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『愚物語』 [☆☆]

・あいつを嫌いでなければ、私は私でありえない。どんな酷いものを見ても、どんな惨劇や災害に直面しても、それでも「あの男に較べれば」と思うことで、私は逆境を凌いできたのだから。

・メレンゲを最初に作った人ってすごいですよね。生卵を割って、それを黄身と白身にわけようって考えただけでも一頭地を抜きんでた発想なのに、見るからに栄養豊富な黄味のほうならまだしも、その白身のほうだけをかき混ぜようだなんて。予想できるわけないじゃないですか、白身だけをかき混ぜたら、あんなホイップクリームみたいになるなんて。

・自ら行動することで、苦境を切り開きたいと思うのは、特別な人間がやるのならば勇気のある偉業なのだろうが、私のような無能にとっては、ただの危険な悪癖である。それは、困ったときに助けを求められない体質という意味でもあるのだから。

・成功ではなくとも、成果さえ得られれば、諦めはつく。

・潔癖な人間ほど、意外と部屋は散らかりやすいとも聞くが──自分の手を汚したくないから、掃除ができないとか。

・人間を値踏みしたり、ヒエラルキーで見たり、挙げ句の果てには、逃げられたから追いかけたなんて、本当、犬そのものじゃないか。

・孤立の大きな要因は、他人に対する無知か、無関心だ。逆に言えば、他人を知り、他人に関心を持っていれば、なかなか孤立はできない──したくともできないものだ。

・得することに、「得するから」という理由で抵抗してしまったりする──損得や利害で動く、わかりやすい奴だと思われたくない。

・制度がどれだけよく考えられ、よくできていても、所詮は人間のやることだから、ヒューマンエラーは避けられない──そして、人間のだらしなさは、もっと避けられない。

・誰にどんな風に思われようが、もう構うものか――どうせ私は最低なんだから、どう誤解されたところで、それは実物よりはマシな虚像だ。

・たった一人の人間に権力が集中するよりは、二人とか三人とかに分散されたほうが、リスクヘッジとしては、正しくはある──が、そのバランスは、抗争の一歩手前だ。

・まあ、「対等な友達関係」なんて、幻想の最たるものである。お互いがお互いを、少しだけ見下しているときこそ、もっとも堅い友情が築かれるという話もある。

・世間一般にとって、弱い奴と強い奴と悪い奴と数が少ない奴が、何をしてもいい相手である。

・火がつけば、加害者が首をくくるところまで追い込まないと気が済まないのが世間様と言うものだ。

・パスワードを誕生日やぞろ目に設定してはならないことは、ことあるごとに口を酸っぱくしてなされる注意事項だが、それをやる人間が後を絶たないからこそ、ことあるごとに口を酸っぱくしてなされる注意事項なのだ。

・必要なものの総和が不必要の塊になるって、どんな理屈なのだ。

・ものの多さは、コンプレックスの表れとも言います。自分に自信がないから、大量の所有物で空っぽの心を埋め合わせようとするのだとか。

・何でもため込むタイプなのだ。ものでも──ストレスでも。限界までため込んで──そして炸裂する。

・ものを捨てるのではなく、空間を作るのだと、そう考えるべきなんでしょうね。

・一言すごいですねと誉めていただければ、それで僕の小さな虚栄心は十分満たされるのですよ。

・お優しいと言うよりお易しいとか?

・薬になれなきゃ毒になれ。でなきゃあんたはただの水だ。

・濁ると言えば、液体か半液体だというイメージに縛られてしまいましたね。字もまた、濁るわけですか。液体や半液体ではなく、濁音や半濁音──。



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