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『レベル96少女、不穏な夏休み』 [☆☆]

・東京では絶滅してしまった蛍の幼虫をよそから買ってきて放つのは、仏教的には放生と言って徳の高い行ないだが。

・そもそも蛍の幼虫の食べ物は川の貝で、川の貝は人間によくない寄生虫がいるので必死で駆除した歴史があり、蛍を放って卵を産ませても食べるものがないから育たないのだそうだ。

・『となりのトトロ』は実は死後の世界を描いているから登場人物に影がない。

・合わせ鏡を作っただけでは悪魔は召喚されない。誰かが「こんなことをしてはいけないのではないか」と言ったときに合わせ鏡は悪魔を喚び出し、異界に通じる。

・答えがわかるので途中式が書けない。

・よく言って純真無垢。悪く言って単純馬鹿なのだから長所を生かす方向で、素直にはきはき物を言うべきだと皆に勧められた。

・意識の低いユーザが一番のセキュリティホールよ。

・夏の遠足は命懸けだ。

・人は小さな蠅の死骸に死神の影を感じて恐れおののいたりはしないが、人間の死体はブルーシートで覆い隠し、穢れとして遠ざけようとする。

・死を特別視しすぎていて、自分に理解できるような意味がない事故死というのを信じることができず、疫神などという曖昧なものではなくもっと具体的な「誰か」突き落とした犯人がいると思い込んでいるのかもしれない。一種の陰謀論だ。

・努力は必ず報われ、不幸には必ず理由があると信じる前向きな者。前向きすぎて電車で痴漢に遭うのはおなごの方に隙があったと思い、通り魔に殺される奴がおるとそんなところを歩いていた被害者が悪いと喚き出す輩です。

・「こいつなぞいつでも殺せる」と思えば簡単に他人より偉くなった気分になれる。

・所詮自らに誇るところのない、知性のない奴が小理屈を盾に逃げ隠れしているのに過ぎない。

・人は痛みを知って優しくなるなぞ大嘘です。いくらでも低きに流れ、卑しいものになることができます。

・民俗学はセクハラの歴史なのじゃから仕方がない。

・平成の御代でも大豪雨で堤防が切れ、鉄砲水が出て家が押し流される。蛇は怒ると村の一個や二個、たやすく呑んでしまうのよ。

・神代の頃から人は蛇に生け贄を捧げておった。堤が切れれば多くの命が無差別に失われる。ならば事前に死ぬ者を決めて一人で済ませようという、一見合理的に見えて不合理な判断よ。

・鬼は無法者のメタファー。盗賊などもあるが、反体制組織のことでもある。

・鬼の名に「童子」とついているのは「社会が定めた大人の要件を満たしていない、まともな大人ではない」という意味。

・犬はあまり化けんぞ。猟犬や番犬は味方として強力すぎて、化けたときのことなぞ恐ろしゅうて考えられんのじゃ。味方を疑うのは恐ろしい。

・八島は言霊の国、口に出したことは本当になってしまうからまことに恐れていることは言えぬのよ。

・神聖なる神の使いの熊や狼はおっても、熊や狼の妖物おらぬ。単に熊、単に狼というだけで妖術なんぞ使わずとも十分恐ろしいからじゃ。

・市子もやっていると聞いて、私の中に対抗心が芽生えた。あるいは友達とお揃いにしたい心理なのかもしれない。

・皆、見ないようにしている。――この世界は、血と悲しみばかりだ。

・済んだことをぐだぐだ言わないでほしい。人間は前を向いて生きなければならないのだ。

・皆言う。「言ってくれなきゃわからない」と。その次は「口だけでなく金を出せ」。人間であるために必要なルールはその二つだけ。――二つしかない、とも言う。

・王子様は困っている貧しい人のことばかり気にしてツバメのことなんかまるで見てくれないんだもの。いくら頭がよくたって心が優しくたって顔が綺麗で目にサファイヤがはまっていたって、近くにいる人の話を聞いてないんじゃ駄目ね。

・母性愛はホルモンバランスのもたらすもので本能でも永遠でも無償でもない。

・必要なコストを支払わない人を助けちゃ駄目。一回タダでいいと思ったらそんなもんだとナメられて、次に出会った本職の霊能者が安く買いたたかれる。

・足切りラインを設定しておかないといくらでも際限なくお客が来る。そのとき困るのは君だ。その設定に金額を使うのは我ながら悪くないと思う。

・知性があるのと賢いのは違う。

・山伏と巫女が出てきた時点で壺や判子を買うくらいの覚悟を決めとけよとは思う。

・「金のためにやっているのではない!」「ならやっぱりごっこじゃないか!」

・最後に物を言うのは、心底面倒くさい、関わりたくないと思わせる力!

・人助けで自分がみっともないほどボロボロになっちゃいけない。

・一緒に食べてくれる誰かが見つかればいいけど、見つからないならないでそれなりに楽しく生きてはいけるよ。

・「布都御魂より後に出てきた刀は所詮劣化コピー」と申す者もおりますしね。

・彼には善意しかなかった。しかし善意は時に人を追い詰める。幸せな王子が、ツバメを追い詰めたように。



レベル96少女、不穏な夏休み (講談社ノベルス)

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  • 作者: 汀 こるもの
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/11/09
  • メディア: 新書



レベル96少女、不穏な夏休み 出屋敷市子 (講談社ノベルス)

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