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『森には森の風が吹く』 [☆☆]

・たしかに、苦労や誠実さには頭は下がる。しかし、「やろうと思えば誰でもできること」であるから、驚きや憧れは生まれない。

・「謎」とは観察者が作るものであって、仮説により生じ、仮説によって消えるだけの幻想にほかならない。

・今後は、電子書籍が台頭し、どれが新刊か、いつ発行したのかなど、読者には無関係となり、すべてが「並列」の時代になるはずだ。

・意識したのは、台詞を書かないことだった。人がしゃべっている言葉を「」の中に入れて書かない。そうすることで、事実に近づくことができるように思った。しゃべる様子を書くと、どうしてもリアリティが消えてしまう。芝居がかったものになるからだ。

・人間はいつ死ぬかわからない。どんな約束も期待も、そして経験や思い出も、死によってすべて消えてしまう。常に、それを忘れないこと、覚悟しておくことが大切だと思う。

・エジソンの伝記を読まされたけれど、そんなものよりも、エジソンが発明した技術に関して記述された本の方が、十倍も百倍もエジソンの偉大さを示していた。

・少々やりすぎくらいのものがエンタテインメントとしては面白いらしい。当時TVで圧倒的に人気があったドリフターズをみれば、それがよく理解できた。

・SFでもなんでも、一生読むのに充分な作品数が既に存在している。「需要に供給が追いつかない」というようなことはまずない。この「飽和」の理由は、創作というものが他の製品に比べて「古くならない」からである。否、古くはなるが、腐ることはない。

・言葉の美しさよりも、言葉が示す先にある美しさを、僕は見る。言葉とは、そういう役目のものだと理解している。

・相手を挑発するような攻撃的な硬派ではない。どこからでも攻めてみろ、という防御の硬さなのだ。

・涙を誘い、愛を訴え、懐かしさを装い、そして勇気や平和や自然を賛美する。けれども、別の言葉でいえば、一辺倒に「媚びている」だけにしか見えない。

・現代においては、自然災害で失われる人命よりも、人間が人間を殺す行為で失われる方が多い。

・科学がまだなかった時代には、信仰がすなわち道理だったし、、それがまぎれもない合理だった。

・今残っているレトロなデザインが、そもそもは最先端だった、ということ。クラシックカーも、昔の電化製品も、すべてそれが作られた当時には「最新型」だった。その当時実現できた最先端の技術や新素材を駆使して、斬新な設計がされている。けっして、懐古趣味で昔を懐かしんでデザインされたものではない。

・静止画では簡単に信じてもらえないことでも、動画であれば説得力を持つのは、人間の自然の感性に基づいているからだろう。

・理論通りに動く、すなわち、自分が思った通りになる、という喜びを味わえる。その時に感じるのはまさに「自由」だ。自分が思い描いたものがこの世に現れることは、本当に素晴らしい。

・次々に新技術が登場する中で、少し古いものは見向きもされないから、たちまちノウハウが失われてしまう。気がつくと誰も理解できない、誰もそれを作れない、という事態になっていることが珍しくない。

・理論がかなり難しく、さらに機械的にもやや面倒な部分があるため、技術屋では理屈がわからないし、理論屋では工作できない。両者に通じていないと作れない。

・人間は「可能だ」と知れば、それを作ることができる。少なくともその努力ができる。逆に、作るのをやめるのは、可能性を信じられなくなったときだ。

・誰かと知り合ったとき、その人が過去に何をなしたか、を気にする人と、これから何をしようとしているのか、に興味を持つ人がいる。

・かつて、雑事を気にせず研究に没頭できた時代があった。その過去の遺産で今の大学はどうにか持続しているようだ。まるで、化石燃料を食いつぶすように。

・パズルマニアになってしまった人は、運動好きと同じで、もう頭を動かしていないと気が済まない。

・人間の思考は、自分自身が考えた道筋を何度も通っているうちに、轍がだんだん深くなる。すると、そこから外れにくくなるのである。

・それを知ることによって、新しい疑問が生まれる、何かを作ることができる、というように、次の行動の起点になるものが本当の知識です。

・敬語というのは、正確でなければ駄目というものではない。たとえ間違っていても、それを使おうとした姿勢が大事なのであり、相手には悪く取られない。



森には森の風が吹く

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  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/11/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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