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『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』 [☆☆]

・一人当たりのGDPは中国は世界80位にすぎないので、客観的に見れば、まだ先進国ではありません。経済大国ではありますが、先進国ではないのです。

・1億人の人口を超えている12カ国の中で、先進国になっているのは2か国のみです。それは、アメリカと日本だけです。

・単に人口が多いインド、インドネシア、ブラジル、パキスタン、ロシアがGDPランキングの上位にランクしてこないのは、先進国の一人当たりのGDPほど、国民一人ひとりの生産性が高くないからです。

・社長として決算するときには、印鑑をたくさん押さないといけないのですが、このITが普及した時代においても、ネットもパソコンも存在しない何十年前と変わらない仕事のやり方をいまだに継続しているのは、正直、驚きです。

・強みと弱みが表裏一体ということで言えば、職人魂が弱みに働く場合があります。技術にあまりにも強いこだわりがあるためか、営業サイドからの声を聞かないので、品質は良いが消費者が好むようなデザインのものになっていない商品も少なくありません。

・日本人の考える「おもてなし」を気に入ってくれた外国人だけを歓迎しますよ、というような姿勢になってしまっているのです。

・そもそも、年功序列の制度は日本人の平均寿命が今よりも短い時代にはじまりました。昔は高齢となって生産性が落ちはじめる前に、職人が「退職」していました。退職するまで生産性が右肩上がりをしていけましたので、給料も右肩上がりで良かったのでしょう。

・なぜこのような非効率がまかり通るのか? こういう状況を招く日本の組織や働き方のエラーとは、プロセスを重視しすぎる、ということだと思います。

・一人当たりGDPの低さという「数字」が示している以上、日本社会における仕事の進め方の効率が良くないというのは紛れもない事実です。

・アメリカとイギリスでは、労働者は日本のように優れていないので、それでも国が成り立つようにするために、かえって経営者が鍛えられて、強くなるのだと思います。逆に、日本は労働者の質が良くて、おまけに今まで高度成長の環境にも恵まれてきたので、経営者が鍛えられず、海外の一部に比べて、弱いように見えてしまうと思います。

・日本の「効率が良くない」というものの問題を辿っていくと、かなりの部分はこの「面倒くさい」という言葉に帰結する感じがします。

・リスクをとろうがとるまいが、とにかく利益を出すことが「面倒」を避けることになるので、日本企業から外資系企業に入ってきた日本人からすると、「面倒」ということに対する価値観に変化はあったものの、「面倒を避ける」という基本は変わりません。だから、非常にスムーズに適応するのです。

・企業にとって女性の労働力が必要なことは明らかです。女性が嫌いだという男性も少ないはずです。ただ、女性が会社の中にたくさん入ってくると、これまでの価値観を大きく変えないといけません。それが「面倒くさい」のです。

・服はユニクロだけどバッグはルイ・ヴィトンという一点豪華主義なのです。ブランドをこういう発想で楽しむことができる自由さというのはもちろん経済にも関係あります。ルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドはこの自由さの恩恵を授かっています。

・賢く工夫して、しっかりとした経営をしていかないといけません。そこでインテレクチュアル(intellectual)の出番です。これは企業の経営者、評論家、マスコミの一部など、昔で言う「支配階級」を指すものです。

・woolly thinkingとは、直訳すると、「羊毛みたいにふわっとした思考」、意訳すれば、散漫な思考となります。

・ネットによって、暗記をするというスキルはもはやほとんど価値がなくなりました。だからこそ、データを分析する能力、そしてロジックがより重要になっているのです。

・日本人がエンジニアリングと理数系に強いというのは、数学、化学、物理学となるとロジックそのものの世界でwoolly thinkingが排除されやすいからではないでしょうか。woolly thinkingが排除された人々が能力をいかんなく発揮しているのです。

・新しいものをどんどん取り入れて「足し算」をすることに優れた民族ならば、異国から入ってくる新技術や文化を素直に足していきます。一方で、古いものも駆逐されず残っていますので、古いものの上に新しいものがどんどん「蓄積」されていく。

・日本が得意なのは「新しいものを取り入れて自分たちのものにする」など世界で一般的におこなわれていることではなく、「新しいものを取り入れつつも古いものを残していく」ということなのです。

・窓、部屋の作り、大きさなど、細部にわたる、およそ理由が分からない規制はたくさんできているのに、歴史のある建物を指定して守るための規制はできない、と言われるのです。

・福祉は充実させて欲しいけれど、税金は払いたがらないというのも日本の特徴のひとつだと思います。

・通常は高い税金を払って福祉を受けるはずですが、あまり税金を払わずに高い福祉サービスを受けることができるので、個人は貯金ができて、国に借金が増えて、個人がその国債を買うことができるのです。これはただ単に両建てをしているということですから、架空の貯金に対する架空の国債であるため金利がつきません。

・解決策を探して、工夫することなく、ただ単に禁止をする、禁止の看板が至るところにあることが特徴です。

・なぜ日本人はこのような強みと弱みに過剰ともいえる興味があるのか、また、それを知って、どうしたいのか。何かをするのではないなら、そんな比較作業に何の価値があるでしょうか。

・国民の幸せを追求しようというのなら、ヨーロッパの人口小国をモデルにするのもひとつの解決策でしょう。これらの国はGDP絶対額を諦めて国民一人当たりのGDPを重視して、「ハピネス」を目標にしています。



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