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『憑物語』 [☆☆]

・あやつが人の形を真似て作られたのは、人であるためでも人になるためでもない。人といるためじゃ。

・「嫌な予感がする」と言えば大体当たる。嫌なことがひとつもない人生、嫌なことがひとつもない日などというものは残念ながら確実にないからだ。

・「いい予感がする」と言ってしまえばいい。いいことひとつもない人生、いいことがひとつもない日などというものもまた、ないからだ。

・夢を見ることもできないこんな世の中だからこそ、夜くらいは、夢を見ていたいものではないか。

・そもそも朝だから起きなければならないという発想そのものが、もう旧態依然とした姿勢であることは、すでに証明されている事実でもある。

・日本が誇る国際的文化であるアニメの大半が深夜に放送されていることからも了然であるように、今や人類は夜行性なのだ。

・一生ぼんやり生きたところで、精々一笑に付されるくらいだ。むしろ笑いものにならない人生なんて、つまらないだろう? みんなの笑顔を見ながら生きていきたいじゃないか。

・貫手で雑誌を貫けるような奴と、組手をやりたいとは思わない──思える奴は、自分でも同じことができる奴。

・恩を受けたらそれを返してすっきりした状態になっていたい、あるいはちょっと多めに返して、こちらのほうが上に立っておきたいとか──まあ、そんな感じだろうか。

・武将の双肩には、そして壮健には、多くの命が乗っかっていたということだ。

・責任があるからと言って、人は必ずしもそれを果たせるとは限らないのだ──人の力を借りなければいけないことも、人任せにしなければいけないこともある。

・なまじ、携帯電話やらメールやら、人と人との接点が増えた現代社会だからこそ、それらのツールに頼れない相手と連絡を取る方法というのは、ほとんど見当たらない。というか、便利さにかまけて、僕達がそのスキルを失ってしまった。

・彼女の信条はとにかく「先回り」なのだから。

・いつ敵に回るかわからない人だからこそ、弱点を探るような不穏な行為をするなって言ってるんだよ。味方のうちはいい人であることは間違いないんだから。

・ただまあ、人間、好きなものより嫌いなもののほうに精通してしまうのも悲しい事実。

・報いではなく。ただ単に、これは対価と言うべきなのである。

・生き汚い。

・タイミングが良過ぎるっていうのは、ただの偶然でないんやったら、概ね人為的なもんや。

・大抵の場合、偶然というのは何らかの悪意から生じるものだ。

・画商は絵画の価値を理解し、それを美しいと思うけれど、でもそれを、わかりやすい金銭でもって売り買いしてしまう。

・最強の矛も、最強の盾も、どうせ最強ならぬ人間が使用するという時点で、最強ではなくなってしまうのだから。

・知っている範囲のことを、知っていると自覚することはできる──だが、知らない範囲のことを、知らないと、いつでもいかなる場合でも自覚できるわけではないということである。

・知らないことを知っていれば、知ろうと動くこともできるかもしれないけれど、知らないことを知らなければ、それを知るための行動を起こすことはない。

・最近はもうスマートフォンとさえ言わず、単にスマートデバイスと言うとか。

・結局のところデータであるところの「作品」を、どういうツールで読むかというのが読者にとっては重大だから、ハードには身軽さよりも身近さが必要なのだろう、きっと。

・成功譚よりも成長譚のほうが私は好きですね。たとえ失敗しようと、それで人間的に成長できるのならば、ストーリーってのはそれでいい気がするんですよ。

・人生はそもそもそんなにうまく行くものじゃないんだから、うまく行かなかったときに、どう挫けないか、どうそれをバネにするのかってことでしょう?

・人間、成功譚よりも失敗譚、成功譚よりも成長譚のほうが、学ぶものは多いかもしれない。だけどさ、だからと言って、失敗や不幸を、犠牲や悲しさを、「いいもの」だとは思えないし──思っちゃ駄目だろ。

・結局、人間ってのはみんな、思いのほか口が軽いようでいて口が重い──ちゃんとしていない世の中を、ちゃんとしている風に見せられるくらいには。





憑物語

憑物語

  • 作者: 西尾 維新
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/09/27
  • メディア: 単行本



タグ:西尾維新
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