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『小松左京全集 50 小松左京自伝──実存を求めて』 [☆☆]

・「日本は一等国なんだ」と信じて疑わなかった。だからこそ、次第に敗色濃厚になっていく戦局が不安で憂鬱だった。

・ラジオで玉音放送を聞いた。「ポツダム宣言受諾」と聞こえたのに、教師たちは「ポツダム宣言離脱や」と言って敗戦を認めない。

・徴兵年齢は昭和十八年に二十歳から十九歳に引き下げられ、敗色濃厚の二十年三月には十七歳に下がった。

・自ら生み出した文明に翻弄される人類。そのことの認識が理性やモラルの回復を可能にする。

・欧米人がアステカやインカをむやみやたらに殺したんじゃなくて、結局インフルエンザと天然痘なんだ。

・ある種の化学現象には、あまりにも整合性があって美しいものがある。「美しい」といったときに、もう文化的価値が入ってくるだろ。

・うちの近所にネコが集まる広場があってね。あるときすごくきれいな夕日が出ていて、ネコがそっちを向いてズラーっと並んでるんだ。反対側ではスズメも見てた。

・複雑系を考えたときには数の性格も足りない。今までゼロや負数、虚数の発見なんかがあったけど、まだこれから新しいタイプの数が見つかるかもしれん。

・物質の立体構造の右旋性、左旋性。何でもこんなものがあるんだと。それは数学の問題か、論理学の問題か、科学の問題かと。

・梅棹先生はゴルバチョフがソ連の大統領になった頃、もうこれでソ連は近代化だ、あと世界で残っている最大の問題はイスラム原理主義だと言ってた。

・元寇というのはものすごいものだ。あれは二度とも台風によって助かる。だから文明的クライシスが自然的クライシスによって大きく変わるとか、そういうことが日本は起こりやすいという感じがしてたんだ。

・たしかに氷河期は炭酸ガスが減ってます。それから間氷期になると増えるけれども、それは炭酸ガスが増えたから暖かくなったのか、暖かくなったから炭酸ガスが増えたのか、その相関性はわかりますが因果性はわかりませんと。

・大阪万博の時に、インターナショナルはいいけどコスモポリタニズムはいけないという、かつての左翼のテーゼが問題になったんだ。

・インターナショナルはネーションが元になっていて、それぞれの歴史の独自性とかアイデンティティ・アンド・ディファレンスは尊重しなきゃならない。しかしこれから先の地球人、人類全体のあり方としてはコスモポリタニズムになっていかざるを得ないだろう。一種の国籍自由化だね。

・普通の風俗小説家じゃなくてSF作家として女を書くと。エイリアンものとして書くというか、SF作家は異世界というものには常に興味を持つだろう。

・人間とモノが共存して初めてシステムができあがる。

・新大陸発見によってトウモロコシが家畜の飼料になる。

・突然東京が壊滅したらどうするか。一応水爆戦を想定して、佐々淳行さんに「そういう場合、日本の政治システムはどうなるでしょう」って訊いたら、彼はどこかに電話して、そしたら「全国知事会でしょう」って。

・人間が飛行機で飛ぶ前に鳥は進化の果てにもうそれをやっていたと。だけど宇宙までは行かなかった、宇宙は人間がやるんだなと。

・あの時は神戸港の港湾組合が強くて、海自の艦艇を接岸させない。真水を積んだタンカーが呉から来るんだけど、パイプをつながせないんだね。陸自のヘリも着陸せずに王子公園の上空でホバリングしながら物資を投げ下ろしてる自治体の職員組合や港湾労組が、要するに軍事力反対なんだ。

・天皇の代わりにマルクスを拝んでどうするっていうのが大きかった。



小松左京全集完全版 50 小松左京自伝ー実存を求めて

小松左京全集完全版 50 小松左京自伝ー実存を求めて

  • 作者: 小松左京
  • 出版社/メーカー: 城西国際大学出版会
  • 発売日: 2018/02/01
  • メディア: 単行本



タグ:小松左京
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