SSブログ

『オートメーション・バカ』 [☆☆]

・ピントは20世紀アメリカ製造業のどん底を象徴する車だと言う人もいる。

・やることが少なくなったという喜びは確かにあったが、薄れていったのだ。新たな感情が入り込んできた――「退屈」である。オートマ車は私を運転手ではなく、乗客の気分にさせた。

・われわれは車をコントロールしているというよりは、車をコントロールするコンピュータに対して電子的インプットを行なっているのだ。

・結果は驚くべきものだった。人々は余暇のときよりも労働中のほうが、自分のしていることにより満足し、より幸福な気持ちでいたのである。

・人間よりもロボットのほうが、速く、安く、よりよく仕事をするのなら、その職はロボットが得ることになるだろう。

・雇用創出はこれまでになく遅々として進まず、失業率は頑固なまでに高いままだった。理由の説明を求め、犯人捜しを始めた人々は、いつもの容疑者にたどり着く――労働節約テクノロジーだ。

・感覚器官、計算する脳、物理的運動を制御するメッセージの流れ、学習のためのフィードバック・ループ。これがオートメーションの真髄。ロボットの真髄だ。そしてこれはまた、生物の神経系の真髄でもある。

・多くの工場では、会社の経営者よりも組合幹部のほうが、操業に関し大きな力を持っていた――支配権は労働者にあったのだ。オートメーションは、パワー・バランスを指揮者側に移行させる手段だった、

・コンピュータがムーアの法則に従って疾走していく横で、われわれの先天的能力は、ダーウィンの法則に従ってカメのようにのろのろと這っている。

・A320のフライ・バイ・ワイヤ・システムは、パイロットと飛行機との触覚的リンクを断ち切った。

・テクノロジーの進歩は、仕事内容と果たすべき役割とを必ず変化させるのであり、そのため、自らをどう見るか、および他者からどう見られるかをも、必ず変化させる。

・文明は、われわれが思考することなく行なうことのできる重要なオペレーションの数を増大させることで進歩する。

・オートメーション過信は、コンピュータがわれわれを偽りの安心感へと誘い込むことで生じる。機械は不具合なく動くだろう、難題にもすべて対処してくれるだろうと信じ込むと、われわれの注意力はさまよいはじめる。その結果、何らかの不具合を知らせるシグナルを見落としてしまう。

・自分たちは誤る存在であり、しばしばへまをやらかすと知っていたから、大工たちの古くからの格言に従っていたのである――二度測り、一度で切れ。

・人間の行なったインプットと、同価値のアウトプットしかコンピュータは行なわないと知っているにもかかわらず、コンピュータはへまをしないのだとわれわれは思い込んでいる。

・書かれたものを読んでいるだけのときよりも、積極的に心に呼び出しているとき――生成しているとき――のほうが、単語をはるかによく記憶する。

・フラッシュカードを用いて「HOT」と「COLD」といった対義語のペアを覚えるとする。被験者の一部には、語が2つとも完全に書かれているカードが与えられる。例えばこんな具合だ。HOT:COLD 他の被験者が使うカードでは、2つ目の単語は頭文字しか書かれていない。HOT:C そののち、対義語のペアをどのくらい覚えているかテストしたところ、文字の欠けているカードを使った集団のほうがはるかに成績がよかった。空白を埋めようとしたことが、つまり見るだけでなく行動したことが、情報のより強力な定着につながったのだ。

・弱すぎる刺激も強すぎる刺激も学習を妨げることになる。中ぐらいの刺激が最高のパフォーマンスを引き出すのである。

・情報過剰の悪影響を、私たちはみな知っている。一方で、情報過少もまた、同様の弱体化効果をもたらすことがあるとわかっている。

・いかによい意図に基づいたものであろうと、物事を簡単にすることは裏目に出ることがある。

・人間の「注意力のキャパシティ」が、実際に「精神的仕事量の減少に応じて縮小する」証拠を発見している。

・あまり試されていない新しいコンピュータ・システムを大急ぎでインストールすれば、しかもそれがテクノロジー企業やアナリストの主張で加速された場合であれば、必ずと言っていいほど買い手は幻滅し、売り手は大儲けする。

・「コンピュータ・シミュレーション・モデル」による見積もりは、常に懐疑的に見る必要があるということだ。シミュレーションは単純化でもある。現実世界を不完全にしか複製せず、アウトプットにはしばしば作成者のバイアスが反映される。

・目標はもはや、人間の思考の「過程」を複製することではなく――それはまだわれわれの理解の及ばないところにあるからだ――思考の「結果」を複製することになっている。

・コンピュータ科学者たちは現在、精神が生み出す特定のもの――雇用に関する決定だの、雑学クイズへの回答だの──に注目し、精神を持たないコンピュータが、同じ結果に到達するようプログラムしている。

・空間の認知地図の形成を行なえば行うほど、それを支える記憶回路は強化されるようなのだ。運動によって筋肉が鍛えられるのと同様に、海馬内の灰白質がこれによって実際成長することもある。

・ナヴィゲーションに使用されないせいで海馬が委縮しはじめた場合、記憶全体の喪失と、認知症のリスクの増大につながる。

・社会はさまざまな意味で海馬を縮小させる方向へと動いています。今後20年の間に、認知症発症はどんどん若年化していくだろうと思います。

・よい建築は生活を引き上げ、悪い建築や凡庸な建築はこれを損ない、もしくは安っぽくする。

・CADソフトウェアは、デザインを図面へと変えるツールから、デザインそのものを作り出すツールへと変わってきたのだ。

・数値制御、やむことのない労使間闘争に直面し、労働者と組合の力をそぐべく、機械のオペレーションのコントロール権を欲していた経営者や管理者たちにもアピールしたのである。

・ゲーミフィケーションは、フロー状態のダークサイドを利用する。人間は、フロー状態がもたらす快楽と報酬を維持しようとして、ソフトウェア使用に耽溺することがある。

・自動運転車の登場は、機械が「倫理体系」を持たねばならない新たな時代の始まりを告げているのだ。

・完璧な道徳的アルゴリズムなどなく、誰もが賛同できる規制へと倫理を還元する方法もない。哲学者たちは何世紀もそれを試みてきたが、上手く行かなかった。

・ビジネスにとっては、顧客を哀願者に変えるのが一番なのである。

・何かを真に理解するには、信頼だけでなく不信頼も必要である。

・生きることと知ることの両方にとって、中心となるのは行動なのだ。

・オートメーションがわれわれに突きつけるのは、労働なき労働者の社会、すなわち、労働者に残された唯一の活動が奪われた社会という展望である。もちろん、これ以上悪い状態はありえまい。

・世界はあまりに予想がつくものとなり、挑戦すべき課題が生活からなくなり始めました。課題がなくなれば、人生に意味はありません。



オートメーション・バカ -先端技術がわたしたちにしていること-

オートメーション・バカ -先端技術がわたしたちにしていること-

  • 作者: ニコラス・G・カー
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: 単行本



nice!(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

トラックバック 0