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『軍事のリアル』 [☆☆]

・経済制裁というのは東京裁判で証言されたように宣戦布告と同義です。つまり、日本は北朝鮮に事実上宣戦布告しているのです。何をされても文句が言えません。日本だけが全くその自覚がない。

・現代における軍事の目的は敵国に勝つことではない。軍事力の目的は、その国の外交の背景として適切に機能し、その外交により世界の平和(秩序)・安全、ひいてはその国の平和(秩序)・独立(自由)を確保し、総合国力を進展させ、国民福祉を向上させることにこそある。

・自衛隊に許される対応は、国家権力としての自衛権活用ではなく、国内刑法にある個人の権利としての正当防衛権を活用することだけである。個人の権限である以上、この権限行使の責任は国家でなく個人(各級指揮官)に属するというのもおかしな話である。

・兵站部隊は本来戦闘部隊よりも危険な状況にあるのに、平和で安全なものと誤解されている。

・米国政府は当面は政策にならないようなことをシンクタンクなどに勝手にやらせて、自らは責任を取らず、様子見をしているところがある。

・大いなる精神は静かに忍耐する。

・陸の予算は人につき、海空の予算は装備につく。別な表現をすれば、陸は人に装備を与え、海空は装備に人をつける。

・フランス革命前(中世)の戦争は軍隊の壊滅を避け慎重になり、一種の強力な外交のようなものとなった。

・日本が「専守防衛」で何とかやれるのは「自衛隊は盾の役割を担当し、米軍が矛(槍)の役割を果たす」という「日米ガイドライン」による約束があるからである。

・「トリガー核」とは「我が国も世界破滅の引き金を引ける」という自己主張であり、「滅多なことでは引き金を引かない」が故に「我が国も世界秩序(平和)を担う重要国家である」と宣伝しているに過ぎない。

・米国では騎兵の機能と部隊名を残し、その機能を継続できる新たな装備と訓練を探し続けたのだが、日本では騎馬という装備(ブツ)そのものに拘り、そのブツが陳腐化してなくなると同時にその機能そのものまでをも忘れ去ってしまった。

・自ら「状況判断」をして「決断」することである。「皆さんの意見を広くお聞きして」などと言っている暇はない。

・統率力は一般に、指揮官の「人格」と「能力」によって構成される。「人格」と「能力」のどちらに比重をかけるかは人によって違うが、少なくとも片方がゼロという人に統率はできない。

・統率の結果として現れるものは、部下からの指揮官に対する「信頼」である。「信」とは「人の言葉」すなわち「嘘を言わない誠実な人」である指揮官の「人格」を表わし、「頼」とは部下が、その指揮官の「力を頼りにすること」、すなわち指揮官の能力を意味する。

・かつて大いに活用されたベンサムの功利主義(最大多数の最大幸福)は古くて現代に適応できない、とされているらしく、それに代わって現今、(1)個人の自由は他者の身体や正当に所有された物質的財産を侵害しない限り無制限である、とするリバタリアニズム(自由意志主義)、(2)共同体の重要性を尊重するコミュニタリアニズム(共同体主義)、(3)自由は他人の自由と両立させる、社会的・経済的格差を少なくし機会均等を図る、とするリベラリズム(自由主義)、という3つの思想があるらしい。

・リベラリズムは、これまで多くの国で試みられてきたが、他人の自由のために不自由になる人は絶えず、格差解消も機会均等も実現していない。

・中国人は、日本人以上に兵隊になることを嫌っている。「好鉄不打釘、好人不当兵(良い鉄は釘にならない、良い人は兵にならない)」という古い言葉があり、今でも多くの人たちがそう言っているらしい。

・「何故、政治家は志願制導入に動かないのか」と聞くと、「良心的徴兵忌避権により、入営せず病院や福祉施設で働く若者が多くなって、この人たちが国の重要な労働力となっている。徴兵をやめればこれも止めなければならず、予算が大変になるからだろう」という答えだった。

・「情報」と「兵站」は、第二次世界大戦において日本が敗れた二大要因だと言われている。

・軍事情報とは「相手(敵)」の能力(Capability)と意図(Intention)を知ることだとされているが、能力を知ることは比較的易しいものの意図を知ることは極めて難しい。

・かつて中曽根康弘防衛庁長官は、「力の弱い兎は長い耳を持つ。自衛隊も情報力は持たなければならない」といった。あれから半世紀、未だ自衛隊の耳は短く、その情報力は極めて不十分なままである。



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