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『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』 [☆☆]

・「リベラル」を批判すると、問答無用で「右翼」のレッテルを貼られ「知識人」から排除される横暴がまかり通ってきました。

・初枝さんは梅澤元少佐が自決命令を下さなかったことを知っていましたが、当時、村では集団自決は「軍令」だとされており、また「軍による強要」だからこそ援護金の支給対象になると考えられていました。

・援護金については、「一人およそ年間196万円」という数字を出しています。「慶良間で家族のうち四人が集団自決した場合、196万円かける四人で800万円近くになります」とのことですから、援護金の支給に不利になるようなことは一切許さないとい、という雰囲気が生まれることは容易に想像できます。

・村の戦記の記述を一から十までウのみにし、さらに尾ヒレ手ビレをつけて、さも現場にいて、すべてを見知っていたかのように描写する魂胆に憤激をおぼえる。

・日本軍は「邦人保護」を名目に中国を侵略しましたが、敗色が濃厚になったときに軍人たちが真っ先にやったのは邦人を見捨てることだったのです。

・その理由は明白で、戦前の日本軍は「皇軍」すなわち天皇の私兵であり、その目的は「国体」を守ることで、市民・国民を守ることではなかったからです。本土決戦に備えて軍の消耗を避け、市民を見捨てることは、日本政府や軍部にとって当然の選択だったのです。

・日本国憲法では、9条において「戦力を保持しない」としているために、自衛隊が市民を守るための組織であるとはどこにも書いていない。

・デモクラシー(democracy)は神政(テオクラシー theocracy)や貴族政(アリストクラシー aristocracy)と同じ政治制度のことですから、「民主政治」「民主政」「民主制」などとすべきで、「民主主義(democratism)」は明らかな誤訳です。

・いま起きているのは、自由(効率)、平等(衡平)、伝統(共同体)などの価値をめぐるイデオロギー対立なのです。

・集団的自衛権をめぐる議論が不毛なのは、「日本が戦争に巻き込まれる」とか、「沖縄米軍基地がなければ日本は守れない」とか、常に自分(日本)のことしか考えていないからです。

・政治的な大潮流は「生活保守」であって、人々が求めているのは「安全」なのです。

・安倍談話を「主語がない」とか、「本心ではない」と批判する人もいるようですが、これもどうでもいいことです。マキャベリを引くまでもなく、権力者は目的の実現のために最適な、「理想」を語ればいいのですから。

・第一次世界大戦で民族自決が新しい「正義」になりました。日本はこの「グローバルスタンダードの転換点」を理解できず、侵略と領土の拡張にのめり込んで自ら破滅したのです。

・戦争の本当の恐ろしさは、「無辜の民」が犠牲になること以上に、ごく普通の市民が平然と「隣人」を殺すようになることです。

・EU諸国など高率の消費税を課している国の多くで軽減税率が導入されていますが、政策を評価した経済学者らの結論は、「こんなバカなこと、やらなきゃよかった」です。

・マグロなどの刺身は軽減の対象だが、刺身の盛り合わせは加工品だから対象外、との議論が出たそうです。こういうバカバカしいことをすべての食品に行なう社会的コストを考えれば、「やらなきゃよかった」と後悔するのも当然です。

・国民は自分と同程度の政治家しか選べないのですから、私たちはこれからも愚かしいポピュリズムとつき合っていくほかないのでしょう。

・「日本と外国はちがう」という反論が即座に返ってくるでしょう。しかしその場合は、「外国人にできることがなぜ日本人にはできないのか」の合理的な理由が必要です。その説明は、たぶんひとつしかありません。それは「日本人が愚かだから」です。

・「保育園落ちた日本死ね」のブログをきっかけに政治家や識者がいろんなことを言ってますが、違和感があるのは、この人たちのほとんどが保育園を利用した経験がないからでしょう。

・学童保育で預かってもらいましたが、そこで感じたのは、日本の社会では専業主婦が「正常」で、「共働きは特別な事情がある家庭」と扱われていたことです。すでに欧米では共働きが常識になり、専業主婦は「障害があるなどの理由で働けない人」と思われていたのに。

・なぜこれができないかは、「A=BはB=Aに等しい」という単純な理論で説明できます。非正規と正社員の区別をなくすことは、「すべての正社員を非正規にする」ことでもあるからです。

・サービス残業は「現代の奴隷制」ですから、それを一掃するには経営者に懲役刑を科せばいいだけです。こういう当たり前の主張をする「リベラル」が日本にいないのは、みんな奴隷労働が好きだからなのでしょう。

・「相手の身になって考えてみよう」というのは、小学生でも知っている道徳の基本です。これをちょっと難しく言うと、「自分の主張が正しいのは、自分が相手の立場になっても、その主張が正しいと納得できる場合だけだ」ということになります。

・人種差別をする人は、自分が外国に行ったっ時に、「お前は黄色人種だからあっちの汚いトイレを使え」と言われて、「わかりました! 人を人種で差別するなんて、なんて素晴らしい社会なんでしょう」と素直に納得できなければなりません。

・日本が貧しくなった理由は、労働者1人当たりの生産性がOECD34か国中22位、先進7か国の中では最下位と際立って低いからです。

・「善男善女」を傷つけることのない「よいこ新聞」のようなジャーナリズムでは、いま世界で起きていることを正しく伝えることはできないでしょう。

・プーチンはシリア内戦の最初から欧米の「人権」による介入を批判し、権力の空白より独裁の方がはるかにマシだと主張しました。リアリズムと理想論のどちらが正しかったかは今や明らかです。

・FXでは、掛け金に対して最大25倍のレバレッジがかけられます。これは、1万円の掛け金に対して胴元が24万円をほぼ無利子で貸してくれるのと同じですから、他のギャンブルと比べれば法外に有利な取引です。それに気づいたギャンブラーが株式市場やパチンコ・パチスロから続々とFXに乗り換え、普通の主婦が3年間で4億円を超える利益を上げて脱税で摘発されたりしました。

・スイスへの「安楽死ツアー」が秘かな話題になっています。スイスでは、外国人でも自殺幇助機関に登録でき、不治の病の末期であれば安楽死を受けられます。費用は7000ドルで、現在は60か国5500人が登録しているといいます。

・アメリカの経済格差は、「知能」の格差のことなのです。

・「グローバル資本主義」の本質が知識社会化だからです。そこではヒトの多様な知能の中で、言語的知能と論理数学的知能のみが特権的に優遇されます。

・知識社会化にともなう富の二極化は、人種や民族を問わずこれからも拡大していくでしょう。そう考えれば、人種的なポピュリズムより、「知能によって排除されたすべての有権者の側に立つ」候補者の方がずっと強力です。

・論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能(IQ)の遺伝率は77%です。これがどのような値化は、身長66%、体重74%という遺伝率と比較すればわかるでしょう。

・ほとんどの人は、「この世界が醜く残酷だ」という現実を受け入れることができません。そのため世論を気にする政治家や官僚は間違った前提で政策を作り、より悲惨な状況を招いてしまいます。

・相手に要求できるのは、自分と相手の立場を反転させて、それでも許容できることだけです。



「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

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  • 作者: 橘 玲
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



「リベラル」がうさんくさいのには理由がある (WPB eBooks)

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