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『未来化する社会』 [☆☆]

・進歩と富は公平に分配されるわけではない。一部の人間は儲けるだろう。ごく一部の人は途方もなく儲けるだろう。だが多くはかやの外に置かれる。

・ギャーギャー騒いだものだった。化学薬品工場から放たれるにおいがきつかったからだ。母は、ふつうに呼吸をし、静かに言った。「これはお金のにおいなのよ」。母は強烈なそのにおいと雇用を結びつけ、さらにはそこで働く人が父の客になるかもしれないことを重ね合わせていた。

・農耕社会には土地が、産業化時代には鉄が、最も重要な原材料であったように、情報化時代においてはデータが原材料だ。

・20世紀の政治体制と市場を大きく二分したのは、左か右かだった。21世紀の基準は政治的・経済的に開いているか、閉じているかだ。

・ロボットの運転するロボットカーの方が人の運転する車よりも安全だといえるのには、はっきりした理由がある。自動車事故の主な原因とされる4つのD――脇見(ディストラクション)、居眠り(ドロージネス)、酒酔い(ドランクネス)、ドライバーエラー――を、ロボットカーなら劇的に減らせるからだ。

・なぜ、これほどの巨額をロボットに投資するのか? 「人間も動物だからね。100万頭以上の動物を世話するとなると、頭の痛いことばかりで」。

・新しいテクノロジーから最大の恩恵を手にできるのは、様子見を決め込まずに、変化にいち早く順応して、市民や社員を成長産業に向かわせることのできる社会や企業である。

・2008年には、抗うつ薬はアメリカ人にとって非常にありふれたものとなり、60歳未満のアメリカ人にとっては最も多く処方される薬になった。

・新しいテクノロジーは最終的には、使いやすさ、経済的な恩恵、信頼性が合わさったときに一気に採用が広まるのだ。

・かつてATMが銀行の窓口の必要性を減らしたように、携帯電話はATMの必要性を減らしつつある。携帯電話はいまや銀行である。

・携帯電話会社は、市じゅうで派手な広告を打っている。住民が家の外壁に広告を塗ってよいと言えば、携帯電話会社はその家の壁を無料で塗り直す。建物の大半には、三大携帯電話会社を表す3つの色のどれかが塗られている。

・エアビーアンドビーは、ただひとつもホテルの部屋を所有することなく、世界最大のホテルチェーンになった。

・昔ならちょっとした厚意で行なわれていたかもしれないことを、共有経済は経済活動に変えてしまった。

・ウーバーが当日および翌日配達というビッグビジネスを引き継いだらどうなるだろう。ウーバーがいつかピザや花の配達サービスを手掛けるようになっても私は驚かない。

・金がどこに行くかといえば、シリコンバレーのウーバーの株主だ。つまり、イタリアのGDPのかなりの部分がシリコンバレーに移ったのだ。テクノロジーのプラットフォームのおかげで、シリコンバレーは古代ローマみたいになった。属州から貢ぎ物を捧げられているのだ。

・イーベイが誰でも小売業者になれる道を開いたころ、プラットフォームには、安くてぱっとしない品があふれていた。実質的にはガレージセールがオンラインになったにすぎなかった。ところが現在では、ガレージにあるものとして世界で最も高価な品、フェラーリでさえどのモデルのどの年式でも買うことができる。

・ビットコインは、物理的な通貨というより、ひとつの大きな台帳が公開されていると考えるとわかりやすい。

・所有権――台帳の中の自分のスロット――は、暗号学的に署名された「秘密鍵」によって検証される。不動産の弁護士である私の父なら、この秘密鍵を「無記名(持参人払い)証券」とでも呼ぶかもしれない。

・ビットコインのウォレットには実際にビットコインを入れたりしない。ウォレットに収めるのはビットコインの秘密鍵だ。取引でビットコインを使うときには、自分のコインの公開アドレスと支払先の公開アドレスだけわかっていればよく、あとは、自分のウォレットから秘密鍵を入力してコインの正当な所有権を示すだけだ。

・ブロックチェーンには、ビットコインの決済の第1件目から全取引が1件ずつわかるように記録されている。

・ビットコインでいうマイニングとは、チェーンの次のブロックを探す計算のことだ。新しいブロックを作るアルゴリズムを解ければ、解いたコンピュータに新しく掘り出したビットコインが与えられる。

・最終的には2140年までに2100万のビットコインがマインされると見られている。そこに到達すると、新たなビットコインは増えず、取引は既存のビットコインだけを使いまわすだけになる。

・ビットコインだと、政府から追跡されない取引が簡単にできる、と考えている人がいるとしたら、100パーセント間違いだ。取引はすべて衆人環視のもとで行なわれる。誰でも台帳のすべてを確認でき、誰が何を保持しているか知ることができる。

・世界は冷戦(コールドウォー)からコード戦争(コードウォー)へ。

・サウジアラコムこそ長期的に見て最も資産価値の高い企業である。時価総額はアップルの3倍以上の2兆ドル、エクソンモービルの7倍にあたる。

・今日のサイバー攻撃は主に3種類に分類される。機密性への攻撃、可用性への攻撃、完全性への攻撃だ。

・世界第2位の経済大国である中国は、今やほぼすべての種類の金融資産の大株主である。つまり中国にとって安定性と経済成長はきわめて重要なファクターなのだ。新聞の一面を飾るようなサイバー攻撃が世界中で起きるような事態になれば、損害を被るのは中国自身だ。

・家電品にウイルスを感染させるなんてばかばかしいようだが、その処理能力は暗号通貨の採掘(マイニング)に使えるんだ。いつ起きてもおかしくない。

・昔の海軍兵士は星を見て現在地を知り、舵の方向を決めることができた。星を読める兵士なんて今はいないね。

・今日の市場のあり方は、空爆が激しかったころに対空砲を開発した企業と似ている――より多くの国民を守るために使うのではなく、市場で武器商人に売るためだけに作っている。

