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『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』 [☆☆]

・人々はソーシャルメディアを通して新しい体験をしていた。それは、ニュースをオンラインで共有することだ。

・2017年にシカゴで発生したストリートギャング絡みの暴力による死者数は、イラクと、続くシリアでの通算10年間に及ぶ紛争における米軍特殊部隊の死者の総数を上回った。

・こうしたネット市民は自国政府の対応が弱腰だと思えばことごとく抗議し、武力行使するよう指導者たちに絶えず強要もする。

・中国のソーシャルメディア・ユーザー6億人の感情にも目を光らせなければならないのだ。危機の際に対処を誤れば、彼らの沸き立つ怒りは一大勢力と化し、指導者の選択肢を限定しかねない。独裁国家においてさえ、戦争は前例のないほど民主的になっている。

・物語(ナラティブ)、感情、信憑性、コミュニティ、情報氾濫は、オンライン戦闘の最も有効なツールであり、それらを駆使することが情報戦を制するための指針となる。

・理解の枠組みとなるストーリー展開を決定し、行動を促す反応を呼び起こし、最も個人的なレベルでつながり、仲間意識を生み、それらをすべてグローバルな規模で繰り返させることのできる人々が勝者となる。

・「マカ」とは「サル」を意味するポルトガル語で、何世紀にもわたって人種差別的な中傷に使われてきた。

・現在主義では、過去と未来はもぎ取られ、計り知れないほど広大な現在に取って代わられる。過去について真剣に考える代わりに、今この瞬間の緊急性で頭がいっぱいになる。未来について真剣に計画を立てるつもりでいても他のことに延々と注意をそらされる。

・「バーチャル誘拐」の場合、実際には誘拐せず、犯人は「被害者」と連絡が取れない状態になる時間を把握し、その隙を狙って友人や家族を脅して身代金を取る。

・アメリカの特殊作戦部隊は比類のない特殊部隊で、「世界最高の銛突き漁師たち」だ。しかし、速いペースで新兵を補充し、簡単に民間人に紛れ込む敵を打ち負かすには、特殊部隊は「網打ち漁師」にならなければならないという。

・サイバーユートピア主義。「テクノロジーが自由をもたらすという篤い信念」を「その悪い面を認めようとしない頑なさ」が強化している。

・結局、アラブの春はインターネットが可能にするグローバルな民主化運動の揺籃期ではなく、絶頂期の象徴だった。

・「もっと疑え」は答えを見つけろという意味ではなく、「混乱、混迷、不信を煽れ」という意味だ。

・この集中砲火の狙いは、疑念を植え付けること──相反する説が入り乱れるなか、どれが最も「正しい」のか、迷わせること──だった。

・事実は、意見と交換可能になり、現実そのものが疑わしくなって、私たちはむやみに言い争うようになる。

・全員が似たような考えのときは誰もあまり考えない。

・アメリカにおける政治学の原理は、新聞の影響力を無効化する唯一の方法はその数を増やすことである、というものだ。新聞の数が多いほど、一連の事実について世論は一致しにくくなる。

・ソーシャルメディア・ユーザーひとり一人の嗜好に合わせて、数十億種類の新聞に匹敵するものを生み出している。その結果、もはや数の大小を問わず一定の事実というものは存在しない。視点によって「事実」が違ってくるのだ。

・女優のジェニー・マッカーシーやドナルド・トランプ(「健康な子供がたくさんのワクチンを大量に接種され、気分が悪くなって自閉症に。そういうケースがたくさんある!」とツイートした)ら、落ち目のセレブたちが相次いで加わった。彼らは反ワクチン派の注目度を利用して自己ブランドの強化を図り、その間に陰謀論をさらに広めた。

・かつては村ごとに愚か者がいた。インターネットが彼らを一つにした。

・事実とは結局、合意の問題である。合意がなければ、「事実」は意見の一つにすぎない。その意見を自由に操作できるようになれば、世界の仕組みを変える力を手に入れられる。

・「べき乗(累乗)則」と呼ばれるものだ。それによれば、注目争いは何百人もの自由参加型の競争ではなく、実際はネットワーク上のひと握りの主要なオタクに牛耳られているという。

・会話のきっかけを詳しく調べた結果、何億人ものユーザーの意見がわずか300のアカウントによって誘導されたものであることがわかった。

・同類性によって動かされるソーシャルネットワーク上では、目的は情報伝達ではなく承認だということがこの戦略によって暴露された。

・一見きちんと分析しているようだが、実際は結論ばかり並べ立てる。見出しの後は議論するのではなく暴露するだけだ。

・2016年、ソーシャルメディア上のリンク全体の59パーセントが、それを共有した人に一度もクリックされなかったことがわかり、研究者たちは衝撃を受けた。

・インターネットでは、拡散性は現実と切り離せない。何百万人もがシェアすれば、でっち上げた話もそれなりに「現実」になる。実際の出来事でも、注目度を記録するアルゴリズムの目にとまりそこねれば、起きなかったのと同じだ。

・アサド政権はツイッターのボットを使って反政府勢力のハッシュタグに無作為にサッカーの統計を送りつけた。政権と戦うために不可欠な情報を探していた人々は、わけのわからない壁に阻まれて情報を得られなくなった。同時に、#Syriaというハッシュタグは美しい景色の画像であふれ返った。

・韓国はスキャンダルに見舞われた。軍のサイバー戦争専門家が操作する大規模なボットネットが、与党の政権維持のために2500万近いメッセージを送信してきたことが明らかになったのだ。

・2000年、ネットユーザーの集中力持続時間は平均12秒だった。それが2015年には8秒になった。9秒と言われる金魚をわずかだが下回っている。したがって、デジタル世界で効果的な「物語」というのは、ほんの一瞬で理解できるものしかない。

・ミームは文化を伝える乗り物であり、「いいね!」に不可欠なツールである。

・ミームは人間の文化から生まれ、言語によって形作られ、伝達される。

・ミームが「生きている」のは人間の脳内に存在する間だけだ。ミームにとって忘れられることは絶滅を意味する。

・人工的な虚偽がうまくいくのは、かすかに真実味を帯びている場合だ。既存の偏見に乗じ、ターゲットの心に既に存在する「物語」に、少しだけ虚偽を上塗りする。

・あらゆる偽情報は少なくとも部分的には現実に即しているか一般的に認められた見方でなければならない。

・否定する行為自体が、その話題に新たな命を吹き込んで、集団意識にさらに深く入り込むのに役立つようにできている。

・ニューラルネットワークの最大の危険は、その純粋な多様用途にある。賢いが、どう使われるかには無頓着だ。これらのネットワークはナイフや銃や爆弾と変わらない。

・オンラインで私たちが目にするものも、どう考えるかも、すべて機械が操作するようになれば、すでにその時点で機械は世界を支配しているのだ。何よりも重要なもの──人間の心──を制圧してしまえば、機械はもう反乱を起こす必要などないだろう。

・批判を一蹴し(dismiss)、事実を歪曲し(distort)、本題から目をそらさせ(distract)、聴衆を動揺させる(dismay)という「4つのD」は、21世紀におけるインテリジェンスの文法規則になったのだ。



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