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『鈴木さんにも分かるネットの未来』 [☆☆]

・日本のネットの世界での識者というのは、世界では(=アメリカでは)こうですよと教えてくれる人のことであり、多くの場合は、これが正しいという信念とセットになって情報を伝えるので、教師というよりはむしろ伝道師と化すことも珍しくありません。

・ネットで「嫌儲(けんちょ、けんもうなどと読む)」といわれる金儲けの匂いを嫌う風潮がある。

・ネット時代のクリエイターだったり出版社だったりは、コンテンツ自体を独立したプラットフォームとして設計しなければいけない。簡単にいうと、顧客との接点をプラットフォームに依存せずにコンテンツ側が持つということです。

・なぜ有料ウェブサイトがなかなか成功しなかったのかというと、無料が主流のウェブから会員を誘導する仕組みがなかったからです。

・オープンであること自体は魅力的ですが、オープンであるためには、他社と分業でつくる部分についてデザインやサービスなど何かを妥協することが必要です。尖った製品やサービスをつくるためにはすべてを一社で決めたほうがいいに決まっています。

・インターネット時代には、規制がいかに少ないかについて国家同士の競争がおこなわれるのです。他国にない規制がある国は、自国の市場を海外企業に奪われることになります。

・iPhoneが画期的なのは、携帯電話をつくるうえでの日本国内だけにあったローカルルールを全部無視してつくったからにほかなりません。

・ハーディングマシンという機械をご存知でしょうか? これは「光過敏性発作を起こす恐れのある映像」を調べるハーディングチェックのための機械で、いわゆる「ポケモンショック」と呼ばれる事件後にテレビ局が導入しました。

・ハーディングチェックに合格しないと、テレビ局は納品を受け付けてくれませんから、制作会社はハーディングチェックに引っかからないように、問題になりそうな箇所の映像を加工するノウハウを発達させたのだそうです。人間ではなく機械の反応を窺う時代がすでに来ているのです。

・人間社会という生物の体内に、お金をエネルギー源にして増殖する機械という寄生虫が出現したというふうに考えることもできます。

・機械が人間の奴隷となって何でもやってくれるようになると思うのも、ちょっと甘い考えです。機械がはびこる世界では、おそらく人間が機械に合わせないと生活できないようになるのです。

・電子書籍であれば発売したあとでもユーザの手元にある本の内容を変更することが技術的には可能です。このことをうまく利用すると、本を完成しないまま出版することもあり得るでしょう。最終章だけ完成していない状態で発売して、しばらくしてから最終章を追加するといったこともできるようになるでしょう。

・最初は世の中にあるパソコンショップ網に比べてあまりにも微々たる勢力だったアップルストアですが、パソコンがコモディティ化して儲からない商品になるにつれて、パソコン専門店なるもの自体がほとんど絶滅しかかっているなかで、アップルストアは次第に存在感を増しています。

・紙の本が売れる拠点が減ることは、電子書籍がその分売れることを意味しません。書店がなくなると人間が書籍に出会う機会がその分減るからです。世の中での本の存在感が薄くなれば、その分、人間が消費する本の総量も減るでしょう。

・ネットが発達した現在においてもネットでの最大の話題は、常にテレビが提供しているのです。

・チャンネルを増やして多様なユーザニーズに対応させるのは、放送免許にもはや守られないテレビ局の最大の武器である大量の視聴者を分散させてしまう危険がある。

・作業量の少ないものについては、UGCは割合にたくさんのコンテンツをつくれるのですが、作業量が多いとコンテンツをつくれるユーザの数は極端に減っていきます。

・ビットコインが盛り上がっているのは主に投機として売買の対象になっているからなので、ビットコインが本当に使用されている場所は、ビットコインのネットワークの中というよりは、ビットコイン取引所の中なのです。

・ビットコインが通貨のあり方を変える革命であり大発明であるというような言説は、明らかに誇大妄想だと思います。



鈴木さんにも分かるネットの未来 (岩波新書)

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  • 作者: 川上 量生
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/06/20
  • メディア: 新書



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