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『エコノミストの昼ごはん』 [☆☆]

・安価な即席食品こそが、現代文明の礎であり、私たちの大半が死なずに済んでいる理由なのである。

・アメリカの食文化がかくも惨憺たる状況に陥ってしまったのは、ドリトス社が商業的な成功をおさめたからではない。真の戦犯と呼ぶべきは、政治家や立法者たちである。アルコールをめぐる政治闘争のせいで、20世紀初頭の数十年間に、最高のレストランが大量に閉店へと追い込まれた。

・今日、アメリカの貧困層の間では、、飢餓よりも肥満が問題となっている。

・外国人にとって馴染みがあるんは、アメリカ製の缶詰やインスタント食品、冷凍食品といった、長距離輸送に適した商品ばかりである。他方、アメリカ人がヨーロッパ製のインスタント食品を目にする機会は少ない(ただ単にヨーロッパ人には食品の長距離輸送のノウハウがないからなのだが)。

・禁酒法によって、良いレストランの大半が破滅に追い込まれた。酒から得られる利益が失われたのに加えて、店ではワイン入りのソースが使えなくなった。

・アメリカの文化は子供を中心に出来ており、大人たちはおチビちゃんたちを喜ばせるべき奔走する一方で、年長者に対してはあまり敬意を払わない。

・アメリカでは食に関しても子供の好みが優先される。これが子供に限らず全ての人にとっての食のクオリティを損ねることになる。

・陳列棚にはざっと分類された商品が所狭しと並んでいる。だが、こうした便利さのせいで、アメリカのスーパーマーケットは退屈なものになっている。致命的な代わり映えのなさが、私たちの毎日の買い物を支配している。

・ラスベガスのカジノの中には、おいしいレストランでギャンブル客を引きつけているところもある。

・最近、ベガスのカジノでは、本格的な中華料理が食べられるようになってきた。これは、中国人のギャンブル客を呼び寄せるためである。

・レストランは食事を販売するだけでなく、テーブルという空間を提供してもいる。ただし、はっきりと分かる形で席料を取るわけではない。

・賃料が支払えなければ、レストランはこの世から消え去るしかない。

・世界の人口の大半はアジアに集中しており、世界の食べ物の大半はアジア料理である。

・大半の日本人は都市部に住んでおり、都市生活しか知らない。ほとんどのアジア人が辺鄙な郊外に集まるのに対して、日本人は特にアメリカの大としかその付近に集まりやすい。

・実際には交通事故による死者の方が多いにもかかわらず、飛行機事故で死ぬことのほうが不安だという人が多いのと同じである。ヨーロッパの多くの地域で、遺伝子組み換え作物ア象徴的な不安の種となり、これが貧しい国々における農業の発展にブレーキをかけてきたのである。

・遺伝子組み換え作物について知ったアーミッシュの農家の多くが、熱狂的にこれを取り入れ、商業的にも成功を収めた。遺伝子組み換え作物の中には農薬の使用量を減らすことのできるものがあり、彼らはそれを評価したのである。

・近年ヒットした食についてのドキュメンタリー映画には、共通の特徴がある。それは、他の人たちが市場において行なう選択に対する、意地悪でどこか独善的なアプローチである。

・一連の実験では、「環境にやさしい店」で製品を購入する許可を与えられた人々は、実験の次の段階で行なわれるゲームにおいて、不正をしたり嘘をついたりする確率が上がった。つまり、一旦良心が満たされてしまうと、他の場面ではより強欲かつ利己的になるのである。

・不買運動という姿勢は道徳的な面で人気が高いのだが、実際には効果がないことも多い。不買運動の大半は、単に自分がよいことをやっているような気分になるための手段に過ぎないと思う。

・母親や祖母が一日中トルティーヤばかり作っていたとしても、外部からの収入を諦めることにはならない。仮に同じ時間働いたとしても、同じ量の食料を買えるほどの稼ぎにはならないからだ。

・今日世界で一番美味しいフランス料理が食べられるのは、ひょっとしたら日本なのかもしれない。

・インドへのアウトソーシングは今やグローバルな流行となっているが、大規模な生産施設が自らインフラを構築しなければならないことは、まだあまり知られていない。インドの大都市では、自前の発電機と給水設備を備えた自己充足型のビジネス「島」を見かける。

・ベルリンが自慢できるのは、目を見張るほど安い賃料である。ベルリンは本来、商業の一大中心地となるべく築かれた都市であり、その結果、建物の数が多すぎる。賃料は非常に安く、今日でさえ、月300ドルの家賃でそれなりのアパートを見つけるのは難しくない。

・大人数をもてなす際は、全体の核になるような料理は外で用意しておき、それを補うような形で、あなたの好きな料理や家で準備したものを添えるとよい。

・いきなり高級な調理器具を買い揃えることは、初めてのデートのたびにダイヤモンドの指輪をプレゼントするようなものだ。

・キッチン用品の「勝者」ベスト5を選び、そこにもっとお金をかけよう。新しい調理器具というのは、買ったところでほとんど使わず、無駄遣いをしてしまったという罪の意識に苛まれ続けることが多い。だとしたら、確実に使うことが分かっているものにお金をかけたほうが良い。

・ファストフード・チェーンはコカ・コーラのシロップを1ガロンあたり約4.25ドルで購入する。1.29ドルで販売されているMサイズのコーラには、およそ9セント分のシロップが含まれている。いつものようにカウンターの中にいるかわいい女の子から勧められるままに、1.49ドルのLサイズのコーラを買うと、3セント分のシロップが追加される――そして、マクドナルドの純利益は17セント分アップする。

・コーエンは自他ともに認めるコントラリアンである。これは、ある主張に対して、「その一方では(on the contrary)」と異論を投げかける人のことだ。

・中国やアジアでは餃子は煮るか蒸すのが主流であって焼く餃子はほとんどない。しかし餃子もどきが中国東北部で存在していて、それを満州から日本に戻ってきた人たちが「餃子」として売り出した。つまり帰国者というイノベーターが、日本の味覚に合うように工夫を重ねて日本的エスニックな餃子を発明したのである。

・日本の焼き餃子は、ラー油で食べるとか、ニンニクを加えるとか、香ばしい油で焼くとか、すべてが米飯に合うように改良されている。



エコノミストの昼ごはん――コーエン教授のグルメ経済学

エコノミストの昼ごはん――コーエン教授のグルメ経済学

  • 作者: タイラー・コーエン
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2015/12/25
  • メディア: 単行本



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