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『ナマケモノに意義がある』 [☆☆]

・目標や目的に縛られた人は言ってみれば未来のために生きている。現代人の「いま」という時間はいつも未来からの犠牲を強いられているのだ。

・感動ばかりしている人を、私は信用しない。若いときに感動しているぶんにはいいが、40代、50代になってもしょっちゅう感動しているのは心がフラフラしているということだ。中年にもなれば感心することはあっても感動はしなくなるものだ。

・そこそこ洗練された画一的な消費生活が世界のいたるところで見られるようになったとき、快適さに満足する人がいる一方で快適さに飽きて異質なものを求める人たちも一定の割合で出てくるだろうし、世界革命を夢見る若者も現れるだろう。

・自分の存在を他人から認めてもらいたいという欲求を昔にもまして多くの人は抱いていると思う。ボランティアの行為はそんな承認願望を容易に満たしてくれる。

・死への恐怖は死にたくないという生への執着の裏返しであり、同時に「死ねば楽になる」という気持ちを誘引しやすいのであろう。実際、自殺する人は「死ぬのが怖い」と強く感じていることが多いのではないだろうか。

・生にさほど執着していない人は、「どうせいつかは死ぬんだから、わざわざ自分で死ぬ必要なんかないよ」と思うだろう。

・運動できない子は運動神経がないんだと本人も周囲もすぐに納得するくせに、勉強に関してだけは勉強の才能がないとはなかなか認めない。

・才能のある子はやるなと言ってもやる。楽しいからだ。勉強も同じだ。

・「好きなこと」こそ、才能に通じる道であることは確かだとしても、好きでも才能がない人もいるので、自分の才能を認めるのもメタレベルの才能なのかもしれない。

・戦争の時に人を殺しても罪に問われないのは自分が殺されても仕方がないという対称性があるからだろう。対称性さえ保たれれば何をしても正しいというのもひとつの公準であろう。

・人は他人をバカにする権利や他人を愛する権利を持っているが、他人からバカにされない権利や他人から愛される権利は持っていない。他人の行動をコントロールの下に置く権利など誰も持っていないのである。

・人生に生きる意味はなくとも、楽しいことはある。それでいいんじゃないですか。

・いわゆるクレーマーやモンスターペアレンツといった連中もストーカーの別バージョンだと思われる。自分いう「かけがえのない存在」をぞんざいに扱うなんて許さないというわけだ。

・動物になくて、人間にあるもの。それは「不安」である。動物たちは「恐れ」を抱くことはあっても、不安を抱くことはないようだ。

・地震や津波で大災害が起きれば被災地にはむき出しの死体がたくさん転がっているはずだが、それを写した写真は1枚たりともマスコミで取り上げられることはない。

・人々に物を買わせて金儲けをしたい資本主義は、金を使うことではじめて楽しくなるとの物語を流布することに余念がない。この物語に乗っかってしまうと、貧乏人は不幸になる他はない。

・核燃料を再処理する施設がある青森県の六ケ所村の村民の平均所得は1000万円を超すという。青森県全体の平均所得250万円からすればものすごい格差だ。



ナマケモノに意義がある (角川oneテーマ21)

ナマケモノに意義がある (角川oneテーマ21)

  • 作者: 池田 清彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2013/03/09
  • メディア: 新書



ナマケモノに意義がある (角川oneテーマ21)

ナマケモノに意義がある (角川oneテーマ21)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: Kindle版



タグ:池田清彦
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『経済成長という呪い』 [☆☆]

・現在の革命はせいぜいスマートフォンの登場にすぎないという。したがって、現在の革命によって社会が急速に変化しないのは、決して驚きではない。

・ケインズは、産業が発達するペースから考えて、2030年には人々は1日3時間働くだけで暮らせるようになり、残りの時間は、芸術、文化、形而上学的な考察など、本当に重要なことに時間を費やすようになると断言したのである。

