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『戦争のリアル』 [☆☆]

・世界の過半は戦争をやっていると言っても過言じゃない。にもかかわらず、日本人だけ戦争から疎外されている。戦争をまともに語ること、論議の場そのものから疎外されている。

・日本では、戦争それ自体が特殊な世界である。特殊な趣味の世界であるって部分に追いやられている。公の席で軍事を語ると必ずオタク扱いされる。

・すべての戦争が個々の事象なんですよ。そこのところを「戦争は」ってひと括りにできると思ってる。たかが第二次大戦をやっただけ、しかも60年前の戦争ですよ。

・日本には戦術の天才はいっぱいいるんだけど、優れた軍学者とか、戦略家とかはあまりいないわけですよね。

・戦闘機で渡り合うのが好きなんですよ、日本人は。侍の一騎討ちレベルで「やあ、やあ、われこそは」っていうのをやりたい。

・ここまでの損耗は許容すべき被害だって、自分の国の若いやつらを数字で扱えるっていうレベルで考えることまでしても、戦争には勝たなきゃいけない。そういう意志がなしに戦争を始めること自体間違ってるよ、やっぱり。

・よく戦争はこんなにも……とか言うけど、第二次大戦で日本が勝っててもあなたはそう言うの? っていう話。たくさんありますよね。

・量産する世界ではイメージがふくらまないのかな。すげえもの一発造ったってことで、何か自己完結しちゃってるからね。

・ガンダムを何十個師団装備するとか。ヤマト十二隻で艦隊組むとかさ。そういう量産するというイメージで強者のイメージを描くことができないんだよ。

・殺されるくらいだったら加害者になったほうがマシだっていう話。加害者になれば少なくとも反省できる。生きてるから反省できる。でも被害者になっちゃったら、単純に言えば死ぬか、もしくは敗者の愉悦に浸って一切反省しないかのどっちかだから。

・戦車一輌と兵士一名とどちらが政治的ダメージが大きいかって言ったら、迷わず戦車だって答えるのは日本が貧乏だった証拠だから。

・爆撃精度が上がれば上がるほど、権力者というか為政者が戦争の指揮をとりたがる。大統領自身がライフル兵と化してしまったわけ。

・単に光学サイトをつけるだけで、戦術レベルで何かが変化するわけじゃない。それを習熟して、その小銃をいかに使うかっていうことが、明快じゃない限り、一種の過剰装備にすぎない。

・本来は大量に射耗すべきものの管理までこだわったあげくに、結局実包の訓練もめったにできなくなった。

・なぜ実包訓練しないかっていったら、予算がないっていうこともあるかもしれないけど、たぶん紛失が怖いんだよ。しかもそのことで自衛隊が叩かれることを一番恐れている。

・猟銃ってばかにならない。本当にあれの信頼性は抜群だもん。クマを撃つような銃は、弾が出なかったら即命取りなんだから。

・一撃必殺というか、的のど真ん中ぶち抜いたりして拍手大喝采。この人たちはやっぱり勝つ負けるじゃなくて、技術的なプライドを持ちたいんだって思った。兵士である前に技術者なんだ。

・「市民」というのはヨーロッパでは「武装」しているのが当たり前。それはギリシャ以来の伝統で、納税義務と武装する義務、これがあって初めて「市民」と呼ぶ。だからこれがない人間に選挙権がないのは当たり前だっていう話。だから女、子供はもちろん、かつては老人にもなかった。

・日本人って、中間試験の日露戦争でそこそこいい成績とって、なんかヤマ勘かけるのに妙に自信を持っちゃって、それで期末試験の第二次大戦で0点とったわけですよね。で、その途端に「じゃあ心を入れ替えて勉強しよう」じゃなくて、学校辞めちゃったようなもんだから。「戦争」っていうイヤな現実の勉強から背を向けちゃった。

・本来は制空権をとって、その間に揚陸してくるから脅威なんであって、揚陸する気がない戦闘機がいくら頭上をブンブン飛び回ろうが、使うだけの爆弾とミサイルを使ったらさよならするしか……それ以外にすることがないんだもん。

・F-104のあのコクピットの狭さって。本当に「戦闘機っていうのは乗るもんじゃなくて着るもんだ」っていう感覚ですよね。

・個人的なレベルで言ったらともかく、何かを組織的に開発するということができない国民性っていうのはあるのかも。

・新潟の地震のときに報道の人間が先に来てさ、コンビニのおにぎりを全部食っちゃったというのは有名な話じゃない? 「何しに来たんだテメェらは」って大ヒンシュクだった。

・モスクワも北京も同じなんだけど、ああいう元社会主義国って首都にあらゆる機能が集中してるから。政治家も常時そこに全員いる。勝手に首都を離れると、「クーデターを考えてる」と疑われて粛清されるから離れられない。

・「中国4000年」とか言うけどさ、じつは、同じ民族で同一王朝だったわけじゃないんだから。政権民族が次々交替してるだけなんだから。正確に言えば国が変わってるんだからさ。4000年続いてないんだ本当は。

・ゴミの収集以外にお世話になった記憶まったくないんだよね。

・「日本の独自技術=飛行艇」という言い方ってあれですよね。「イギリスの名物料理=ビーフ&キドニーパイ」という、他の国は誰も興味を持たないみたいな。

・大和なんてはっきり言って日本人のお城願望だもん。だから日本の戦艦は国名がついてますよね。

・技術が究極までいっちゃった場合に、技術自身が妄想の余地をどんどん減らしている。それはステルス技術がそうであり。ステルスということがある限り、軍艦も飛行機もある形に必ず収斂していっちゃう。

・迎撃戦闘機に凝りまくるっていう発想自体が負け戦の証明なんだ。

・一兵士の見た戦争がもちろんすべての戦争であるわけないし、爆撃されて逃げまわった人間の語る戦争が、その戦争のすべてであるわけもないし。





戦争のリアル Disputationes PAX JAPONICA

戦争のリアル Disputationes PAX JAPONICA

  • 作者: 押井 守
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2008/03/03
  • メディア: 単行本



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