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『世界を、こんなふうに見てごらん』

・具体例をいっしょうけんめい見ていくと、やがて一般解にいたる。一般解ができると、今度はそれにあてはまらない変なヤツが出てくるから、それをまた調べていくと、その答えがわかって、また話が広がっていく。

・東大の理学部に入って、その話をすると、「なぜ」を問うてはいけないといわれた。なぜいけないのですかと聞き返したら、「なぜ」を問うことはカミサマが出てくる話になってしまう。How(どのように)は聞いてよいが、Why(なぜ)を聞いてはいけないといわれ、そのことを疑問に思った。

・日本はドイツ哲学の流れが強いのか、しばしば、人間は真実を追究する存在だといわれるが、むしろ真実ではないこと、つまりある種のまぼろしを真実だと思い込む存在だというほうがあたっているのではないか。

・人間は理屈にしたがってものを考えるので、理屈が通ると実証されなくても信じてしまう。実は人間の信じているものの大部分はそういうことではないだろうか。

・仮に自分たちは自然を壊さない、伝統的なやり方で森に入っているという者がいても、刃物などを持つなら、もうそのダメージはもとに戻らないほど深いと考えるほうが適切ではないか。

・ほんとうの自然の森には道もなければ知識も、地理も、名前も、何もないはずだ。

・月、火星、木星の衛星エウロパと、これからの時代、人間が利用し、関わりを持とうとする環境は地球だけではなくなるだろう。

・科学者が調査目的で国の許可を得ている場合以外、コスタリカでは一般人が虫を捕ることは禁止されている。子どもが虫取り網を振るう姿も見られない。

・自然には人間がわかっている以上のたくさんの変数があり、自然をいじってダメにすることはできるけれども操ることはできない。ちょうど、何も知らない素人が、電車を止めることはできても、電車全体を運行させることはできないように。

・ダニにとっての「世界」は、光と酪酸のにおい、そして温度感覚、触覚のみで構成されている。ダニのいるところには森があり、風が吹いたり、鳥がさえずったりしているかもしれないが、その環境のほとんどはダニにとっては意味を持たない。

・世界を構築し、その世界の中で生きていくということは、そのいきものの知覚的な枠のもとに構築される環世界を見、それに対応しながら動くということであって、それがすなわち生きているということだ。

・虫たちは、死骸が乾くといなくなってしまう。骨と皮に虫がいなくなってしまうまで観察していた。

・シデムシ科という甲虫類がおり、その名も死んだら出てくる虫、死出虫と書く。

・直前の出来事しか覚えていない認知症の人が、再び自発的にものを食べたり、会話したりといったことができるようになるには、無意識のうちにまず、箸を持ってこれを食べるぞ、とか、この人とあいさつするぞ、という、漠然とした構えがその人の中に起こることが必要に思われる。

・幽霊はイマジネーションの産物だと昔からいわれているが、そうではない。イマジネーションの欠如の産物だとライルはいう。

・イマジネーションが足りないと幽霊をつくってしまう。幽霊というのは、ある種のイリュージョン、思い込みがそれにあたるかもしれません。



世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫)

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世界を、こんなふうに見てごらん

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