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『サイエンスライティング 科学を伝える技術』 [☆☆]

・事件記者には犯罪、政治記者には選挙、スポーツ記者には試合があるように、科学記者には学術専門誌がある。1年間に開催されるスポーツの試合や選挙、殺人の件数は全米全都市を合わせたところで、学術専門誌に載る論文の数にはおよばない。

・記事では「両極の意見を紹介すべし」という古い観念にとらわれた編集長がそういうことを言ったりするが、じつにばかげた考えだ。そんなことをすれば、人工衛星に関する記事を書く場合は、地球平面協会関係者のコメントまで取らなければならないことになる。

・たとえば、危険な化学物質にさらされている労働者への調査で、彼らは平均的に一般人よりも健康であるという結果を得たとする。しかし、だからといって問題の化学物質を無罪放免にしてはならない。労働者は一般的に健康なのだ。なぜなら、健康体なればこそ仕事に就けているのだから。

・私は単純にしてスゴイ規則を思いついた。文章の冒頭は前文の最後の言葉か句で始めるべしという規則だ。つまり、A-B、B-C、C-Dというパターンになる。

・突飛なものを書こうとしちゃだめだ。誰もが書こうとしているテーマを書くんだ。それこそが喫緊の問題で、ビッグストーリーなんだから。

・どんなプログラムソフトを使うにしても、熟練度は急勾配のカーブを描いて上昇していく。したがって、自分のニーズに合ったプログラムを見つけたら、それを継続して使うことが肝心だ。

・ブラインドタッチのように無意識に難なくできるようになった技能が合わさったものは習慣になる。

・私は仕事に使うそのようなファイルのコピーをUSBメモリーに保存し、それをキーホルダーとブリーフケースに一つずつ付けている。これさえあれば、旅行中でもパソコンを借りてそれに接続すれば、必要な情報にタイムリーにアクセスできる。

・ユニセックスな名前をもつある主要週刊誌の編集長は、宛名に「ミズ誰それ」と書かれた企画書だと中身を見ずに捨ててしまう。相手が男性であることすら調べないようなライターに執筆を依頼する気にはならないからだそうだ。

・「著作物が誹謗中傷や公序良俗に反するもの、その他法に触れるものではなく、なおかつ所有権、プライバシー権、その他第三者の権利を侵すものではない」ことを保証するように求められることもある。しかしそれは裁判所が判断することであって、ライターは保証などできない。ライターはその項に「私の知る限りにおいて」と挿入して然るべきである。

・「どんな読者を思い浮かべながらタイプライターを打っているの?」。返ってきたのは「声に出しながら読む人」という答えだった。つまり必ずしも高学歴ではない人たちという意味だ。

・研究成果だけを知りたいのであれば文献に目を通せばよい。しかし、その研究は最先端の流れのどこにどう位置づけられるのか、その研究の背後にどのような熾烈な競争があったか、そういったことは文献を読んでも見えてこない。そこを書くのがサイエンスライターなのである。

・最近は家庭用ビデオカメラが高性能になり、個人でもドキュメンタリーの制作が可能になった。パソコンでデジタル編集すれば、素人でもまずまずのビデオレポートができ上がる。制作しただけで放送されなくても才能を披露する機会にはなる。そこから新たなキャリアパスが開かれないとも限らない。

・出席しなくてはならない会議もなく、おしゃべりする同僚もいないフリーランサーは、正社員の同業者よりも1日にこなせる仕事の量が多い。ぜひその強みを生かそう。

・オンラインジャーナリズムは独自の地位を確立しつつある。当初は映像つきのラジオにすぎなかったテレビが、やがて全く別個のニュースメディアになったように。

・「聞きなれた言葉で聞きなれない事柄を説明する」のが優れたサイエンスライターの仕事である。

・美の最悪の敵は型にはまること。

・算数の計算を厭う人はナンセンスな話しかできなくなる。

・宇宙は、複数の章で1つの物語を語る本として想定することもできる。宇宙を探る望遠鏡は、その物語を最終章から第1章へと逆に読み進んでいるのだ。

・薬理作用を発揮するほどの強い薬は、一定量を超えると必ず、身体のどこかに何らかの副作用を起こすものなのだ。

・患者一人だけの効果はあくまでも逸話であり、逸話は薬の価値の証明にはならない。薬の価値を決めるのは患者全体に対する効果である。

・心臓病、癌、脳卒中、糖尿病という、アメリカ人の十大死因のうちの四つは肥満によって悪化するので、肥満は喫煙に勝るとも劣らない寿命短縮要因なのである。

・知っていた方がいいことを全部知るなんてことはそもそも不可能である。

・要は、微妙な意味や提喩を見抜くこと、見えるものと想像できることとのあいだの空隙を探ること、詩人のT・S・エリオットが「アイデアと事実のあいだに」射すと謳った「影」について思索することだ。

・グリズリーの生息域に足を踏み入れたなら、おそらくは生まれてはじめて、自分が食物連鎖の最上位にいるわけではないと気づくはずだ。そんなときほど、風向きが気になることはない。自分の不注意に運の悪さが重なれば、人生にとどめを刺せる何者かがどこかに潜んでいるのだ。

・核物理学にもオカルトにも共通の難しさがある。どちらも素人には理解が難しく、奥義をきわめた者にしか通じない言葉や怪しげな技術を駆使している。作り出すものも、奇跡的に見える。





サイエンスライティング: 科学を伝える技術

サイエンスライティング: 科学を伝える技術

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 地人書館
  • 発売日: 2013/12/16
  • メディア: 単行本



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