『先生はえらい』 [☆☆]
・あなたが「人生の師と仰ぐいい先生」は、あなたにとってだけの「いい先生」なんです。
・「誰もが尊敬できる先生」なんて存在しません。昔からいませんでした。「絶滅危惧種」どころか、はじめから存在しなかったのです。
・恋に落ちたときのきっかけを、たいていの人は「他の誰も知らないこの人の素晴らしいところを私だけは知っている」という文型で語ります。みんなが知っている「よいところ」を私と同じように知っているというだけでは、恋は始まりません。
・実は、あなたが「自分の過去の出来事」を回想するたびに、あなたの過去についてはそのつど「改訂版」が書かれているのです。
・「話にオチがつけられない」というのは、そのエピソードがどういう意味をもっているのかを説明する言葉を、あなたがそれまで持っていなかったということなんです。
・一緒にいると「オチのない話」を次々に思い出してしまう相手のことを「親友」とか「恋人」とかと呼ぶのです。
・あなたがその「オチのない話」を思い出したのは、自分が何者であるのかが、この人に話しているうちに、わかりそうな気がしてきたからです。
・「人という字は人間が支え合うところを象形している。支え合うのが人間である」ということを言う人がいますけれど、これは残念ながら、嘘です。「人」は人間が横を向いているところの図形ですから。
・気分のよい対話では、話す方は「言うつもりのなかったこと」を話して、「本当に言いたいことを言った」という達成感を覚えます。聴く方は「聴くつもりのなかった話」を聴いて、「前から聴きたかったことを聴いた」という満足感を覚えます。
・むしろ、交換相手にとってできるだけ「何だかわからないもの」を選択的に交換の場に残してきたんじゃないかと私は思います。だって、交換相手がその価値をよく知っているものや、すでに所有しているものだと、「何だ、あれか……」ということで、それっきり沈黙交易が終わてしまう可能性がありますからね。
・みなさんがロレックスを買うのは「どうしてこんなに高いのかわかんない」ものを所有することによって、周りの人が「おお、めちゃ高いロレックスじゃん。すげえ」と言ってくれることを期待してのことです。「おお、お値段リーズナブルなロレックスじゃん。賢い買い物したね」と言われたって、うれしくも何ともないです。
・何年か前にユニクロのフリースが2000万着売れたことがありましたね。どうしてだと思いますか? どうしてこういう価格設定だか理解できなかったからですね。安すぎて。どう考えても、この値段で買えるはずのない商品が買える。
・興味深かったのは、日本人のインタビュアーが冒頭に「監督はこの映画で何を言いたかったのですか?」という質問を向けたことです。たぶん、この質問は現代日本国語教育の一つの成果を体現していると思います。
・私たちが敬意を抱くのは「謎の先生」です。その人がいったい何を知っているのか私たちには想像が及ばない先生、それが「謎の先生」です。
・別に「大人」になったからといって、いきなり賢くなるとか、世の中の仕組みが洞察できるようになるとかということはありません。とりあえずわかるのは自分のバカさ加減だけです。
・一度だったら偶然かもしれません。でも、同じようなシグナルが二度続くと、私たちはそこに「メッセージ」があるのでは……と考えずにいられなくなります。
・「謎」を解釈する立場というのは、「謎」をかけてくる人に対して、絶対的な遅れのうちに取り残されるということです。
・学ぶ者の定義とは、「自分は何ができないのか」、「自分は何を知らないのか」を適切に言うことができないもののことです。
・まわりの人々の発する音声が意味を伝える記号であることがわかったのは、意味不明の音声について、「これは何かを伝えようとしているのではないか?」という問いを子供が立てることができたからです。これがすべての学びの根源にある問いかけです。
・学ぶことの全工程はこの問いを発することができるかどうかにかかっています。そして、「そうすることで、あなたは何を伝えたいのか?」という起源の問いは問うもの自身が発する以外にありません。
・「誰もが尊敬できる先生」なんて存在しません。昔からいませんでした。「絶滅危惧種」どころか、はじめから存在しなかったのです。
・恋に落ちたときのきっかけを、たいていの人は「他の誰も知らないこの人の素晴らしいところを私だけは知っている」という文型で語ります。みんなが知っている「よいところ」を私と同じように知っているというだけでは、恋は始まりません。
・実は、あなたが「自分の過去の出来事」を回想するたびに、あなたの過去についてはそのつど「改訂版」が書かれているのです。
・「話にオチがつけられない」というのは、そのエピソードがどういう意味をもっているのかを説明する言葉を、あなたがそれまで持っていなかったということなんです。
・一緒にいると「オチのない話」を次々に思い出してしまう相手のことを「親友」とか「恋人」とかと呼ぶのです。
・あなたがその「オチのない話」を思い出したのは、自分が何者であるのかが、この人に話しているうちに、わかりそうな気がしてきたからです。
・「人という字は人間が支え合うところを象形している。支え合うのが人間である」ということを言う人がいますけれど、これは残念ながら、嘘です。「人」は人間が横を向いているところの図形ですから。
・気分のよい対話では、話す方は「言うつもりのなかったこと」を話して、「本当に言いたいことを言った」という達成感を覚えます。聴く方は「聴くつもりのなかった話」を聴いて、「前から聴きたかったことを聴いた」という満足感を覚えます。
・むしろ、交換相手にとってできるだけ「何だかわからないもの」を選択的に交換の場に残してきたんじゃないかと私は思います。だって、交換相手がその価値をよく知っているものや、すでに所有しているものだと、「何だ、あれか……」ということで、それっきり沈黙交易が終わてしまう可能性がありますからね。
・みなさんがロレックスを買うのは「どうしてこんなに高いのかわかんない」ものを所有することによって、周りの人が「おお、めちゃ高いロレックスじゃん。すげえ」と言ってくれることを期待してのことです。「おお、お値段リーズナブルなロレックスじゃん。賢い買い物したね」と言われたって、うれしくも何ともないです。
・何年か前にユニクロのフリースが2000万着売れたことがありましたね。どうしてだと思いますか? どうしてこういう価格設定だか理解できなかったからですね。安すぎて。どう考えても、この値段で買えるはずのない商品が買える。
・興味深かったのは、日本人のインタビュアーが冒頭に「監督はこの映画で何を言いたかったのですか?」という質問を向けたことです。たぶん、この質問は現代日本国語教育の一つの成果を体現していると思います。
・私たちが敬意を抱くのは「謎の先生」です。その人がいったい何を知っているのか私たちには想像が及ばない先生、それが「謎の先生」です。
・別に「大人」になったからといって、いきなり賢くなるとか、世の中の仕組みが洞察できるようになるとかということはありません。とりあえずわかるのは自分のバカさ加減だけです。
・一度だったら偶然かもしれません。でも、同じようなシグナルが二度続くと、私たちはそこに「メッセージ」があるのでは……と考えずにいられなくなります。
・「謎」を解釈する立場というのは、「謎」をかけてくる人に対して、絶対的な遅れのうちに取り残されるということです。
・学ぶ者の定義とは、「自分は何ができないのか」、「自分は何を知らないのか」を適切に言うことができないもののことです。
・まわりの人々の発する音声が意味を伝える記号であることがわかったのは、意味不明の音声について、「これは何かを伝えようとしているのではないか?」という問いを子供が立てることができたからです。これがすべての学びの根源にある問いかけです。
・学ぶことの全工程はこの問いを発することができるかどうかにかかっています。そして、「そうすることで、あなたは何を伝えたいのか?」という起源の問いは問うもの自身が発する以外にありません。
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