・もし何かをするために60秒の時間があったなら、そのうちの10秒をよりよい方法を見つけだすことに使いなさい。

・ビッグデータの本当の意味は、データの量ではなく、その場で何かをできるように、ほぼリアルタイムで多くの情報を処理する能力にある。あとになって思い出して分析するのではなく、事前に練った戦略に基づいて即断するんだ。

・研究者は、ビッグデータを顕微鏡でもあり望遠鏡でもあると言う。以前は見えなかった細かいものを分析でき、一方で、それまでは遠すぎて気づけなかった相関関係を明らかにできる。

・上は人工衛星、下は土壌から絶えず情報を吸収し、組み合わせて分析する。経験と勘をアルゴリズムに変えるのだ。農業機械は、昔の人が夢見た以上の精密さで稼働している。

・化学肥料から発生する亜酸化窒素ガスは、二酸化炭素やメタンガスと同じく地球の気候に悪影響をもたらす有害な温室効果ガスなのだ。

・ローン処理や口座管理のような基本的な銀行業務の陰で動いているシステムは、非常に古い、かたやIT企業では日々革新し続けて、6か月ごとに新製品を発売しているというのに、銀行は1980年代から1990年代に開発されたシステムをいまだに使っている。

・銀行が行なっていること――金を預かり、移動し、リスクに値を付ける――のすべては、データ企業の役割です。もし、グーグルがその気になれば、これら3つの仕事を大半の銀行よりうまくやってのけるでしょう。

・こうした技術は、詐欺を暴くためではなく、詐欺にひっかかりそうな人を物色するために使われるおそれもある。

・テクノロジーそのものは中立だが、人がどう使うかで価値が変わる。使う人間の意図と価値観がテクノロジーに投影されるのだ。

・もし9歳の子がネット上でバカなことを言ったら、その言葉は、彼の人生の残りの期間ずっと、恒久不変なデータの中で生き続ける。

・機械が人間に近づき、「われわれ」に取って代わるのではないか──という哲学的な恐怖は昔からあった。ビッグデータの世界では最近、これとは逆に、人間が機械に近づくという新しい恐怖が生まれている。

・デトロイトは自動車工学の専門性を生かして「ドローンバレー」になるべきであり、シリコンバレーをたくさん作ろうとするよりは、むしろ「互いにユニークな存在で、それぞれが別の分野に特化した、シリコンバレーのバリエーションが50か所」できることを目指していくべきと提言している。

・ある人が助言してくれたんです。自分の名前を書いた名刺を印刷して、<ウィメンズ・デジタル・リーグ>創業者社長、マリア・ウマルと自己紹介しない限り、真剣なビジネスにはならないって。自分にとっても、耳を傾けてくれるそのほかの人たちにとっても。

・子供たちに1年生からプログラミングを教えている。つまり、早い段階から外国語を教えはじめるということ。コンピュータ言語は独自の文法を持った言語のひとつにすぎない。たまたまフランス語よりずっと論理的なだけで。

・25年前、どちらの国でも配給の列が延び、経済が破綻していたときに、ベラルーシとエストニアが行なった選択は、今日のさまざまな場所で迫られている政治経済モデルの選択を象徴している。経済の扉を開くか(エストニア)、閉ざすか(ベラルーシ)、今まさにその選択をめぐってウクライナが揺れている。

・アルゼンチンで事業を行なう外国企業が資金を持ち出そうと思ったら、たぶん一番楽な方法は、大量の牛肉を買い込んで海外へ輸出し、輸出先でドルやユーロに換えることだ。アルゼンチンの閉鎖的なシステムのせいで、牛肉が国際為替の媒体になってしまっている。マネーがますますコード化される世界にあって、これは期待に逆行するものだ。

・どの国でも女性は労働力――または潜在労働力――の半分を占める。競争力を持ち、繁栄した国になるには、高い教育を受けた労働者がそろっている必要がある。潜在労働力の半分をわざわざ削ろうとする国があるのなら、自らゲームを放棄するようなものだ。

・「天の半分は女性が支えている」と、かつて毛沢東は言い、男女平等は毛体制の核をなす取り組みだった。数十年かけて中国社会に女性が進出してきたことが、今日の経済大国を支えた要因のひとつである。

・43歳の私は、シリコンバレーの会合で最年長になることがよくあるが、ヨーロッパではだいたい最年少だ。

・上海株式市場に上場している企業のCEOの平均年齢は47歳だ。対照的に、強固なヒエラルキーのある日本では、日経平均株価指数に採用されている企業のCEOの平均年齢は62歳である。

・あなたの会社に若者がやってきて、勤続30年の役員より優秀であることを示したら、あなたならどうしますか? 歓迎しますか? 追い返しますか?

・アフリカを旅するたびに、倹約(フルーガル)イノベーションの例をたくさん見てきた。物品の不足する環境では、人は創造力を発揮する。

・特定のスキルセットには特定の期間の需要曲線がある。瞬間的には天才的数学能力が求められる。けれど、その期間はあと10年もすれば終わるだろう。技術のプラットフォームがいったんできてしまえば、誰も再投資しないから。

・プログラミング言語を学ぶのは、エンジニアになるためでもプログラマーになるためでもない。物事をまったく、それはもう全然違う違う角度から考えられるようにするためだ。抽象思考を身につけ、問題を小さく分解してから解決したり、あるシステムが他とどうかかわっているかを考えたりするためだ。

・なんといっても、分析力を磨かなくては。ルーチン作業はコンピュータが行なうようになるが、コンピュータを監督するのは人だ。分析力はいつになっても古びることはない。



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