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『経済成長という呪い』 [☆☆]

・現在の革命はせいぜいスマートフォンの登場にすぎないという。したがって、現在の革命によって社会が急速に変化しないのは、決して驚きではない。

・ケインズは、産業が発達するペースから考えて、2030年には人々は1日3時間働くだけで暮らせるようになり、残りの時間は、芸術、文化、形而上学的な考察など、本当に重要なことに時間を費やすようになると断言したのである。

・何が欲しいのかは自分でもわからない。人間は、自分にはないと感じる、自分以外の誰かが持っているはずのものを欲しがる存在なのだ。

・農業が始まったとき、哺乳類全体に占める人類と家畜の割合は0.1%以下だった。今日、この割合は90%である。

・人類が「斬新」なのは正当性を要求することだ。人間にとって裏切りは、決して単純ではない。たとえ仕方のない状況だったとしても、である。

・我々は、自分たち自身で作った決まりを不可侵なものとして考える傾向があり、それらの決まりを変えるより、それらを定めた社会が破綻するまで突き進もうとする。

・読み書きを学んだり、飛行機の操縦を覚えたりするために遺伝子を変異させる必要はなかったのだ。

・チベット人の余剰を浪費するための「解決策」は、すべての余剰を僧院に寄進し、非生産者たちの生活を維持することだ。

・生贄、祝典、戦争などは、社会の余剰エネルギーのはけ口になる。

・文字が知識を蓄積する手段になったように、貨幣は富の蓄積を実現するコミュニケーション手段になったのだ。しかし文字と同様に、貨幣には蓄積以上の利点がある。

・貨幣が存在するおかげで、パンを購入するためにパン屋に微笑まなくてもよい。

・中国における産業の衰退には地理的なめぐり合わせがあるのではないかという。モンゴルの侵略により、中国の知識及び政治の中心は中国南部に追いやられたが、中国の場合、イギリス発展の決め手になった石炭の産地は、中国北部に位置していたのである。

・賃金が上昇しなければ、産業の発展は促されないという。安い労働力を利用できるのに、なぜ労働を機械化しなければならないのか。

・高い賃金が産業革命を引き起こしたのであって、その逆ではない。

・アークライトの機械への投資利率は、イギリスでは40%だったが、フランスでは9%にすぎなかった。当時のフランスは低賃金国なので、人間の労働を機械に置き換えても、収益性が低いのだ。フランスのような低賃金国でも機械の導入によって儲かるくらいまで機械の原価が下がったのは、19世紀になってからだ。

・貧困は物資の欠乏にあるのではなく、自分には物資が欠乏していると感じる欲求にある。

・我々が何気なく行なう、食器の縁で生卵を割る作業などは、チェスの対局よりプログラムするのがはるかに難しい。

・感覚と知覚の面での進化は数百万年かけて高度になった一方、数学的な推論の面での進化はつい最近のことだ。だからこそ、それらの作業をコンピュータで再現するのは、はるかに容易だというのだ。

・需要が低下したのは非技能労働ではなく、中間の職業群だというのだ。中流階級は、産業社会の発展にともなう(官民の双方の)官僚化の過程で発展した。

・アメリカの株価指数は1980年以来、10倍になった。この増加の3分の1だけが企業収益の増加によって説明がつく。残り3分の2は、おもに低金利による資産価値の上昇効果によるものだ。

・世界中の女性は、テレビを通じて自分たちを魅了する理想像を得た。つまり、それは西洋諸国の生活様式であり、彼女たちにとって、そうした理想像は自由への渇望になった。人口転換が起きる原因は、精神構造の変化であり、金銭的な誘因の変化ではない。

・有権者の投票行動に関するヨーロッパの比較研究からは、最も投票率の高いのは中間層ではなく最貧層だとわかる。

・ホモ・ヒエラルキクス(序列に基づく人間)からホモ・イコリス(平等な人間)への移行。

・保守革命に反対する者たちは、ほとんどいつも「禁じることを禁じる」という、「68年5月」の過激な個人主義を象徴する有名な文句を唱えた。

・燃え尽き症候群は、今世紀の新たな病だ。現代において故障するのは、機械でなく人間自身になったのである。

・現代の精神的な病は、神経症ではなく鬱病であり、この病は、自分は世間の要求に「見合わない」のではないかと思い悩むと、突如として発病するという。

・宗教の主な役割は、社会から暴力を減らすことだ。そのために宗教では、儀礼を定め、生贄を捧げる。

・経済成長には3つの宗教的な構造がある。1つ目は、経済成長は宗教として機能することだ。つまり、経済成長に関係しない考察は、すべて不敬として退けられるのだ。2つ目は、経済成長は、「休みなく、そして情け容赦なく」であることだ。3つ目は、異議を唱えると、異端者として糾弾されることだ。



経済成長という呪い

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  • 作者: ダニエル コーエン
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2017/08/25
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経済成長という呪い―欲望と進歩の人類史

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