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『「昔はよかった」病』 [☆☆]

・古き良き、というのは、趣味の範囲でのみ成立するファンタジーです。たまの不便なら楽しいけれど、毎日のこととなると、古いものは不快なだけ。

・今の日本人は昔よりダメになったと主張する方々は、「自分以外の日本人が劣化した」と考えているのです。

・詐欺にひっかかって、たやすく大金をダマし取られてしまうようなバ──失礼、純朴なかたが、そもそも、いったいどうやって数千万円もの財産を築けたの?

・今は朝から晩まで、ニュースやワイドショーで同じ事件を繰り返し何十回と伝えます。住んだことも行ったこともない町で起きた事件を、日本中の人が知ることとなるので、凶悪事件が昔よりものすごく増えて身近になった気分になるんです。

・タダで民放テレビを見てるくせに、CMばっかし多すぎると文句をつけている人はいますからね。

・やっぱりお金持ちはうらやましい。だから毎年暮れになると、ラクして大金を手にしようと欲の皮つっぱらせた連中が年末ジャンボ買うために、西銀座チャンスセンターに長蛇の列を作るんです。

・ちかごろ、若者の宝くじ離れが深刻だとかいう報道がありましたけど、むしろそれは数学的リテラシーが向上したという教育の成果であって、喜ばしいことなのでは?

・大正期から太平洋戦争前までの時期、朝日・読売両紙とも、朝刊第一面には記事はなく、すべて広告で埋められていたことはご存知ですか。案外、知られていませんよね。

・昔はよかったですね。議員にたっぷり献金さえすれば、どんなズルもわがままもまかり通ったのですから。昭和はカネで何でも解決できる夢のような時代だったんです。

・携帯使用をとがめられ、「緊急なんだよ!」などと逆ギレする年寄りに、何度遭遇したことか。緊急の用がある人間が昼間から図書館でブラブラいているはずがないのに、見えすいたウソをつくもんですね。マナーの悪い年寄りはアタマも悪いのです。

・その昔、新聞記者のあいだには、「首なし美人死体」というジョークがあったそうです。首なし死体が発見されても、美人かどうかわかるわけがありませんね。きちんと取材もせずに、先入観だけで書かれたガセネタ記事を揶揄した言葉です。

・安心は心の状態にすぎません。感じかたには個人差があります。アタマの悪い人ほど、現実の危険から目を背け、儀式やげん担ぎを懸命にやって、危険を遠ざけたと「安心」しがちです。

・安心は、安全であることを保障しないのです。安全の実現のためには、安心することは許されません。

・一滴の不安さえ見過ごせなくなってしまう。一件の事件すら許せない。町に一人の不審者も存在してはならない。日本人は危機管理の本質を取り違え、ケガレの浄化をなにより重要視するようになってしまいました。

・「安心」は、危険や異物を徹底的に取り除くまで訪れません。だから安心への道は、排除の論理や疑心暗鬼、人間不信へとつながってます。

・危険や異物がゼロにはならないことを前提に、可能な限り平和的に共存する道を統計的・科学的に探るのが「安全」への道です。

・多少元気がなく立って、重度の病気がなければ御の字でしょ。なのに、年寄りのくせにいつまでも元気でいようなんてずうずうしい了見でいるから、健康食品産業のカモにされるんですよ。

・日本は子供と老人と犬に甘すぎる社会です。子供と老人と犬は善なるもの、無垢な存在と決めつけていて、悪いことをしてもしつけをしない人がじつに多い。

・生活が苦しくなったからといって、それまで犯罪と無縁だった老人がいきなり万引きデビューをしたとは考えにくい。万引き老人は若いことからずっとやってるんです。

・なかでも秀逸なのは、エラそうに孝行を説く孔子は、早くに親を亡くしてるんだから老人介護の実態を知らないじゃないか、という指摘。儒教道徳の急所を見事に突いてます。

・関西で俳人としての名声を得た芭蕉が活動拠点を江戸に移したのは、関西方面で有名人になってしまったことに息苦しさを感じるようになり、自分のことを知らない人ばかりの江戸で暮らすことを望んだからではなかろうか。

・商店街のいいぶんはいつも一緒。「死活問題だっ!」 商店街だけ競争を免除される特権があるのですか。ゆとり世代ですか。安月給で働いている労働者は、一円でも安く食料品を買いたいんです。商店街よりスーパーが安ければ、当然そっちで買いますよ。死活問題ですから。

・ちなみに日本初の○○銀座だと主張するのが、東京の戸越銀座商店街。関東大震災後、銀座のレンガをもらい受けたのをきっかけに戸越銀座を名乗りはじめたそうです。

・戦後、スーパーが登場したときも、客が自分で商品をカゴに入れて勘定はレジでまとめて払うなんて方式は日本には馴染まないさ、スーパーなんてのは、スーッとできてパーッと消える、などとバカにしてたら、パーッと消えたのは自分たちのほうでした。



「昔はよかった」病 (新潮新書)

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  • 作者: パオロ・マッツァリーノ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/07/17
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