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『年収は「住むところ」で決まる』 [☆☆]

・いかなる物理的な部品よりもアイデアが重要な時代がやって来たのである。部品をつくることはさほど難しくないので、それだけでは大きな価値を生み出せない。

・ほとんどの先進国の経済では、雇用の三分の二を地域レベルのサービス業が占めている。教師や看護師、小売店やレストランの店員、美容師や弁護士、大工や心理セラピストなどの仕事だ。

・しかし、地域レベルのサービス業は、雇用の大多数を生み出してはいるが、繁栄の牽引役にはなりえない。他の産業に引っ張られて経済が反映してはじめて、サービス業が栄える。

・世界の電話通話、ウェブサイトへのアクセス、投資資金の流れの95%は、比較的近接した地域内で起きている。むしろ、今日のハイテク産業は、20年前に比べて一部の土地への集積がさらに加速している。

・しかし、21世紀は違う。よい仕事は、新しいアイデア、新しい製品、新しいテクノロジーを創造してこそ生み出せる。工場や機械のような物的資本ではなく、人的資本をどれだけ引きつけられるかをめぐって、競争がおこなわれるようになるだろう。

・途上国は人件費が安いので、アメリカに比べて工場で人力に頼る傾向が強く、機械の使用が比較的少ない。その結果、途上国の工場は、状況の突然の変化に柔軟に対応しやすいという強みを持っている。

・中国はコストが安いというイメージが強いが、本当の強みはスピードだ。アメリカの工場と異なり、中国の工場は、それこそ一夜にして生産計画やデザインの変更をおこなえるのだ。

・高級ファッションは、他の製造業ほど人件費が大きな問題とならず、デザイナーや熟練した仕立屋がどこにいるかが重要な意味をもつ。

・アメリカ人の消費する製品の大半がアジアで製造される時代に、映画のなかの夢の世界はいまもカリフォルニアでつくり出されている。ピクサーは、骨の髄までアメリカ的な職場に見える。この会社がシンセンに移転することは想像しづらい。

・金融イノベーションはおおむね経済成長に貢献してきた。一例を挙げれば、いま庶民でも手の届く金額で外国に旅行できるのは、航空関連の技術が進歩したことに加えて、金融イノベーションによって燃料費高騰の影響をやわらげることが可能になったためでもある。

・自動車工場ができれば、ウォルマートはその町に進出してくる。けれど、ウォルマートができたからと言って、自動車会社が進出してくるわけではない。

・トラクターやコンバインが農業労働者にとって代わり、ロボットが工場労働者にとって代わったのと同じように、強力なコンピュータと高性能のソフトウェアがデジタルアーティストの仕事を奪う日がいつかはやって来る。

・新興企業の新しいテクノロジーではなく、それを生み出した人材を目当てに、大企業が新興企業をまるごと買収するケースが出てきたのだ。

・空港近くに登場した巨大な看板は、いまも語り草になっている。そこには「シアトルを最後に出ていく人は、明かりを消していってください」と書かれていた。当時は明るい未来を思い描けず、町を去っていく人が後を絶たなかった。

・産業の幼児期には、さまざまな土地で多くの小規模な事業者が活動している。やがて成長期になり、イノベーション能力が最高潮に達すると、集積のメリットを活かすために、企業がいくつかの土地に寄り集まるようになる。成熟期に入って年老いてくると、企業が生産コストの安い土地に出ていき、再び地理的に拡散しはじめる。

・上位都市の高卒者は下位都市の大卒者よりも年収が高い。

・人々が社会・経済階層ごとに別々の町に住むようになるにつれて、自分と似たような人だけに囲まれて育つ人が増えている。そういう人は自分と異なる考え方に触れる機会が乏しく、極端な考え方をいだきやすい。

・多くの企業本社があり、地域経済が繁栄している都市では、地元の非営利団体に多くの寄付が集まるのに対し、企業の本社が少なく、経済が不振に陥っている年には寄付が集まりにくい(そういう都市こそ、慈善事業が必要なのだが)。その結果として、「勝者」と「敗者」のギャップはますます広がりつつある。

・学歴の低い層ほど地元にとどまる。

・「あなたは出身の町や村に強い結びつきを感じていますか?」という問いに、「まったく感じていない」「あまり感じていない」と答えた人の割合は、国民の平均的な教育レベルが高いフィンランド、デンマーク、オランダで高く、平均的な教育レベルが低いスペインやポルトガルで低かった。

・ある地域がハイテク産業を育てられるかどうかは、(とくに初期は)数人の傑出した科学者、具体的には、ビジョンをもっていて、画期的なテクノロジーを使いこなせる人物の存在にかかっている。



年収は「住むところ」で決まる  雇用とイノベーションの都市経済学

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