・何が欲しいのかは自分でもわからない。人間は、自分にはないと感じる、自分以外の誰かが持っているはずのものを欲しがる存在なのだ。

・農業が始まったとき、哺乳類全体に占める人類と家畜の割合は0.1%以下だった。今日、この割合は90%である。

・人類が「斬新」なのは正当性を要求することだ。人間にとって裏切りは、決して単純ではない。たとえ仕方のない状況だったとしても、である。

・我々は、自分たち自身で作った決まりを不可侵なものとして考える傾向があり、それらの決まりを変えるより、それらを定めた社会が破綻するまで突き進もうとする。

・読み書きを学んだり、飛行機の操縦を覚えたりするために遺伝子を変異させる必要はなかったのだ。

・チベット人の余剰を浪費するための「解決策」は、すべての余剰を僧院に寄進し、非生産者たちの生活を維持することだ。

・生贄、祝典、戦争などは、社会の余剰エネルギーのはけ口になる。

・文字が知識を蓄積する手段になったように、貨幣は富の蓄積を実現するコミュニケーション手段になったのだ。しかし文字と同様に、貨幣には蓄積以上の利点がある。

・貨幣が存在するおかげで、パンを購入するためにパン屋に微笑まなくてもよい。

・中国における産業の衰退には地理的なめぐり合わせがあるのではないかという。モンゴルの侵略により、中国の知識及び政治の中心は中国南部に追いやられたが、中国の場合、イギリス発展の決め手になった石炭の産地は、中国北部に位置していたのである。

・賃金が上昇しなければ、産業の発展は促されないという。安い労働力を利用できるのに、なぜ労働を機械化しなければならないのか。

・高い賃金が産業革命を引き起こしたのであって、その逆ではない。

・アークライトの機械への投資利率は、イギリスでは40%だったが、フランスでは9%にすぎなかった。当時のフランスは低賃金国なので、人間の労働を機械に置き換えても、収益性が低いのだ。フランスのような低賃金国でも機械の導入によって儲かるくらいまで機械の原価が下がったのは、19世紀になってからだ。

・貧困は物資の欠乏にあるのではなく、自分には物資が欠乏していると感じる欲求にある。

・我々が何気なく行なう、食器の縁で生卵を割る作業などは、チェスの対局よりプログラムするのがはるかに難しい。

・感覚と知覚の面での進化は数百万年かけて高度になった一方、数学的な推論の面での進化はつい最近のことだ。だからこそ、それらの作業をコンピュータで再現するのは、はるかに容易だというのだ。

・需要が低下したのは非技能労働ではなく、中間の職業群だというのだ。中流階級は、産業社会の発展にともなう(官民の双方の)官僚化の過程で発展した。

・アメリカの株価指数は1980年以来、10倍になった。この増加の3分の1だけが企業収益の増加によって説明がつく。残り3分の2は、おもに低金利による資産価値の上昇効果によるものだ。

・世界中の女性は、テレビを通じて自分たちを魅了する理想像を得た。つまり、それは西洋諸国の生活様式であり、彼女たちにとって、そうした理想像は自由への渇望になった。人口転換が起きる原因は、精神構造の変化であり、金銭的な誘因の変化ではない。

・有権者の投票行動に関するヨーロッパの比較研究からは、最も投票率の高いのは中間層ではなく最貧層だとわかる。

・ホモ・ヒエラルキクス(序列に基づく人間)からホモ・イコリス(平等な人間)への移行。

・保守革命に反対する者たちは、ほとんどいつも「禁じることを禁じる」という、「68年5月」の過激な個人主義を象徴する有名な文句を唱えた。

・燃え尽き症候群は、今世紀の新たな病だ。現代において故障するのは、機械でなく人間自身になったのである。

・現代の精神的な病は、神経症ではなく鬱病であり、この病は、自分は世間の要求に「見合わない」のではないかと思い悩むと、突如として発病するという。

・宗教の主な役割は、社会から暴力を減らすことだ。そのために宗教では、儀礼を定め、生贄を捧げる。

・経済成長には3つの宗教的な構造がある。1つ目は、経済成長は宗教として機能することだ。つまり、経済成長に関係しない考察は、すべて不敬として退けられるのだ。2つ目は、経済成長は、「休みなく、そして情け容赦なく」であることだ。3つ目は、異議を唱えると、異端者として糾弾されることだ。



経済成長という呪い

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  • 作者: ダニエル コーエン
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2017/08/25
  • メディア: 単行本



経済成長という呪い―欲望と進歩の人類史

経済成長という呪い―欲望と進歩の人類史

  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2017/08/25
  • メディア: Kindle版



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『ツイッターと催涙ガス』 [☆☆]

・フェイスブックがアラビア語版を公開してから約1年後の2020年末にかけて、アラブ世界における事態は、誰の目にも明らかなほど熱を帯びてきた。

・活動家は、急な事態にも十分な役割を果たせるよう、抗議活動や目立った反対意見がない普段から、活動家であることを継続していなければならない。

・微妙で複雑な議論が、毒のある過剰な単純化に圧倒されてしまったのである。

・我々が住む世界のマスメディアは、もはや営利企業や政府が運営し、機能が集中する拠点があり、少数の編集者だけが関わるマスメディアではない。

・画面に出てくるのは料理番組、娯楽番組、全然関係ない話をしゃべり続ける司会者、現実のニュースはどこにもない。

・ある古い諺は、「釘がないから」国が滅びると戒めている。これは依存の連鎖を表した諺で、蹄鉄の釘がないから馬が走れない。馬が走れないから騎士が乗れない、伝令が届かない、戦いができない、そして王国は滅びる。

