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『どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?』 [☆☆]

・人類愛云々じゃなくて、社会的コストってことを考えると、今の体制に不満な人を作らないための方法は、「やさしくする」ってことにつきるんだよ。

・リアリズムって現場主義だからさ、「とりあえずなんかシステムあるけど使えっかな?」って、使いながら考える。でも、あとから来た人間は、自分で作ったシステムじゃないから、杓子定規に使うしかない。だから劣化する。

・今の政治がダメなのは、ルールが整備されていないからでもなく、制度設計が間違っているからでもなく、政治家たちがリアリストじゃなくなっているからなんだよ。みんなイデオロギーの人になってしまった。

・「需要ないんだ。じゃあやめようか」って、それが普通なわけよ。それを、ニーズがなくなってもやらなきゃいけないって思っているから、何していいかわかんなくなっちゃうんだよね。

・マスコミって、大政翼賛会になるか、全部批判するか、どっちかなんだよね。

・自分が外交官だったらできるはずもないことを、他人に対しては平気で要求できる。身体性がないってそのことなんだよ。

・日本の場合、政治参加っていうのは全部批判なんだよね。

・わかんないんだよ、今の親は。級で言わないと。自分の子供の身体能力の向上さえも、インストラクターが「級が1級上がりました」って言わないとわかんないんだからさ。

・やっぱり、新しいものってのは、つねに身体性から出てくるからね。観念から作られた新しいものってないもん。

・文学も、戦後は、太宰治の『斜陽』からだから。あれは、女性の一人称の語りでしょ。大きい変化のときは、口語に変わるんだよね。だって、言語でいちばんフィジカルなものは口語だから。

・火とか、水とか、風とか、音とかを再現するのがアニメなんです。それを知らない人間はそもそも再現できないので、もう不可能です。

・敵は議員だ。高級をもらってグダグダ議論しているだけの議論がいけない!

・地方は大統領制なんだ。つまり、首長を別に選んでいるわけだから、直接制なんです。直接制で選ばれた首長が、代理制で選ばれてる議会を批判している。だからこれは、間接的に、議会制民主主義を批判してるんだよね。

・メディアはとにかく変化が好きだからさ。そういうふうにひっかき回す政治家が大好きなんだよ。有権者もそれに煽られて、「次々とアイディアを出す政治家はいい政治家で、ゆっくりことを進めようとする政治家はよくない」というふうに思い込まされている。

・新聞が社説で「アメリカ政府も日本政府も沖縄県民もみんなが満足するソリューションを探しましょう」なんていう寝言を言えるのは、現実を見る習慣がなくなっているからだと思うよ。

・どんな空疎な美辞麗句であっても、それで実際に何十万の人が動いたら、それはもうリアルなんだよ。いくら裏の情報を知ってても、知っているのが5人だけだったら、それはリアルでもなんでもない。

・「私はまず給料を返納する」とか言う政治家は疑ってかかったほうがいいというのはかなり確度の高い経験則なんだよ。だって、そういう人間は「人間って結局金で動くものだから、金の話にいちばん敏感に反応するものだ」っていうチープな人間観が内面化しちゃっているんだから。

・彼らの書き方としては、自然現象と同じ扱いなんだよね、戦争が。「ひどい暴風に巻き込まれてしまった」って感じ。責任がないんだよね。巻き込まれて、大変な目に遭ったから。

・漱石がいなかったら、日本の近代、もっとバカだった。漱石が、日本近代、特に男性たちに、自己形成のロールモデルの筋道をつけたと思うんだよ。武士道はなくなったわけだからさ。

・なんで戦争に負けたのかっていうときに、納得できる理由が必要だったんだよ。でも、天皇制っていうのは、ちょっと口に出せない。だから、一般国民が戦争をなすりつけた相手っていうのはさ、A級戦犯の何人かと、封建制っていう政治的幻想だったと思うんだよ。

・2005年に欧州会議がロシアに対して「北方領土を返還せよ」っていう決議をしているの知ってた? 知らないんだよね、みんな。だって、日本の新聞ほとんど報道しなかったから。報道したのは読売新聞だけらしい。

・悪い人じゃないんだ。みんな、いい人なんだよ。でも、あまり頭のよくない善人が、この国難の時期に国政の舵取りをするってことでいいのかな。

・僕ら子供の頃って、原水爆実験どんどんやってたわけじゃない、太平洋で。ストロンチウム90なんか日本列島に降り注いでたわけでしょ? その頃小学校の校庭の放射能測定なんかしてないから、比較しようがないけど。

・チベットに鳥葬ってあるじゃない? 今、ハゲタカが人間を食わないって知ってる? 内臓には口をつけないんだって。食うと死ぬから。ハゲタカが食ったら死ぬような毒物を体内に備蓄しながら生きてるわけですよ、我々は。

・原発はまさに「腐海」なんだよね。我々は「腐海」とともに生きるしかない。という方向に、頭を切り替えていかないと。

・あの「汗をかく」っていう(笑)、政治家用語というか、日本語でない日本語を使って語ってるレベルで、もう政治家ってダメだなあと思うもんね。

・「待ったなし」って知的負荷の少ない優先順位のつけ方なんだよ。古舘伊知郎がよく言うんだけどね。

・統治者の質をどんどん下げるのは「日本がつぶれるぎりぎりの線まで、どこまで政治家の質を下げられるか」のチキンレースをやってるみたいに僕には見えるよ。

・田中角栄ってさ、人が来て、就職の世話お願いしますって言われたら 「じゃ、俺の会社に来い」、「お金貸してください」って言われたら「はい」っていう人なわけでしょ。目の前に来た人の面倒をどんどん見る。それが積もり積もって何万人……っていうことを実践した。

・自信で露呈したことがいっぱいあるけど、そのひとつは今言った自分自身を養う力の欠如だと思う。食べもの、飲みもの、雨露をしのぐところを自分の手で調達するっていう、人間にとってもっとも基本的なスキルが制度的に破壊されている。そういうものは全部商品として金で買うしかない。

・1%の金持ちと99%の貧乏人って言うけど、アメリカ人の99%は他の国に行くと金持ちの何%になるだろう。

・反社会的ってのは、常に社会を参照しながらふるまうことだから、ある意味過剰に社会的なんだよ。

・大学入試ってただの点数じゃない? ただの点数だと思うから、一流大学とか入る奴見ても、「ただの点数じゃん」って言えるわけで。もしも、「総合的な人間的な力です」とか言われたらさ。地獄だよ。だから、一部しか測らないってことによってみんなを救ってるんだってことを、わかってほしいんだよね。

・橋下徹も次々に敵を作っていって、そこに攻撃を集中していって、そのつどある種の勝利や達成感は得ていると思うけど、支持者を増やしているというより、屈服する人間を増やしているわけでしょう。それでは国民統合の原理にはならない。

・やっぱり「平和ボケ」なんだと思うよ。本当に国難的危機だと思っていたら、「誰が悪い」とかいう話にはならないもの。どうやってひとりでも仲間を増やすか考えるでしょ。

・世界をよくしようって思ってないんだから。世界を罰したいんだよ、あの人は。

・「誰か代案出せよ」「じゃあ、俺はこう思う」っていうふうに出しちゃったら、もうオルタナティヴじゃないんだよ。「俺はこう思う。さあ、誰か反論あるか!」っていうときに、「ほお、月がきれいですな」みたいな、そういう感じで出てくるのがオルタナティヴで。





どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?

どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: ロッキングオン
  • 発売日: 2012/06
  • メディア: 単行本



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