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『飛行機の戦争 1914-1945 総力戦体制への道』 [☆☆]

・海軍は昭和12年起工の大和・武蔵を最後に戦艦を造っていない、一方空母は全部で25隻も作ったではないかとの反論が出ている。

・戦争の悲惨な記憶が生々しく残る戦後日本社会では広く受け容れられたのは、「本当に馬鹿だった」という一見良心的な「反省」の方であった。

・日本海軍が戦艦を重視して温存したというのは正しくなく、実際には旧式だが速度の出る金剛型を除いて使い途がなかったのが実情であるという。

・米国から日本移民排斥や侵略行動批判などの「外圧」が高まると、その反発として紙の上で日米戦争が勃発し、多くは日本が勝つのである。

・今日では荒唐無稽にみえる数々の日米仮想戦記も、当時の日本国民にとっては「軍事リテラシー」を高めるテキストの一種だった。

・巨大戦艦による戦争が古い「軍の戦争」であるなら、飛行機の戦争は新しい「国民の戦争」であった。

・自分が正しいと考えたことを、後先なしですぐ口にしてしまうのである。これでは他人の共感や賛同は得られにくいだろう。

・帝国主義戦争としての日露戦争や、輸出で儲けた第一次大戦を経験した多くの日本国民にとって、戦争はひとつの儲かる「商売」だった。

・彼女にとっての飛行機は平和のための道具であった。だがその平和とは、日本が軍事力で他国に優越し、「戦」に勝つことではじめて得られるものであった。

・戦艦は日本に不利と主張したのは、戦争開始から3年もたてば続々と戦艦を完成させうる米英に対し、造艦能力と経済力の劣る日本は競争できないと考えたからである。

・当たり前のことだが、我々が「戦前」とひとくくりにしてしまいがちな当時の人々にも世代差に基づく考え方の違いはあるのだ。

・もし日本軍に「皇軍」精神や「白兵戦の精華」なる独自性がなかったとしたら、日本軍は世界的に見て二流の、凡庸な軍隊に過ぎなくなってしまうだろう。つまり、それらの言葉は機械化装備や技術の遅れという不都合な事実を国民に向って糊塗し、かつ自らを鼓舞するためにあえて持ち出されているに過ぎないのである。

・結局日本が米国を屈服させるのは無理、「速戦即決主義」が成立するのは皮肉にも「日本が敗けた場合に限られ」るので長期戦とならざるえず、結局のところ「戦争は日米両国に損」でしかない。ならば無益な戦争を回避するのが「文明国人の義務」というものである。

・抽象的な「精神力」は1とか2の単位で計ることができないから掛け声倒れになりがち。

・戦艦は決して敵前上陸はしない、行なうのは兵士や物資を積んだ輸送船団である。

・海軍がこの期に及んでもなお、国民に「凄いぞ」と言ってほしくて戦争を継続していたことの表れでもある。

・戦争で強敵と同じことをやっても勝てないだろうが、何か違うことをやれば勝てるかもしれない。この大正期から存在する単純かつ希望的な観測に支えられて戦争は1945(昭和20)年8月まで続く。

・記事に敵の「出血」とか「消耗」などの語句が躍っているのは、日本が飛行機でひたすら米軍に人的・物的「損耗」を与え続ければ、いずれ米国内世論が転換し、対日講和に応じるかもしれないという希望的観測に基づいている。

・航空戦での勝利が絶望的になると、国民向けの宣伝は、米軍に人的損耗を強要する航空特攻やゲリラ戦を重視するようになった。

・なぜ、戦後の日本人は戦争を今日に至るまで大艦巨砲主義、戦艦の戦争と記憶し続けてきたのだろうか。以下、考える理由を二つ挙げる。一つ目は、日本人にとって数少ない「世界一」である戦艦大和・武蔵の存在と、その戦後大衆文化における伝説化、美化である。二つ目は、戦後に盛んとなった、戦争指導の「真相」暴露的な報道が、航空戦に協力した民衆を免罪するため、戦争を戦艦主体として書き換えたことである。

・敗因の一つに、中国軍のような柔軟、長期的なゲリラ戦法を探ろうとしなかった日本軍の硬直性があると主張している。

・多くの人々は戦争中に語られた諸々の正義をすべて「うそ」とみなし、したがって記憶するに値しないと割り切ることで戦後を生きていった。



飛行機の戦争 1914-1945 総力戦体制への道 (講談社現代新書)

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