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『若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか』 [☆☆]

・とことん付加価値を追求し、こだわりの「マイブランド」を作り上げてしまうと、何らかの事情でそれがむずかしくなったとき、「選べない」という状況に耐えられなくなってしまう。

・若者の場合は生まれたときからゲームがあったので、ある意味でそのつき合い方は冷めており、必要ならば距離を取ることもできる。しかし、問題は上の世代だ。彼らはゲームとのつき合い方によくなれておらず、いったんハマると身を滅ぼしかねない勢いでそれをやり続ける。

・そんな若者たちも、領土問題などになるととたんに「隣国になめられるな」などと声を荒げてみたりするが、「じゃ、どうすればいいの?」と聞くと「……あ、あとは政治家にしっかりしてもらって」などととたんにトーンダウンしたりする。

・かつては、「ぜいたくができる人」が「立派な人」と思われる、という時代もたしかにあった。何でも使い捨て、高級な食材を食べ散らかし……。つまり、何ごとも「惜しみなく」できる人がリッチな成功者、と思われていたのだ。

・クスリに関しては専門家顔負けの知識で「三環系抗うつ薬の抗コリン作用が出るので」などと遠ざけようとしていた20代後半の男性が、「遠隔操作で気を送る」というセラピストのことは手放しで信用し、言われるがままに何十万円ものお金を支払っていたのだ。

・若い人たちは「○○を持っているから」「××ができるから」というように目に見える何かでプライドを満足させるわけではなく、「○○だけはしていない」「××はされていない」ということが自分の誇りになっている。

・上の世代はせめて「ほら、すごいだろう?」と大きな宝石やクルマ、数々の表彰状や勲章などを見せびらかしても、若い人は、それがその人のプライドに直結していることさえ理解できず、「どうして自慢するのですか?」と途方に暮れるだけ、ということは知っておいたほうがいい。

・世の中には自分よりすぐれた人が無数にいることをソーシャルメディアなどで常時、思い知らされている彼らは、常に「オレってダメだな」「私なんて必要のない人間なのではないか」と自信喪失や自己卑下を感じながら生きているのだ。

・ボーダーライン・パーソナリティ障害の人たちは、常に自分のイメージが一定に定まらず、ちょっとした他人の評価で傷ついたりパニックになったりする。そのため、「人に見捨てられたらどうしよう」という不安が強くなりすぎて、目の前の人を自分でもそう気づかないうちに操って、「自分の取り巻き」「自分のファン」に仕立てあげよう、という行動に出てしまうのだ。

・学生に聞いても、ほとんどが枕元に置く携帯電話の電源は就寝中も切らずに、メールの着信音がすると飛び起きて、その場ですぐに返事を書くのだという。まさに「毎日が当直業務」という感じだ。

・子育て中の母親にとっては、育児は間違いなく「仕事」だ。しかし、週末だけ気分次第で育児を手伝う父親にとってそれは「遊び」。だから、たまに育児参加して「何だ、子育てってこんなに楽しいじゃないか。毎日こうやって遊んでいるだけなのに「疲れた」などと言う妻は、単なるワガママだ」と決めつける夫がいるが、それは違うだろう。

・彼らにとって好きはどこまでも肯定で、嫌いは無関心。

・友情? 1万円よりは大切だけど、100万円よりは軽いでしょう。

・自分も追い詰められ、「後ろがない」と感じている人が、より弱い者、より下の者を対象に、攻撃を加えたり暴言を浴びせたり、仲間はずれにしようと企てたりすることで、「ほら、自分はまだ大丈夫なんだ。こんなに強い立場なのだから」と一時の安心を得ようとしている、ということだ。

・いじめは、結局は誰の得にもならない。特にいじめる側にとっては、もしかすると一生、ついてまわる悪評、悪いウワサのもとになりかねず、一生、幸福から遠ざかる可能性さえある。

・泣くことには「没頭できる」という効用があると述べたが、逆に言えばそのあいだは理性的な判断はできなくなるという意味でもある。

・スピード時代には熟考よりも条件反射的に答えを出すことばかりが求められているが、その結果、「あの政権交代は間違いだった」「あのブームは一時的だった」と何ごとも長続きしない社会ができ上がってしまった。

・「絆」は、2011年の「今年の漢字」にも選ばれた。ただ、診察室には昔もいまも、「濃すぎる人間関係」で悩む人が大勢、訪れる。

・テレビのレポーターが避難所で「いやー、すごい絆ですね。この力があるから、みなさんでがんばれるんですね? ね、この力……」などと被災者から「絆」という言葉を引き出そうとしているかのような質問をしている場面も、報道番組で見たことがある。

・拒食や過食はただ体型へのこだわりやダイエットの失敗から起きるものではなく、「いまの自分を肯定できるか」といった自己肯定感に強く関係している。

・おそらく若い人は、「運命」という言葉をもう少し軽く「偶然」と同じ意味で使っている可能性もある。自分から積極的に望んだのではなく、受け身で待っていて偶然にやって来たようなものを「運命」と呼んでいるのだ。

・よい老後を迎えるためには、「身の回りのことがひとりでどれくらいできるか」といった問題がきわめて大切になる。

・私が心から驚いたのは、江藤氏が生活のあれこれについては妻にまかせきりで、「自分では電球も取り替えられない」「電子レンジも使えない」と公言していたことだ。つまり、それはすべて妻がやっていた。これではその妻が急に亡くなったら、心の痛手よりも何よりも、まず今日の生活さえできなかったであろう。

・何といっても「自分で自分の最低限の世話はできる」というのは何より強みだ。

・そう遠くない未来に、脳死臓器移植の意思を示すカードと同じように、延命治療の可否など命の問題についての意思(「リヴィング・ウィル」ともいう)を表明するカードを携帯する時代が確実にやって来ると思う。





若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか (朝日新書)

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