel tale of ZANKOKU-GO (講談社ノベルス)

  • 作者: 上遠野 浩平
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/03/06
  • メディア: 新書



タグ:上遠野浩平
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