・メンションは自分のツイートにその人のユーザー名をつけることによって、直接フォローされていない人に話しかける一般的な方法である。

・なぜ、多くの抗議キャンプに図書室が設置されるのか? ニューヨークのズコッティ公園のオキュパイ参加者は、図書室を立ち上げた。それは世界中の他の占拠キャンプ地でも同じだった。

・参加者の間には、グループを代表して決定を下す権限を持つリーダーがいないことは好ましいのだという、広く共有された信念があった。ゲジ公園である女性が、自分に代わって意思決定する権力者がいないと知った時の気分を、「新鮮な空気を吸うような気分だった」と表現した。

・ハッシュタグが集合的アイデンティティを構築・拡大することを助ける。

・新しいアルゴリズムは、ハードウェアが全く変わらなくても、我々ができることを変える。同じネットワークとコンピュータで異なるプログラムを実行すれば、全く違うことができる。

・ツイッターの特徴のひとつであるハッシュタグは、様々な話題について人を集めることができ、社会運動の中で非常に多用され、ハッシュタグ名で呼ばれる運動もたくさんある。

・全世界の活動家やジャーナリストにとって、マクドナルドやスターバックスは、日常的に充電やWi-Fiを求めていく場所である。

・テレビ放送なら何が報道されて、何が報道されていないか、誰でも監視することができる。しかし、アルゴリズムによって個別化されたフィードや検索結果は、個々のユーザーにしか見えていない。

・他人の個人情報をネット上で晒す「ドキシング」行為による嫌がらせも、しばしば行われる。自宅の住所から乗っ取られた個人のメールアドレスまで、本人の意図に反して公開されてしまう。

・規模と匿名性が合わさると、言論の自由の行使の障害に関する我々の理解自体を変えてしまうのだ。

・警官による殺害の発生率は、過去十年で(そのもっと前と比較しても)特に大きく増加はしていない。しかし、デジタル技術に支えられたある運動のおかげで、警官による殺害に対する注目の量には大きな変化があった。

・メディアの報道は、大きな抗議活動の中の少数のグループだけを取り上げ、本質的な問題の議論をもみ消すようになっていった。

・検閲は、情報を遮断することだと考える人も多い。が、地球上の人口よりも携帯電話の契約数が多い時代にあっては、時代遅れの考えである。

・現在のネットワーク化された公共圏では、情報が多すぎ、迅速かつ効率的に信憑性を確かめる方法がないため、混乱とごまかしを助長する目的で、意図的に虚実まぜこぜで情報過多を作り出せば、情報を効果的に抹殺できる。

・大方の予想とは違い、中国政府の検閲は、国や共産党に対する批判は削除していなかった。研究から明らかなのは、政府が速やかに削除するのは、集団行動を促す可能性のある投稿だということだった。

・定期的な選挙や自由な報道のない硬直した力の構造には多数の盲点があり、安定したコースから大きく外れても検知する方法がほとんどない。上層部のこの視野の狭さこそ、権威主義的政権が突然の反乱に対して脆いことの原因の一部であるともいえる。

・注目がなければ、情報はほとんど意味がない。

・人々はより自分に近い側を「犠牲者」として表している物語や写真を信じ、政治的に反対の意見を持つ人たちの被害を否定した。

・混乱と疑惑は、権力者とそれに挑戦する運動とでは、受ける影響が違う。根本的に非対称だからである。社会運動は、本質的に、変化を生み出そうと行動を呼びかけるが、疑惑は現状を存続させる無為無策につながる。

・世界が裏側ですべて首尾よく操られているなら、何をわざわざ?

・お金が無くなったら、銀行から1万ドル借りればいい。それは当人の問題だ。もし100億ドル借りているなら、それは銀行の問題だ。

・活字と印刷機の発明によって、カトリック教会は、企画化された贖宥状の大量生産が可能になり、文字通りお金を印刷するのに近い状況が生まれた。

・世界には、10年前には電気が来ていなかったのに、今は子供でも携帯電話を持っている地域がある。あいかわらず電気は来ていないか、来ても時々だというのに。

・テクノロジーは善でも悪でもない。中立でもない。

・「言葉のぞんざいさは、我々が愚かな考えを持つことをたやすくする」のである。



ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ (ele-king books)

ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ (ele-king books)

  • 作者: ゼイナップ トゥフェックチー
  • 出版社/メーカー: Pヴァイン
  • 発売日: 2018/10/17
  • メディア: 単行本



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