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『美術の誘惑』 [☆☆]

・西洋の絵で、たとえば室内の窓際などに果物が置かれていたら、それだけで人間の原罪を表すことが多いのだ。

・中世には子供という概念はなく、言葉で意思疎通できるようになる七、八歳くらいで早くも成人として扱われて労働に出され、それ以前の子供は家畜と同然のようにみなされた。

・ピカソもマチスも、息子や娘をモデルにして多くの作品を遺している。優れた画家の手になると、造形的な計算がゆきとどき、単なる親ばかにとどまらない名作となるのだ。

・概して若死にする者は、無意識のうちに死の予感を抱いており、常に緊張感をもって全力で生きるようであり、それが作品の質の高さにつながることもあったのではなかろうか。

・むしろ、早く死んだほうが天才としてもてはやされたであろう芸術家は多いのである。

・日本で食事が家族団欒の場となったのは明治以降で、それまでは各自の膳でとる「孤食」が普通だった。

・ネズミという名は人の寝ているときに寝ないで活動する「寝ず魅」に由来する。

・どんな美術作品も印刷や映像のように複製で簡単に見ることのできる現代では、作品の大きさのことを忘れがちである。複製ではなく、本物でしか感じられない「アウラ」のほとんどは大きさであるといっても過言ではない。

・彫刻でも、見上げるようなモニュメントと、掌に乗るような置物とでは、たとえまったく同じ造形であっても本質的に異なる作品といってよい。

・仮面は壁に掛けて鑑賞するものではなく、人間が装着して動くことによって完成する芸術であった。

・刺青を入れた者は、その文様と同化するといわれる。彼らは常に自らの文様を意識し、自らの人間性までも刺青の主題に影響された。

・太平洋戦争期もかつては芸術の空白期とされていたが、実は大量の戦争画が制作された美術の黄金時代だった。美術が国家や公衆に奉仕できるまたとない機会だと、多くの美術家が我先にとなだれを打って制作に励んだのであった。

・戦後になると、戦争中の芸術家の活動にふれることがタブーになり、戦争画に熱中していた美術家たちは、軍部に強制されてやむなく制作していたことにしてしまう。



〈オールカラー版〉美術の誘惑 (光文社新書)

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