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『21世紀の資本』 [☆☆]

・アフリカやアジアでは、物価は富裕国のだいたい半分くらいだから、比較にあたって市場為替レートを使わず購買力平価を使うと、GDPはおよそ倍増する。これは主に、貿易できない財やサービスの価格は低いからだ。

・経済成長には常に、純粋に人口的な部分と、純粋に経済的な部分があり、生活水準の改善に寄与するのは後者だけなのだ。

・30年の単位で見ると、年率1パーセントの成長率は累積成長率として35パーセント以上になる。これはライフスタイルと雇用にとっては大規模な変化を意味する。

・1人当たりの産出が30年で35-50パーセントも増えるということは、今日生産されているもののかなりの部分──4分の1から3分の1──は30年前には存在せず、したがって職業や仕事の4分の1から3分の1は当時は存在しなかったということだ。

・突き詰めれば国債とは、国民のある一部(利息を受け取る人たち)が、別の一部(納税者)に対して持つ請求権にすぎない。

・それでもその仕事がものになるというんなら、あえて反対はしないがな。しかしあんた、50歳で5万フラン稼いでいるパリの弁護士の名を5人挙げられるかな?

・勤勉より遺産のほうがずっと価値があるとするヴォートランの主張は腑に落ちたが、殺人を起こすほどの覚悟はなかったのだ。

・資本所有者は働く必要がない社会(たとえば、ジェイン・オースティンの作品の主人公たちは通常なんの職にも就こうとしない)。

・多くの国では、実は稼ぎの最下層50パーセントには女性が極端に多いため、国ごとの所得格差の大きな違いには、男女の賃金格差がいくぶん反映されている。

・20世紀に格差を大幅に縮小させたのは、戦争の混沌とそれに伴う経済的、政治的ショックだった。

・20世紀に過去を帳消しにし、白紙状態からの社会再始動を可能にしたのは、調和のとれた民主的合理性や経済的合理性ではなく、戦争だった。

・ポール・グルーマンがノスタルジックに「みんなの愛するアメリカ」と呼んでいるもの──彼の子供時代のアメリカだ。

・1960年代の米国はフランスよりもずっと平等な社会だった。少なくとも肌が白い米国国民にとっては。

・どんな時代のどんな社会でも、人口の貧しい下半分は、実質的に何も所有していない(だいたい国富の5パーセント程度)。これに対し、富の階層のトップ十分位は所有可能なものの大半を所有している(だいたい国富の60パーセント以上で、90パーセントに達することもある)。人口の残りの人々(いまの仕分けでいうと中間の40パーセント)が国富の5-35パーセントを所有する。

・1940年に60歳で、爆撃、接収、あるいは破産によって持てる全てを失った人が立ち直れる望みはほとんどなかった。おそらくその人は1950年から1960年の間に70歳から80歳くらいで遺産もないまま死んだだろう。これとは対照的に、1940年に30歳ですべてを失った人には、戦後に富を蓄積する時間が十分にあり、1950年代に40代になった頃には70代の人々よりも裕福になっていただろう。

・戦争は全てのカウンターをゼロ、あるいはゼロ近くにリセットし、必然的に富の若返りをもたらした。この意味で、20世紀に全てを水に流し、資本主義を超克したという幻想を生み出したのは、まさに二度の世界大戦だった。

・インフレが存在すると、紙幣の山に腰を下ろして満足している人は、その山が課税されなくても溶けて消え、跡形もなくなるのを目の当たりにすることになる。

・インフレは事実上、有閑階級に対する税、もっと正確には、投資されていない財産に対する税といえる。

・公的年金というのは相続財産を持たない人のための相続財産なのだ。

・累進課税というのは、両大戦の産物であるという点を理解することが重要だ。その場しのぎが必要な混沌とした環境で採用されたものであり、それもあってその各種の狙いは十分に考え抜かれていないし、そのせいで今日批判を受けるようになっているのだ。

・私有財産と市場経済は、自分の労働力しか売るモノがない人々に対する資本の支配を確実にするだけが役割ではなかったということだ。それは何百万人もの個人の行動を調整するのに便利な役割を果たすし、それがないとなかなかやっていけないのだ。ソ連式の中央集権型計画が引き起こした人的災害は、この点をかなり明確に示している。

・固定資産税の主要な狙いは、登記を義務づけ財産権を保証することだ。富の再分配を狙ったものでは決してない。

・国債は実質資産ではなく、名目資産なので、インフレ率が少しでも上がると、公的債務の実質価値は大幅に減る。インフレ率が年2パーセントから5パーセントになったら、公的債務の実質価値は、対GDP比で見ると15パーセント以上も下がる──これは相当な額だ。

・インフレは主に自分のお金をどうしていいかわからない人々に損失を与える。そういう人とはつまり、預金口座に大金を寝かせてある人や、タンス預金をしている人々だ。

・インフレはある意味で遊休資本に対する課税であり、動的な資本を奨励するものとなる。

・民間投資家たちは金融当局がゼロ金利近くで貸してくれるお金をどう使ったらいいか、はっきりとはわかっていないことも示している。だから彼らはそのお金を、最もしっかりしていると思われる政府に対し、とんでもなく低い金利で貸し直すことになる。



21世紀の資本

21世紀の資本

  • 作者: トマ・ピケティ
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2014/12/09
  • メディア: 単行本



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