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『日本戦後史論』 [☆☆]

・神道の伝統から言うなら、滅ぼされた側の人間が「祟り神」にならないよう祀るのが当然です。

・シンガポールは国是が「経済成長」ですから。統治システムも、教育も、メディアも、すべての社会制度が「経済成長に資するか否か」を基準に適否の判断がなされる。民主主義は経済成長にプラスにならないと判断されたので、建国以来一党独裁が続いています。

・臣下たちが天皇の意思を推し量って実際の政治を行なう。これが輔弼とか翼賛とか呼ばれた行為です。

・日本人で「ホワイトハウスの考えは」ということを言っている人たちは自分の欲望を投影しているだけなんです。自分の意見なんか誰も聞いてくれないけれども、アメリカの国家意思であるという「虎の威」を借りてくると、人々が傾聴してくれる。

・アメリカだって複雑な外交戦略を展開しているわけですけれど、その複雑な変数を処理できるだけの演算能力がもう当のアメリカにもない。

・「忖度する小物」たちが今では日本の政治機構を機能不全にしている。下僚たちが、勝手に「上はこういうことをしてほしがっているのではないか」と想像力をたくましくして、自分勝手な行動を始めている。自分の考えではないから、それに対して責任をとる気なんかない。「上の人」はそんな指示を出した覚えがないわけですから、もとより責任を取ることなんかしない。つまり、「忖度システム」が作動し始めると、機構の中のどこにも責任者がいなくなるのです。

・改憲して戦争じゃなくて、まず戦争してそれから改憲へというのが、彼らの作ろうとしているルートです。自衛隊が戦争に出ていって、死人まで出ているという状態になったら、もう事実として憲法九条は完全に守られていないという状態になる。となると、改憲のハードルは著しく低くなる。既成事実を認めるだけのことになりますから。

・経済戦争を一種の「模擬戦」として戦ってきた世代と、金儲けのために金儲けをしている世代では、経済活動の意味がまったく違う。だから、世代交代以後、日本経済が長期低落期に入る。

・フロントラインにいる人たちというのはプラグマティストですから。政治的に正しい意見を聞きたいわけじゃない。本当の話を聞きたいわけです。

・戦後日本=平和国家だという建前から逸脱しなかったのは、あの敗戦・焦土化を経て、「戦争に強いということをナショナル・アイデンティティにするのはもうやめよう」というコンセンサスが非常に幅広くできたからだと思うのです。

・今の日本のかたちは私が望んだことでもないし、みなさんが望んだものでもない。誰が望んだものでもない。こういうふうに「誰が望んだものでもないもの」が最終的に帰結するのが民主制なんです。

・カウンターカルチャーって、その国と政治的に敵対している国からすると唯一の「取つく島」なわけですよ。だから、外交的に言うと、どんな国にも反権力的な言説とか反体制的な芸術があった方がいいんです。



日本戦後史論

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  • 作者: 内田樹
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2015/02/28
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