SSブログ

『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』 [☆☆]

・現代の日本社会では、学問としての社会学とは別に、「社会学者」は「評論家」の代用語として流通している。

・デモならいつでも何でも素晴らしい、というわけではない。

・何であんな一銭にもならないことをするんだ、という現象は面白いですよ。

・ここにはない可能性に対して「ムラムラ」してしまうことと、日常生活の小さな友人関係の「ムラムラ(村々)」の中で安心していたいという、その両義性に引き裂かれている。

・議員になると、みんな車で移動して電車に乗らないし、世の中の変化が肌でわかっていると思えない。

・経済学者の場合、自分のモデルに従って金融緩和が必要だと思ったら、経済政策を担当する官庁や日本銀行だけに言えばいいわけです。ところが社会学者の場合、「家族はこうした方がいいですよ」と政府だけに言ってもあまり意味がない。

・好奇心がないと別の可能性や別の前提を考える想像力が働きません。

・「祈り」を「無力な者の、最後の行為。行為とすら、呼べないほどの、無力な呟き」と切り捨てる。

・シャーマンとは、わけのわからない現実に説明を与える人、いわば社会の絵解き師です。

・シャーマンの絵解きには、正しい/正しくないという真偽判定はない。だから、「正しいシャーマン」なんていないのね。「うまいシャーマン」と「へたなシャーマン」がいるだけです。

・「もっともらしさ」が判定基準なんだから、正しい説明なんてなくて、うまい説明とへたな説明があるだけ。

・天動説から地動説へのパラダイムシフトがなぜ起きたのか。これは理論の真偽を争って起きたわけじゃないのよ。議論をすれば、どちらも負けない。天動説の理論体系でも、天体の動きを整合的に説明できる。

・なぜパラダイムシフトが起きるかというと、科学者集団のオーディエンスが新しい理論に同意することで変わっていく。

・英語で受発信できない研究者はグローバルには存在意義がない。

・これまで日本のアカデミック・コミュニティは、日本語という非関税障壁に守られてきた。

・個人の行為は社会的な要因によって影響を受けると同時に、その個人の行為によって社会は差異を孕みながら再生産されていく。

・自分に居心地のいい共同性と文体が手を結びすぎているために、それとは異なる方向で常識外しをしようとすると、文体が過剰に鋭くなってしまう。

・大学に所属して一生を終えるルートというのは、それこそ専業主婦や正社員と同じように、特殊な時代だからあり得たものだと思うんです。社会学を勉強した人間からすると、そこに乗っかればいいとは素直に信じられません。

・「自然的な前提」は社会学の対象にはなりません。社会学の対象になるのは、国籍でも権力でも何でもいいんですが、あくまで自然的ではない事象です。

・社会学は、反啓蒙思想の歴史に位置づけられる。だから社会学的な思考は、「理性的な人間が抑圧のない状況で合意すれば、正しい社会ができる」という啓蒙主義的な発想を徹底的に否定するんです。

・保守主義は、人間の理性には容量の限界があるから、ある程度複雑な社会になると全体の設計ができないと考える。

・アングロサクソンだって、社会学の信頼はとうに落ちている状況で、社会学者は単なるマーケット・リサーチャーと変わらなくなっていました。

・意識高い系の起業ブームみたいなのはあるけれども、同じ穴のむじなで戯れる感じしかしない。

・みんなが知っていることを確かめに行くのは、最悪のリサーチだ。

・昔の学生と今の学生だと、学びのスピードが違うんです。昔の学生が1日でやったことを、今の学生は1週間かけてやる。スピードがすごく遅いんです。

・頭のいいド素人が真剣に学べば、経済学の習得まで2年、物理学・数学は4年。社会学は半年、人類学・民俗学は1か月から3か月だとおっしゃった。

・日本で一番の社会学的研究をしている人々は、官僚ですよ。だって現実の社会問題を分析して、そこから原因、結論や政策をくみ取る仕事を毎日しているわけじゃないですか。

・ヨーロッパ諸国においては、戦後の経済成長が終わる1970年代の石油危機くらいまでを前期近代、それ以降の社会が流動した時期を後期近代と分けるのが一般的です。

・日本では、まだ前期近代的な考えが根強く残っています。終身雇用だとか安定を望む学生が多いのも、その現れです。多少景気が良くなると、前期近代に戻れるんじゃないかという人が増えてしまうのが困ったところです。

・社会学というのは、社会をあり得ない幸せな状態にするのが目的ではなくて、辛さに耐える力をつけることが目的です。

・社会構造というものを、人々の行動の条件であると同時に、結果でもあるというんですね。「構造の二重性」と言うんだけど、簡単にいえば、人が社会をつくり、社会が人をつくるというループ関係が常にあるということです。

・実社会に出ていないから、大学のことしか知りません、みたいな人が社会学者の半分以上だな。

・社会学者なら読んでいて当然というクラシックスがある。それを読むと、考え方や語彙が共通するから、ディスカッションができるようになる。

・いまだに何々法案を支持する人が何%と言っていることの意味がまったくわからない。回答なんて、どの対象者にどんな方法で聞くかとか、イエス・ノーの選択肢が何個あったかとか、そんなことでいくらでも変わりますから。

・2000年代あたりから、格差社会論が盛り上がったのは、その時代に急に格差が広がったというよりも、みんなが自分たちの状況に気づいたということです。

・政治学は政治現象を扱い、物理学は物理現象を扱いますよね。それと同じように、社会学は社会現象、とりわけ近代の社会現象を考察する学問だと説明します。

・その場かぎりで耳障りのいいことを言えば、生きづらい人の中のカルト的なカリスマになれて気分はいいかもしれないけれど、将来の結果までを視野に入れた議論ができなければ、理系の専門家や行政官からは端的にバカにされますよ。「何が社会を変えるだ」と。

・社会学って、弱者発見が好きですからね。発見して課題解決するならいいけれど、ただスケープゴートを探して糾弾して、大衆の不安を煽って敵愾心と孤立感を与えて、「先生、どうすればいいんですか」とか頼られて快感を得て終了、と。

・「ソーシャル・サイエンス」というより、文学的に社会学をやっている人が多い気がします。

・日本の社会学には、文学派とも呼べるような流れがあるのかもしれないと思うんです。

・3.11以後の言論状況を見ると、ファクト(事実)よりもオピニオン(意見)が、フェアネス(公平なものの見方)よりもジャスティス(正義)が先行してしまっています。

・ツイッターで盛んに発言する学者は多いけれど、実際にそれが社会変革につながっているかといえば、ほとんどの場合NOでしょう。

・政治的影響力という面でも、社会学は経済学には完敗している。経済学は竹中平蔵さんのような大臣を生み出しているが、社会学者の閣僚はまだ誕生していない。



古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

  • 作者: 古市 憲寿
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/10/18
  • メディア: 新書



古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/10/20
  • メディア: Kindle版



nice!(0) 
共通テーマ:

nice! 0