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『大戦略論』 [☆☆]

・目的は想像の中に存在するだけだから、無限に膨らませることができる。だが手段の方は、断固として有限だ。

・いかに用心深い助言者といえども累積効果を正確に予測するのは難しい。小さいことも積み重なれば予想外に大きいことになり得る。

・すぐれた知性とは、「二つの相反する考えを同時に持ちつつ、しかもきちんと働く」知性である。

・二つの知性が正反対の結論に達することは十分理解できるが、正反対の結論をどうしたら一つの知性に共存させることができるだろうか。

・私たちが日常的に迫られるのは、善か悪か、白か黒かといった真っ向から対立する選択肢であることは稀で、これもよくあれもよいが両方は無理、というケースが多い。

・アテネは他のいかなる国とも異なり、公の義務を果たさぬ者を……ただ無益な人間とみなす。

・スパルタの諸君は動かぬことで名をなしている。動けば強いという名に頼り、動かずに身を処すことを考える。

・正義か否かは彼我の勢力伯仲の時に限られるのであって、強者と弱者の間では、強きがいかに大をなし得、弱きがいかに小なる譲歩をもって脱し得るか、その可能性しかない。

・韓国それ自体は些末な存在である。だが北朝鮮に攻撃されたとなれば、そのような攻撃がスターリンの手を借りない限り不可能である以上、韓国は重大な意味を持つようになる。

・未来は過去の反復ではないにしても、人間性の導くところ再び過去と相似た過程をたどるのではないかと考え、未来を理解する手がかりとして過去を知ろうとする。

・過去を何も知らなければ、未来は孤独だ。記憶喪失は孤独な病である。

・両社は互いに相手を嫌っており、嫌う以上に信用していない。だが一方は揺るぎない目的を持ち、それを実現するために行動する。他方は行動すると言っても、相手の行動に対応するだけだ。これではもう勝負にならない。

・数世紀の後には、キリスト教帝国は世界規模で繁栄する最初の帝国となる。これは、ローマ帝国もついに成し遂げることのできなかった偉業だ。

・幼児に罪がないのは、人を傷つける意思がないからではなく、力が弱いからに過ぎない。

・人間が用心深く自分のために行なおうとする正義ほど、正しくないものはない。なぜなら、いかなる意味においても、保身のための正義というものはあり得ないからだ。

・民衆の数はきわめて多く、これを敵に回す君主は安泰ではないが、貴族の数は少なく、こちらを敵としても安全である。

・プロスペクト理論をごく大雑把に言うと、リーダーは利益を得ようとするよりも損失を防ごうとするときにより多くのリスクを冒す、ということだ。

・逡巡は、正しい政策ではなかったにしても、少なくとも間違った政策ではなかった。政治において細かすぎる決定を下したり、決断力に溢れすぎていたりするのはむしろ悲劇を招くことがわかっていたのである。

・「二詞一意」とは「複雑な概念を、連結接続詞で結ばれた二つの単語で表現する修飾法」である。たとえば「死と名誉」という表現が「名誉ある死」を意味するように。つまり、二つの言葉でもって一つの概念を控えめに表現することだと言えよう。

・このような法律を生津させたら、次にはこれを強制するための法律を作らなければならない。そうやって、無力で無駄な努力の無限ループに陥るだろう。立派な法律を作るたびに、それを強制する小さな法律が必要になる。

・車を追いかける犬の性質を露呈する。追いついたのはよいとして、次にいったい何をするのか?

・初心者が理論に従うのは何ら問題ないが、初心者の域を脱しても理論に固執するのはよくない。

・とりわけ軽蔑するのは、「専門語、述語、比喩」の類である。作戦に欠陥があったことを偉そうに指摘する輩は、あちこちの体系からこの手の用語を拾い出してきては、文脈と無関係に自分の批判を飾りたてる。

・体系に含まれる専門語や述語の一切は、体系のうちでは相応の価値を持っているが、体系から抜き出されて一般的な公理として用いられると、ただちにその妥当性を失う。

・ジェントルマンは何かを躍起になって手に入れようなどという振舞いをするべきではない。

・命を救うために手足を切断しなければならないことはあっても、手足を救うために命を投げ出すのは賢明ではない。

・戦争は、国家の存在を確実にすることが目的であって、疲弊させたり消滅させたりするためではなかったはずではないか。

・世論の支持を失ったら何もできない。先頭に立とうとしているときに、肩越しに振り返ったら誰もいないことほど、恐ろしいことはない。

・彼らの目標は、内面的な思索や内向きの感情の支配する私的宇宙から生まれるのではない。大勢の同胞市民がおぼろげであやふやながらもずっと考え感じていることを結晶化させ、揺るぎない明確な形に高めたものこそが、このタイプの指導者の掲げる目標なのだ。

・複雑な活動を巧みに遂行するためには、相応の知性と気質という素質を必要とする。

・「知性」とは何を目指すかを決め、「気質」はどうやって目指すかを決める。

・そうは言ってもあなたはすべてを元通りにしたくないでしょう?

・正義の主張を満足させようとしたら、現在と将来だけでなく過去をも覆さなければならない。



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