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『勝ち上がりの条件 軍師・参謀の作法』 [☆☆]

・「勝つ」ことは、敵の皆殺しでもなければ敵戦力の無力化でもない。たとえ敵が兵力を保持したままであっても、こちら側の意思のとおりに動いてくれたらそれは勝ちである。

・参謀は軍に所属しているものですから、戦争の準備をしたり、軍隊を整備したりすることが仕事。もう戦争以外の選択肢を持たなくなっているのです。国を存続させること、国民が幸せに暮らせる状態をつくることが大事ということが視野から外れていく。

・大将の体力とは、病気にならないことではなくて、なったとしても的確な指示が出せる力のことですね。

・平和な時代になって、戦乱の経験も悲惨な経験もない人たちが治めるようになってくると、「御身大事」になる。ところがそれは表立っては言えないものだから「会社が大事」とか、「国が大事」、それが近ごろの為政者となると「公益」だの「公の秩序」なんて言うわけです。本当はちっぽけな保身なのです。

・勝海舟は「世の中に無神経ほど強いものはない」と言っています。

・見通しはこうだから、たぶんこうなる。死ぬことがあるかもしれないが、自分の考えと違うことをやって死ぬよりは、自分の考えに従って生きてから死ぬほうがマシだ。

・鎧を着けて弾丸に当たった状態というのは、傷口の中に鎧の破片を散らばせることですから、より殺傷力が増します。

・勝海舟が、「人材などは騒がなくっても、眼玉一つでどこにでも居るよ」と言っています。人材はいないのではない、見出す能力がないということだと。

・天才ナポレオンも、フランス人ではなくてコルシカ人。主流にいない人ほど事の本質が見える場合があります。

・モスクワで街を全部焼いてナポレオン軍の攻撃を抑えたという話がある。モスクワを焼いたのはロシア軍の将軍だけど、この人はロシア人ではなくスコットランド人でした。だからこそモスクワを焼くことができたのだ。

・比喩的に言うなら、本丸は武者行列のままで、その隣に西洋軍服を着た新式の歩兵部隊を置いた。勝は、旧館、あるいは本館の屋台骨はそのままに、その隣に新館を建てたのです。変われない日本型組織を変えるためには別館を建てて併存させる、この方式しかないと気づいて、勝は別館を建て始めたのではないか。

・情報収集の努力をしたうえで情報が少ないのなら仕方がない。いけないのは、「情報収集の努力をせずに判断してしまうこと」なんです。

・福澤諭吉という人は優れた人だと思いますけど、真の人間を見る目がないから、本当の意味で近代日本の重要人物の中に入らないのではないかと思うのです。

・自分に親切にしてくれたり、世話をしてくれた人を福澤は褒めますね、才能に対してはあまり褒めないのかもしれない。「ヤツよりむしろオレのほうが勝っている」と言いたくなってしまうのか。

・「軍事というのは絵を描くのに似ている」という言葉があります。つまり、教科書で描き方を教えて同じ筆を与えても、みながキレイに描けるわけではない。その人にアートが宿っているかどうかだと。軍事はそれを同じだと主張した。

・自分が憎まれて、攻撃対象にされるということに想像が及ばないところがある。たぶん、自分のことが勘定に入っていないのです。

・人命が、彼にとっては統計の数字なんです。「これくらいの人間が死ぬ状況を作れば江戸を焼かずに処置できるだろう」などと考えている。手術時の出血量くらいにしか人命の重さを考えていない。

・御親兵の創設の趣旨である「天皇を守る軍隊」という基本思想はこの後も、1945年、連合軍に降伏して陸海軍が解体されるまでずっと引き継がれます。日本の軍隊は「国民を守るため」のものでは、最後までなかったのです。

・銃を持った兵の基本動作訓練があるのですが、元士族である兵には、これが我慢なりません。銃を持ったら足軽になることを意味しているので、武士身分から転落することと同義。家名を汚すことになる。

・起きてもいないことで動く、そして自分の仕事でもない所に手を突っ込む。さらに頼まれてもいないのにやる。これらの特徴を持つ者はスパイ・諜報に向いていますね。

・やっぱり日本人は人にどう見られているかを行動の基準にしやすいという傾向がある。

・旗艦三笠が掲げたZ旗の意味するところが、有名な「皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」というメッセージでした。ちなみにZ旗の国際的な意味は「タグボートがほしい」ですがね。

・勝つとなったらどんどん追撃して勝ちを重ねていきたいのが軍隊の本質なのです。攻勢の終末点を、後のことを考えずに越える。太平洋戦争中の陸海軍がそうでした。

・これをやられたら命取りだというものは、必ずピックアップしとかなきゃダメですね。



(032)勝ち上がりの条件 (ポプラ新書)

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  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2014/05/07
  • メディア: 新書



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