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『超・格差社会アメリカの真実』 [☆☆]

・「金持ちサークル」に生まれ育ち、莫大な遺産を代々相続し、その地位を継承しているアメリカの特権階級は、欧州封建制度下の貴族階級と実質的にどこが違うのだろうか。

・1ベッドルームの安アパートしか知らなかったグーグルの若者たちは、豪邸の維持がいかに面倒かを購入後に初めて知り、維持するノウハウも時間も忍耐心も、管理人を雇うノウハウすらもないことに気づいて、慌てて家を売りに出したというわけだ。

・ウォール街は、人口のトップ1%をハッピーにしておけば、全米の金融資産の6割を押さえることができ、10%をハッピーにすれば、9割を押さえることができる。

・『共産党宣言』や『資本論』が、半世紀に渡って世界中で革命を引き起こし、その後始末にこれまた世界中が次の半世紀を費やしたのだから、思想の力は本当にあなどれないものがある。

・北部にとっての戦争目的は、当初は脱退した州をユニオンの支配下に戻すことだったが、それは途中から「奴隷制の廃止」にすり替わった。なぜ、戦争の名目がすり替わったのか。理由は諸外国、特にイギリスが、「南部連邦」を独立国家として認知することを防ぐための「錦の御旗」が必要なためだった。

・放棄された財産、つまり解放された奴隷に対しても、結局北部は何の対策も講じなかった。そのため廃棄された機会設備のように、多くの黒人が家族も基礎教育も生活手段も住む場所も何もないままに、壊滅的な打撃に喘ぐ廃墟の中で放り出され、吹き溜まりにたむろすることになった。

・北米大陸には農業に適した温暖な地域が多いが、原生植物に小麦や米等がなく、トウモロコシが唯一の原生穀物だった。麦類に比べ、トウモロコシの食用化には時間が掛かったため、北米大陸はユーラシア大陸に比較して、農業の発生が遅かった。

・スペイン人が馬を連れてくるまで、北米大陸には家畜にできる動物がいなかった。そのため輸送力や農業生産性も低かった。

・家畜化できる動物には様々な制約条件があり、人類が誕生して以来15世紀までに世界中で家畜化できた動物は、犬、ヤギ、羊、豚、牛、馬、ロバ、水牛、鶏、猫、ラマ、アルパカ、ラクダ、モルモット、の14種類に過ぎない。このうちエネルギー源として使えたのは7種類だけで、それが北米大陸にはいなかった。

・ウィルスはしばしば家畜を媒体にして人間に感染するから、家畜を飼っていたユーラシア大陸の人間にはウィルスに対する抵抗力ができていた。しかし家畜を持たない北米大陸の住民はウィルスに対する抵抗力が究めて弱く、そのためヨーロッパ人が持ち込んだ麻疹や水疱瘡でその大多数が病死した。

・はるか上にいる、自分とは無関係の大金持ちのことや、政府や国家政策のことなどを考えてみても、無駄な時間を潰すだけで生活の改善には何の役にも立たない。

・誰もお金を払ってくれそうもない知識やスキルは、何の役にも立たない。

・どうすれば金持ちになれるのか、何なら売れるのか、売れるものを手に入れるにはどうすればいいのか、何をどういうパッケージにして誰にどうやって売ればいいのか。それを毎日考え、身の回りの出来事や周囲の人からアイデアを得ながら、大半の人は努力を続けている。

・移民は、新しい社会に溶け込むために努力する。それは端的に言えば周囲の人と同じように行動することであり、同じ話題を持って、同じような意見を言うことである。他の人が語らないことを語ったり、批判的なことを口にするよりも、多数意見に口を揃え、同じような考え方をするのが、新しい社会に受け入れられ、そこに溶け込む早道だからだ。それが長い間繰り返されてきたから、アメリカは文化の多様性がある反面で、公表される意見や眼に見える行動は、驚くほど標準化されている。

・感謝祭やクリスマスには、貧しい子供やホームレスに無料でディナーやプレゼントを配るのが善い行為となれば、なぜ貧しい人が多いのかは問わず、とりあえずボランティアとしてディナー作りに参加し、寄付金を出す。

・そもそも職業教育は、既存の社会システムを前提にして、その中で役立つスキルを教えることだから、既存体制に疑問を持つことを教えたりはしない。

・中高年になってから職を失い、希望を失った労働者は、若者のような怒りには走らず、教会に救いを求める。キリスト教ファンダメンタリズムの復活は、追い詰められた労働者層の増大と無関係ではない。

・草の根民主主義はプロを巻き込んで、レベルの高いものに引き上げられる。それがなかったら、草の根民主主義は素人の感情的な議論の域を出難い。

・サプライチェーンは国際間にまたがって構築されてきたから、どこかで鎖が途切れると世界中が大迷惑を蒙り、鎖を切った人(国)は、世界中を敵にまわすことになる。

・例えば中国が台湾を危機に陥れたら、世界中で半導体やエレクトロニクス回路基板が不足して大混乱になり、中国は世界中から非難されるだろう。

・サプライチェーンは世界平和を維持する強力な力になってきたし、それに組み込まれて重要な一環を担っていることは、少なくとも短期的には、大きな防衛力になった。

・幸か不幸か、基本的な倫理や訓練や教育の欠けている人が多いだけに、信頼できる人間に対する雇用のニーズは常にある。

・バックグラウンドが全く違い、素性もよく分からない人たちが烏合霧散を繰り返す社会には、同質の人が定着している社会とは異なるノウハウがある。それは端的に言えばプライバシーの尊重、つまり余計なことには触れないルールであり、広くかつ薄い人間関係に集約される。

・職場を、個人生活まで含めた村落共同体と認識するのか、目的を達成するために集まった組織と認識するのかでは、組織の運営方法は大きく違ってくる。

・クリエイティビティの源は、各人の持っているセンサーや情報の処理能力が他の多くの人と違うところにあり、それを増幅させることによって育ち、形になる。

・組織が効果的に運営されればされるほどクリエイティビティは押し潰され、容認される「クリエイティビティ」は発明や創造(新しい路線の開発)ではなく、改善(既定路線での進展)の域を出なくなる。

・実用的な技術革新は、不便さや問題点、欠けている部分を認識し、それを解決しようとすることから出発することが多い、そのような問題が存在すれば、複数の人が独立に認識できるから、同じ技術革新の種は方々で同じ時期にスタートすることが多い。だから技術革新を事業として成功させるためには、スピードが重要な要素になる。

・間接コストも考慮すると、人が集まるミーティングはとてもコストが高い。それだけのコストを掛けるなら、ミーティングはそのコストに見合う価値のあるものでなければ割が合わない。

・アメリカでは訴訟が多いことは誰でも知っている。訴訟が極めて非生産的であることは、訴訟を一度でも経験した人なら誰でも知っている。だから何をする時にも、訴訟になりそうな人は相手にしないことがベストで、そこでまず人選に篩が掛けられる。

・学校を卒業した人全員が、自動的にキャリア・パスを保証される(べき)という前提は、非現実的と言わざるを得ない。考えてほしい。日本では高度成長期にあってすらも、女性には、つまり新卒者の半分には、キャリア・パスは制度的に存在しなかった。





超・格差社会アメリカの真実

超・格差社会アメリカの真実

  • 作者: 小林 由美
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2006/09/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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