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『欲望の資本主義 5 格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時』 [☆☆]

・「ハリー・ポッター」という知的財産を所有している人が得る利益は、有形資産を売買している人々が得る利益に比べて非常に大きくなり、それが格差に反映されるのです。

・アメリカでは1990年代の初めに無形資産への投資が有形資産への投資を上回りました。

・画期的なイノベーションが起こってから、その成果が生産性や生活水準の向上に反映されるまでには長い期間がかかっています。その流れは一つの大きな波のように見えます。蒸気機関は早くから登場していましたが、その成果が現れるまでには半世紀かかっているのです。

・無形資産の経済では、例えば知性のような無形の資産を持つ人が資本家になることが考えられるのです。それは詩人かもしれませんし、歴史家かもしれません。

・今、進行しつつある、無形資産が肥大化する新たな世界における無形資産とは、教科書的知識や教育だけで身に付く種類の資産ではないということです。この世界で求められているのは才能です。

・一般的に近代経済学が専門ではない多くの人々には、「労働を商品として扱う」という考え方は、労働者を非人間的に扱っており不当だと思えるようです。けれど、経済が使う「商品」という言葉の意味は、「価値がある」ということに過ぎないのです。

・低所得者の多くはサービス業に従事しています。つまり、他の人々と接する仕事をしているということです。コロナ禍の今、将来が見えない中で自分を守る一つの方法として、人々は株式市場や不動産への投資に希望を抱いています。多くの人々はその投資には損失の危険性もあることを認識していません。今現在のナラティブの中ではそれほど危険だとは思っていないのです。

・どの映画がヒットするのかは、公開後にしか分からないのです。経済のナラティブも同様です。

・パリ講和会議に、イギリス代表団の一人として参加したケインズは、講和会議の直後に『平和の経済的帰結』を著し、ベルサイユ条約後の世界が「新たな世界大戦へと向かっている」ことを示唆し、その理由を「連合国はドイツを罰することに専念しているから」だと指摘しています。

・2020年末の大統領選挙でトランプは史上2番目の票を獲得しましたが、バイデンは史上最多の票を獲得して勝利しました。

・1990年代の租税構造に戻れば、私が指摘している税の不均衡の問題は相当改善されるはずです。私は革命的変化が必要だと主張しているのではなく、1990年代に戻ればよいと言っているに過ぎません。

・企業は自動化やコスト削減を重視し過ぎてきました。その結果、特に低学歴の労働者の雇用機会が小さくなりました。

・ケインズはトランプをこき下ろすようなことはしないと思います。少なくとも、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』に論説を書いている現代の新ケインズ主義者のようには、批判しないはずだと思うのです。

・集合的「信仰」の消滅です。階級意識は既に存在していません。国家への帰属意識も、欧州では欧州連合(EU) への帰属意識も、存在していません。階級や国家などへの帰属意識は、信仰と同質のものです。

・バブルは、崩壊しないとバブルであったことに気付けないという困った性質があります。

・今日では、ある目的のために不特定多数の人々にメッセージを送り、動員もできる技術の発達により金融市場の力学が変化しています。

・全員の意見が同じだとすれば、その集団は知識のある群衆ではなく、暴徒の集団に近くなります。だからこそ、金融市場のプレイヤーには多様性が求められるのです。

・まるでポートフォリオを組むかの如く、巨大資本がさまざまな業種、業態の事業運営を行うようになり、グループ内の会社自体が「商品」とみなされ、その売買が常識化する。

・人は現実を「見たい」ように見る。その欲望には勝てない。

・暴騰でも暴落でも、人々が、ある「ナラティブ」に感染し、「見たいように見た」結果なのだ。

・自己の環境に慣れてしまう能力というものが、人間の顕著な一特性である。

・「自己の環境に慣れてしまう」ことは、そのまま、「自己のものの見方に慣れてしまうこと」に等しいのだから。「見たいように見る」ことになった人間は、常に、出来上がった「見方」に囚われ続ける。

・既に一世紀以上前に、「生産」から「営利」へとルール変更され複雑に高度化していく資本主義の本質的な不完全性を、ヴェブレンは見抜いていたのだ。



欲望の資本主義5: 格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時

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  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2021/09/17
  • メディア: 単行本



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