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『「いいね!」が社会を破壊する』 [☆☆]

・配当目的の株主からすれば、業績に陰りが見えれば投資先を変えればいいだけのこと。投資している企業の将来など、どうでもいいのです。企業の十年後より、大切なのは今年の配当。

・大企業というのは、いわば連合艦隊のようなものです。多数の事業部が寄り集まり、一つの艦隊を形成する。

・ニューヨークやロスアンゼルスのような巨大都市は、アメリカでは例外。地方都市は、日本の感覚で言うならただの田舎です。何をするにも車がなければ話にならない。

・再販制度が無く、販売価格を自由に設定できるアメリカでは、大量に安く仕入れられるアマゾンが提示する売価は圧倒的に安いときていますし、それでも高いと言うならば、中古本まで斡旋してくれる。これでは、地方の中小書店が存続できる理由を探す方が難しい。

・現在出版業に携わる方々が口にする否定的見解には、一つの共通点が見受けられるような気がします。「一覧性において紙の本に優る媒体ではない」「モニターで読むと頭に入りにくい」「画面で見るのは違和感がある」――、果ては「インクの匂い」と、もっぱら情緒的な理由によるものです。

・消費者というのは利便性を見出し、さらにそこに価格の安さという要素が加わったら最後、既存の技術などあっさり捨ててしまうもの。既存産業に従事する人間の思い入れなど、ものの見事に無視します。

・装丁、印刷、紙、製本、そして書店と、従来の書籍流通に携わってきた存在をことごとく不要とするのが電子書籍ですから、本来コンテンツの価格は格段に下がるはず。

・携帯電話に撮影機能が付き、ブログ、SNSが出現した途端、写真を撮らなかった層が自然とシャッターを切り始めたように、電子書籍に今までになかったメリットを利用者が見出した時、市場は爆発的に拡大する。

・ネット通販が誕生して僅か二十年ほど。これだけの短期間に、なぜ市場は急拡大したのか、なぜ誰もが自由に物を売れるようになったのか。それは、与信審査のハードルを無くした、あるいは極限まで低くしたからです。

・「企業は人なり」とは言いますが、それは「十分、給与に値する働きをする人」を指す。

・IT技術が進歩した今の社会において、無駄を削ぎ落とすことが容易に雇用の喪失につながる。言い換えれば、これまでの社会では、まさにその「無駄」の部分に生じた「雇用」によって生かされてきた人間が圧倒的多数を占めるからです。

・地方の過疎化、高齢化。かかる状況を何とか打開せんと、多くの自治体が工業団地を整備し企業誘致に必死ではありますが、今どき大規模な雇用を生む施設を国内に設ける企業など、まずありはしません。

・当日配送の登場は、ネット通販の弱点であった生鮮食料品の品揃えを充実させることにつながり、利用者を増加させていく。そして、それは間違いなくGMSどころかリアル店舗の売上を食うことを意味する。

・常にイノベーションの波に晒される現代社会において、便利さ、快適さを手にする代償として手放さなければならないものは何かと考えると、真っ先に挙がるのが雇用です。

・スマホ一つの中に一体どれだけの機能が集約されているか。アプリと称されるソフトをダウンロードすれば、かつて製品として存在していた「物」の数々が、たった一つのマシーンの中に跡形もなく飲み込まれてしまっているのです。

・かつて目覚ましといえば時計でしたが、今ではスマホのアラーム音。

・肌身離さずと言えば、昔は「御守り」でしたが、今の時代はさしずめスマホ。

・コンピュータが人に優る働きをするには、プログラムとデータベースの二つが整わなければなりません。

・時の首相が使用する携帯電話に、機密保持対策が講じられたなんて話は、寡聞にして存じませんし、それどころか国会議員の先生方は嬉々として携帯電話やスマホで会話し、メールを送受信し、ツイッターで情報を発信しています。

・ネットにも少なからぬ副作用がある。それは、個人情報を第三者に把握されることもさることながら、人の本音、人の素の姿が簡単に見えてしまう点にもあるように思います。

・実社会には本音と建前が存在し、この二つを時に応じて使い分けているからこそ、人間関係が成立しているのも、また事実。

・何かを語るにしても、常に相手の性格や立場、考え方を考慮し、言葉を選び、反応を予測しながら円滑な意思の疎通を心がけているはずです。

・会社や友人の間で、本音で語り合おうものなら、それこそ収拾のつかない事態を招くことになるでしょう。

・黙して語らずというのが、今の時代に自分の身を守る最適の手段の一つと言えるかもしれません。

・リストラが必ずしも経営の改善に効果があるかと言えば、決してそんなことはありません。リストラが始まると、真っ先に辞めて行くのが有能な人間だ、とはよく聞く話です。

・「最近の若い世代はお金を使わない。酒も飲まず、遊ぶこともあまりしない。いったい何のために働いてるんだ」という言葉を耳にすることがありますが、そりゃあ当たり前でしょう。会社が未来永劫存在するなんて、あり得ないことに気がついているからです。

・「借金と言っても、買った家は資産として残る。家賃を払うくらいなら──」という考えも、もはや成り立ちません。借家なら収入に合わせて家賃を抑えることは可能ですが、一旦抱えたローンの支払額は減額されることがないからです。

・大卒といっても、企業の側は一律には信用できないと考えている。まして、欲しているのは単なる人手じゃない。なのに、一方の学生は、もれなく大卒に相応しい仕事を求め、能力・適正にかかわらず、単純労働を望んではいない。

・為替リスクを解消する最良の策は地産池消。それも、最も大きな消費が見込め、かつ安価な労働力のある国に製造拠点を置くのがベストという結論になる。

・元々、激しい価格競争を強いられ、薄利多売とならざるを得ないガソリンスタンド業界にとって、自動車メーカーが燃費の向上に心血を注ぎ、この先、ガソリンの消費量が伸びるどころか、ますます消費しない自動車が増えていくんですから、お先真っ暗。

・ネットの世界には、「ネット原理主義者」と呼ばれる人たちがいて、「ウェブの世界に著作権は必要ない。ネット上のコンテンツは全てフリーであるべきだ」と論じます。

・「新聞は残る。いくら情報媒体としてネットが発達しても、一次情報源としての新聞の価値は失われるものではない」と語っていらっしゃいましたが、問題は価値云々ではないのです。いくら価値があっても、事業として成立しなければ意味がありません。

・消費者は、ハードウェアの価格にこそ関心を持つけれども、ランニングコストにはえてして無頓着なものなのです。

・そもそも所得格差がこれだけ広がったのは、多くの仕事が人手に頼らざるを得なかった時代から、「人」と「機械」とのコストを比較できる時代になったことがあると思います。

・機械では取って代わることができない能力を持ち、それを存分に発揮できる人間は高い禄を食み、さもなくば不安定かつ薄給の職に甘んじなければならない。

・1兆円のパイをシェアするにも、1000億円の資産を持つ富豪が10人いたって、消費には限度がありますからね。誰がどう考えたって、年収500万円の中間層が20万人いた方がお金が回り、経済が活性化するに決まっているんです。

・待ち受けているのは勝者なき世界。どれほど優れた製品を開発しようとも、魅力あるプラットフォームを立ち上げようとも、誰も対価を支払わない、いや、支払えない社会となってしまうのです。

・「寝て暮らすのが夢だ」と言われますが、まさにその時がやってくるのです。スマホを握り締め、パソコンを見詰めながら「寝て暮らすしかない」時代が。





「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書)

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  • 作者: 楡 周平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/10/17
  • メディア: 単行本



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