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『不屈に生きるための名作文学講義』 [☆☆]

・あけっぴろげで楽しくて、誰もが近づける本=友だちはたしかに素敵だ。けれど、ちょっと近寄りがたい書物が、実はすごく面白くて、生きていく上でかけがえのない知恵を授けてくれたり、支えになったりする。

・人は食物に飢えるのと同じに、書物にも飢えることもある。

・生徒の自主性に任せるとか詰め込み教育の否定とか、要するに例の「ゆとり教育」と呼ばれたここ30年ほどの教育行政の試みにも、ルソーの『エミール』の遠いこだまがあるのはあきらかだ。

・フランス革命のスローガンは、「自由・平等・友愛」だった。これは、3つの言葉が並列されていると考えるのが普通だろう。でも、僕はあえて、「自由が行きすぎると平等が損なわれる。その時に力を発揮するものこそ、友愛、すなわち助け合う思いやりなのだ」、と読みたい。

・未来永劫人はついつい差別してしまう生き物であり続けるだろう。差別はいけません、とか、差別用語は絶対使わないように、なんて規制しても、人のそうした傾向を根絶することはできない。

・すごく乱暴に万葉仮名を説明するなら、「夜露死苦(よろしく)」という暴走族のあの挨拶表記と似通ったものということになる。

・面白いのは、「人民」と「共和国」も日本産漢語なので、中国の正式名称である「中華人民共和国」の7割くらいが日本製なのだ。あ、「共産主義」も日本製。

・男を「肥料」にして、女としての輝きを増していく。

・自分の変態性に照れることも恥じることなく、むしろそれを濃厚濃密に表現し尽すことで、まるでそれが人間の普遍的で美的な欲望であるかのように描き出してしまう。

・不平不満を他者にぶつけることによって相手を迫害する者も、罰される。

・人生について深く思い悩むことがあり、その解決を求めてさまよっているうちに、自分の苦しみを救ってくれる宗教に出会う。その光り輝く「解答」に狂喜して、熱心な信仰者になる、という筋道。

・経済のグローバル化が進む中で、「国富」とか「国民経済」という観念が揺らいでいる。そうなれば、「国民」や「国家」という観念もまた、揺らいでいかざるを得ないだろう。

・近頃さまざまな問題が生じている領土問題で、「愛国心」がかまびすしく取り上げられるのも、むしろそれが根拠としている「われらみんなの国」=「国民国家」が、だんだん輪郭を失っているからだという気がしてならないのである。守るべきものの形が見えなくなってくると、人は不安になって声高になるものだ。

・自分自身の本能的な欲望を制御できず、それにあやつられるままになっている「弱者」。

・「弱者」同士の毟(むし)りあいは、本能的欲望を制御できる真の自由意志を持たないことにあるのだ。



不屈に生きるための名作文学講義 (ベスト新書)

不屈に生きるための名作文学講義 (ベスト新書)

  • 作者: 大岡 玲
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2016/03/09
  • メディア: 新書



タグ:大岡玲
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