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『戦争の社会学 はじめての軍事・戦争入門』 [☆☆]

・暴力の行使(戦闘)はあくまでも、手段に過ぎない。その、ドンパチと華やかな現象に惑わされてはいけない。戦争の本質は、「意志を相手に押しつけること」にある。戦争の後に結ばれる講和は、「意志を相手に押しつける」ための手続きだ。

・旧約聖書は、もともとユダヤ教の聖典で、『タナハ』といった。ユダヤ民族の歴史や、預言者の言葉を記した書物を集めている。

・殺し、破壊し、焼き尽くすのは、神に対する献げもの(ホロコースト=全焼の供犠、新共同訳では「焼き尽くす献げ物」)という意味である。敵の住民を捕虜にして奴隷としたり妻としたり、家畜や財産を奪い取ったりしたのでは、自分のために戦ったことになり、百パーセント神のために戦ったのではなかったことになる。

・大陸では教会が、教会法で裁判を行なった。裁判が機能するなら、その分、解決できない紛争も減る。戦争も減ることになる。

・戦場では、禁止されていないことは、できる。戦争法規は、禁止規定である。

・戦争は、講和条約を結ぶことによって、終結する。この機会に、敗者は勝者に譲り、勝者の意志を押しつけられることになる。

・戦争においては、常に講和を目標とすべきである。またたとえ損害を受けるとも、講和を受諾すべきである。…これは戦敗者にとって有利である。これは、戦勝者にとっても有利である。

・戦争の目的は、講和条約に調印させることである。武力の行使は、そのための手段にすぎない。

・ガレー船は、接近戦のための武装しかしておらず、白兵戦を戦う。漕ぎ手がすぐ疲れてしまうので、互いに突進する以外にない。

・帆船は、運動のために、乗組員の労力をあまり使わなくてよい。離れて戦う武器も持っている。これらの点は、蒸気船に似ている。そこで、帆船時代の戦闘から、今日に通じる教訓を引き出すことができるのである。

・先例は、原則(プリンシプル)とは別であり、また原則ほど有益ではない。

・毒は、武芸を磨き戦闘能力の高い戦士を、容易に殺害することができる。弱い立場の人間が、強い立場の人間を殺害できる。毒は本質的に、弱者の武器なのである。

・「軍人勅語」や「戦陣訓」の問題点は、それが、日本でしか通用しない、ローカルルールでできていることである。

・近代的な軍隊は、国際的な取り決めに従って、戦争を行なう。外国と戦うのだから、外国とルールが共通でなければならない。

・ハーグ陸戦法規やジュネーブ条約は、戦闘員や、民間人にも、戦時国際法についてきちんと教育を行なうように義務づけている。

・ハーグ陸戦法規は、戦時国際法を、軍人だけでなく一般市民にも、しっかり教育しておくことが、前提となっている。戦前も、戦後も、わが国の学校教育はこれを怠ってきた。戦時国際法に違反している。

・冷戦が終わってからは、国際秩序のタガが外れて、武器が出回り、武装勢力が多くなった。こうした武装勢力のうち、アメリカ軍に歯向かうグループが、テロリストと呼ばれる。

・犠牲者をなくしたい。しかし、戦闘はやりたい。それなら、戦闘そのものを無人化すればよい。戦闘ロボットである。

・歩兵は何をやるか。敵と味方を識別する。敵を攻撃する。味方と協力する。民間人を保護する。あたりに敵がおらず、味方ばかりなのを確認して、その地域の制圧を完了する。

・戦争が終わるのか、それとも人類が終わるのか。



戦争の社会学 はじめての軍事・戦争入門 (光文社新書)

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