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『ザ・世のなか力』 [☆☆]

・いま北海道の札幌では、老人下宿というのが増えているそうです。若者が減ったもんで、大学の学生寮や企業の独身寮が次々に廃止されているんです。その建物を使わないままにしているのはもったいないから、改装して、三食まかない付きの手頃な家賃で年寄りに貸し始めたら、これがけっこう人気だそうです。

・「お父さんは、うちは中の上くらいかな、っていってたよ」「中の上ってのは、貧乏って意味なのよ」

・世の中を悪くするのは無関心です。怒る方が無関心よりはるかにマシですよ。

・怒りの演技は、コミュニケーションの大切な方法です。

・日本人は苦情を言うときも、ついつい笑顔を浮かべてしまうものなのよ。でもその笑顔と裏腹に、ネチネチ陰口いったりしますよね。

・宗教は本来、人を救うために存在するものです。ああしろこうしろと、変な義務や脅しで人々を苦しめるのは、インチキ宗教ですよ。

・本来の仏教では、供養して極楽浄土に行った霊魂は、ふらふらと歩き回ったりしません。だから毎年お盆のたびにご先祖の霊がこの世の実家に帰ってくるという風習は仏教のものではなく、日本古来の民俗文化なのだ。

・日本人はなにごとも、開始時間にはうるさいけど、終了時間にはルーズですよ。会社が始まる時間に遅れると叱られるけど、就業時間がすぎても、だらだら仕事してるじゃないですか。

・兼好法師が『徒然草』の中で、ちかごろは見慣れない漢字を名前につける風潮があるが、そういうことをするのは頭の悪い連中だ、と苦言を呈しているのよね。

・目的のない練習ならやめろ。スポーツは科学であって根性ではない。

・寄席に出ている落語家のほとんどは無名です。無名だけど面白い芸人なんていないんです。放送できないような特殊な芸風でないかぎり、面白い人は絶対テレビがほっときません。だから知らない落語家ばかりが出てる寄席が面白いわけがない。

・結局ジョブズがやったことって、生涯、自分が欲しいもの、こんなのあったらいいなと思うものだけをわがままに作らせてきた。で、それがたまたまヒットした。それだけのこと。

・おエラいさんたちって、新しいものには何でも反対するのよ。コストがかかるだの、前例がないだのって理由で。

・前例がないものを作るからイノベーションなんですけどね。前例があったらパクリです。

・農業にせよ医療保険にせよ、もともと日本人の中で損する人と得する人が偏るような不公平な制度を続けてきた結果、崩壊の危機にさらされているわけです。制度崩壊の犯人は日本国内にいるのに、いまさらTPPのせいにするなんて、責任転嫁もはなはだしい。

・農地に向いている平らで広い土地は、住宅やショッピングモールの建設にももってこいなんです。そういうおいしい話が来たときにすぐ高値で売れるようにしときたいから、農地として貸すのを渋るんです。

・農家はみんな素朴な善人というイメージを悪用するカネの亡者どもに喝!

・ちゃんとしてない学者の方が、真偽の怪しい珍説・新説を平気で紹介してくれるから、テレビや出版社は面白がって使うんですよ。

・まともな脳科学者はまともなことしか言わないから、インパクトが弱く、テレビ向きじゃありません。

・右脳人間、左脳人間なんて区別。それから男脳と女脳は違うみたいな説。どちらも脳科学ではすでに否定されているそうです。

・宗教に無知な人ほど、道徳心を養うために日本の学校でも宗教教育をするべきだ、なんて軽々しい発言をするものです。

・アメリカの学校みたいに、2回注意されたら停学とか、きっちりシステムとして決まっている方が後腐れがありません。日本は処罰規定があいまいだから、結局、抑えきれなくなると現場の教師の体罰に頼って、教師が個人的に怨まれることになるわけで。

・認知症って言葉も、日本語としてはちょっと違和感あるわよね。どちらかというと、不認知症とか認知不全症っていうべきじゃないのかな。

・平均寿命の数字には統計上のトリックがありまして、乳児や幼児の死亡率が高いと、ぐっと短くなってしまうんです。青年まで生き延びれば、江戸時代でも60、70まで生きることが珍しくなかったんです。

・明治時代になっても、政府は老人福祉には力を入れなかったんです。儒教的精神や敬老精神を都合よく使って、老人の世話は個人に押しつけました。

・儒教道徳を説いた孔子は痴呆老人の真実を何も語ってない、って批判も的を射てます。孔子自身は親を早くなくして、介護なってものを経験してないんですから。介護はタテマエや精神論でできるもんじゃないですよ。

・ぶっちゃけた話、論理学を専門に学んだ人がそれを活かせる職業となると、大学で論理学の先生になるくらいしかありません。

・悲劇が悲劇たるゆえんは、平穏な日常に突然訪れるからなのよ。そこを理解していない人が戦争ドラマや映画を作ると、最初から最後まで真面目に悲惨さだけを強調してしまうわけ。だから、上っ面のお涙ちょうだいになって、偽善的に感じちゃうんじゃないかな。

・寛容であることは一種のボケだ、ものごとをよく考えずに決めつけてボヤけさせてしまう愚行だ、寛容であれ、なんて学校で教えたりするから、みんな頭がボケちまって、大事な区別がつかなくなるのだ!

・日本人の道徳は差別道徳だ、なんて考察は的を射てます。身内にはとても親身に礼を尽くすことを強要されるけど、無関係の赤の他人が道で倒れてたって、知らないフリで通り過ぎる差別的な道徳心が日本人にはある。





ザ・世のなか力: そのうち身になる読書案内

ザ・世のなか力: そのうち身になる読書案内

  • 作者: パオロ・マッツァリーノ
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2013/06/14
  • メディア: 単行本



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