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『諦めの価値』 [☆☆]

・「諦めた人」が何を諦めたのかというと、「憧れる」ことを諦めたにすぎない。

・諦めるのは、何か他のもっと大事なものを守るための手段であることを忘れてはいけない。しかし、普通は「大事なものは何か」ということがしっかりと理解されていない。

・重要なことは、目的の抽象化である。人間は、具体的なものに囚われて、本来の目的を見失いやすい性質を持っている。

・本当に大事なものは、具体的な「バッグ」ではなく、自分の「満足」という抽象的な目的なのだ。

・自分にとって、自分自身が頼りになることは、とても価値がある。人生という道を、だいぶ生きやすくなるだろう。

・「デザイン」という言葉は、見えるもの(サイン)を捨てる(デ)、という意味が語源となっている。

・人生設計とは、人生をデザインすることだ。飾り立てること(デコレーション)がデザインではない。いらないもの、無駄なものを排除していくことで、浮かび上がってくるもの、鮮明になってくるものがある。

・どうしても上手くいかない、という窮地に立たされたときには、とにかく、何が諦められるか、と考えた方が良い。諦めることで、救われる場合が多い。

・「大失敗」は、だいたいの場合、諦めないことが原因だ。もう少し早く諦めていれば「失敗」で済んだものが、諦めなかったために「大」が付加される。多くの歴史からそれが学べるはずだ。

・「夢を実現させる」過程において、僕が何を諦めたかというと、それは「日常」である。なにも不満のなかった日常生活を諦めた。

・歴史、音楽、美術、政治、経済、流行りもの……1分以上語れるジャンルが、何もありません。

・「褒められたら味方で、貶されたら敵だ」という単純な反応というのは、幼い子供の精神だといえる。

・人口を増やそうとする計画ではなく、人口が減っていく社会の維持をいかに上手に行うか、が問われている。これが少子化問題の本質である。

・物事を深く理解している人は、全般的で漠然とした質問をしない。もっと具体的で局所的な問題を抱えているからだ。

・そのインスピレーションが、ものになるかどうかは、まあ良くてフィフティ・フィフティ。50パーセントの確率なら、研究では間違いなくゴーサインが出る。

・人とつき合うという行為は、僕にとっては、自分一人ではできないことをするために、「しかたがない」選択だった。

・感情を抑えることは、それが自身にとって有利であり、得だということを覚えてもらいたい。この技を会得すれば、感情を抑えられた自分に満足し、気分が良くなるだろう。笑って済ませることがことができるようになる、というが、その笑いが本当に「愉快」なものになるはずである。

・成人式が中止になって、「一生に一度のことなのに」と残念がる声をマスコミが伝えていた。こういう、なんでも特別なものにしたがる症候群に、現代人は憑りつかれているようだ。

・今まで何十年も「周囲と同じ」生き方をしてきたのに、そうそう簡単に、「人と違う」真似はできない。せいぜい、「人と違う」ファッションを試す程度の外面的な装いだけである。

・目的とか夢として語られているのは、単なる看板やキャッチフレーズ程度の「言葉」に過ぎない。本当の目的は、自分がよくやったな、と毎日満足できることだし、本当の夢というのは、その経験から自分だけが感じられる「幸福」であり、この幸福感を「楽しい」と表現しているのだ。

・クレヨンも色鉛筆も色数を誇って箱に並んでいる。そういうものに慣れ親しむと、色を混ぜ合わせて、自分の色を作る作業を忘れてしまう。そんな発想さえしなくなる。その間に存在するものは、もともとないものになるのだ。結果として、「自分なり」のものが、消えているのである。

・失われているのは、その色を作るために必要だった人間の「感覚」である。見極めること、違うと判別すること。そして、何が不足しているのか、どうすれば「自分」が思ったものに近づくのか、と考える力である。

・夢があるのに、そこへ近づけないのは、言葉だけの夢を掲げて、それを壁に貼ったポスタのように日々眺めているからでは?

・かつては、「無人島へ行くなら何を持っていきたいですか?」という質問が流行ったが、現代人は「スマホに決まってんじゃん」と答えるだろう。おそらく、質問がこう変わるはずだ。「スマホが使えないとき、何をしたいですか?」



諦めの価値 (朝日新書)

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